マザーリーフデスカフェで414カードを体験、死生観を深く考えるきっかけに

 自分の死を考えたり、家族や友人と死生観を語り合ったりするきっかけになる「414(よいし)カード」。葬儀社、ライフネット東京(東京・品川)代表の小平知賀子さんが主宰する6月17日のマザーリーフデスカフェ(ライフネット東京事務所で開催)で、参加者がこのカードを使って、それぞれの死生観を語った。自分の気に入った言葉が書いてあるカードを選び、その理由を語ったのだが、それだけで、それぞれの深い思いが溢れ出したのに、驚いた。

選んだカードと、選んだ理由を話すだけでそれぞれの思いが素直に表現された
49枚の414カード

 414カードを紹介してくれたのは、今回のゲスト、一般社団法人がんサポートナース代表の沼澤(片岡)幸子さん。
 沼澤さんは、がんサポートナース設立の思いを次のように語っている。

 がん患者さんが、一番辛かったと記憶に残っているのが、「がんと診断された日」。
 頭が真っ白になり、混乱したまま病院をあとにした方は沢山いらっしゃいます。しかし、外来という機能上、時間をかけて関わることが難しく、一番大切な心のケアが行き届きません。
 こうした、医療のすき間を満たす必要性を痛感し、2019年10月に法人を立ち上げました。
 今後は、地域で緩和ケアを提供できる看護師を育て、がんと診断されたときから住んでいる地域で気軽にケアが受けられる環境を作っていきたいと思っています。
 そうすることで、病院勤務で心身共に疲弊していく看護師を減らし、患者さんも医療職も共に自分らしく人生を豊かにしていけるお手伝いをしていきたいと思います。
(がんサポートナースホームページより)

 沼澤さんは、長崎県出身。看護師になって、病院、保育園、看護学校などいろいろな現場での看護を経験し、最後は緩和ケア病棟で4年間勤務した。
 2016年緩和ケア病棟勤務中にバーンアウトを経験し、2ヵ月の休職を経て病院勤務を卒業。 個人で活動していく中で、医療のすき間を痛感し、2019年10月一般社団法人がんサポートナースを設立した。
 がんと診断された人や、家族のサポート、大切な方を亡くした人へのグリーフケア、医療職向けの院外メンターなどを行っている。
 地域における医療のすき間を満たすべく、現場で経験を積んだ看護師が、地域で自分らしく、病院ではなかなか果たせなかった「徹底的に寄り添う看護」を提供できるよう、2020年5月から「がんサポートナース養成講座」を開講した。
 7月には三重県紀宝町に移住。地域医療研修センターの医師や訪問看護ステーションを立ち上げた看護師らととともに、紀宝町の約1万人の住民を対象に心のケアを実施していくと言う。

 心のケアをライフワークとする沼澤さんにとって414カードとの出合いは必然だった。414カードを使った死生観を語るワークショップをたびたび開催。今回は、マザーリーフデスカフェとの〝共同開催〟となった。

 414カードを開発したのは、がん患者やその家族が、気軽に訪れ、安心して話をする場を提供している特定非営利活動法人 幸ハウス(東京・千代田)。クラウドファンディングで広く支持を集め、中部電力の資金援助も得てカードを作った。
 幸ハウスのホームページによると、414(よいし)カードの目的は①自分の思いを大切にできて自らの生き方(死に方)を選べる社会をつくる②誰もが死生観を語り合える文化をつくる。
 対象は、死を前にした人だけではない。「病気になる前の人、死について話をしてみたいと思っているけれどその機会がなかった人、この機会に死生観について語りたい親子(3世代)などの対象者が『死生観』を考え語り合えるように設計されている」とのことだ。「60代以上の方は自分と残される人のために、30~50代の方は自分の生き方と親や子ども達と話せるように、20代以下の方は自分の生き方のために」使うよう、提案している。

 参加者一人ひとりが自分の今の死生観に合った言葉が書いてあるカードを選び、カードを掲げながら、なぜそのカードを選んだかを語った。

選ばれたカード

 「人との温かいつながりがある」は人気のカードで複数の人が選んだ。コロナ禍で制約されていたふれあいの大切さを実感したのかもしれない。
 「人と繋がっていることが好き」「つながりがないと生きていけない」「生きるエネルギー」「迷うことなくこれを選んだ」「人とのつながりがあるから今がある」(みんなの頑張り、いろいろな世界を見たい」などの理由があがった。

「誰かの役に立つ」も複数あがった。

「自分が大切にしているものを大切にする」 
 普段から子ども達にも、本当にやりたいと思うことをやりなさいと言っており、誰かと比べるのではなく、自分が大事だな、と思う方を選ぶべきと感じていると語った。
 子供とも共有できる言葉だ。

 自分の年齢を意識した選択も多かった。
 「心残りがない」
 誰しも心残りはある。それをなくす!
「必要のないものを手放す」
 いろいろなものに興味を持ち、いろいろなことをしてきたが、そろそろ人生の日暮れ時。何かを突き詰めたい。
「過ごしたい場所にいる」
 今は元気だが,これからずっと歩けるかどうかはわからない。行きたいところに行きたい。
 「自分が望む姿でいる」と言うものもあれば、逆に「自分の身体がどう変わっていくかを知る」と言うものもあった。

 進行役の沼澤さんは、参加者が414カードを使ってそれぞれの死生観を明らかにした感想をさらに聞いた。

 同じカードを選んでも、それぞれに物語があってそれが凝縮された形で明らかにされた。
 過去があって、明日がある。思いや問いがそこにある。
 目指す方向決まる。
 ブレずに生きていく一歩になる。
 定期的にやるといい。

 沼澤さんは「正月にカルタをするみたいに、やるのがオススメ」と話していた。
 カードが「本当のことを言う機会与えてくれる」
 グリーフケアにもなる。
 職場でもやりたいし、家に一つは常備したい。

 自分で考え、自分で決めることをうながしてくれる。

 デスカフェと、とても相性の良いツールであることがわかった。

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