終末期の痛み、在宅で緩和ーー終末期に頼りたい訪問薬剤師

 葬儀社、ライフネット東京(東京・品川)代表の小平知賀子さんが主宰するデスカフェが5月20日、ライフネット東京事務所で開かれた。今回のテーマは「終末期の痛みと苦しみを安心に」。訪問薬剤師の佐々木健さんが、議論に先立つ講演の講師を務めた。
 佐々木さんは、在宅医療向け薬局として高度なサービスを行う「メディプレイス365訪問薬局」(東京・港)で管理薬剤師を務める。末期がんや難病などで、患者は様々な痛みに悩まされる。その痛みは、身体的な痛みだけにとどまらず、精神的、社会的、スピリチュ アルなどの痛みが含まれる。佐々木さんは痛みを緩和する医療を在宅でも十分に受けられる仕組み作りを薬局の立場で進めている。
 小平さんは、「最近は、在宅でも痛みを抑える薬が入手できることを皆が知っておくことが、終末期の安心に繋がる」として、今回のデスカフェを企画した。

訪問薬剤師の佐々木健さんの話に聞き入る参加者

 街の保険薬局のほとんどは、医師の処方箋待ちの受け身の仕事をしている。しかし、佐々木さんは「待っているのは面白くない」として、自ら処方箋を受け取り、患者の自宅に必要な薬を届ける仕事をしている。
 メディプレイス365訪問薬局は、知る人ぞ知る「かおたんラーメン」南青山店のすぐ近くの雑居ビルの2階にある。調剤室には、医療用麻薬を保管する麻薬金庫がある。麻薬なので、鍵をかけた金庫に保管、時々の品目や数は正確に保健所に届ける。
 医療用麻薬は、液体タイプの口から飲むものだけでなく、座薬や貼り薬など、患者の症状に合わせて様々なものを用意している。一般の薬局では対応できない、多様な医療用麻薬を在庫している。
 末期がん患者を自宅で看取るケースが最近増えているという。末期がんで入院しても、コロナ禍では家族の見舞いも制限され、自宅に戻りたいという患者が増えた。
 そうでなくても自宅で家族と過ごすことが様々な痛みの緩和に寄与する。
 病院のソーシャルワーカーが、退院後も在宅で過ごすための医療体制を構築しようとするときに、病院と変わらない医療用麻薬を用意できるメディプレイス365訪問薬局がパートナーとして選ばれることが多いという。
 薬は病院からファクスで処方箋が届き、自宅に配達する。
 置き薬の形で、いろいろなケースに対応できる薬を用意するが、夜間、薬の効き目が弱ってきて患者が痛みを訴えることも多い。そんな時は、365日、24時間、夜中でも患者の家族などからの相談に応じる。
 佐々木さんは「祝日や日曜日はないと思っている」と話す。
 訪問薬局に求められるのは、医療用麻薬だけではない。脳性麻痺や先天性の遺伝病は、薬が多い
うえ、内服薬や経腸栄養剤 などは90日分も処方される。ダンボール何個にもなるので、訪問薬局に配達が依頼される。
 訪問薬局の調剤室にはクリーンベンチと呼ばれる装置を設置、無菌状態で調剤ができるようにしている。
 点滴の輸液の中に薬を追加するなどの作業を無菌状態で行い、在宅でも効率的に点滴ができるようにしている。
 その後、参加者が意見を述べ合い、議論が弾んだ。

議論も盛り上がる

 在宅緩和ケアなどの広がりに対応した専門の薬局や薬剤師の存在を知らなかった人がほとんどで、「薬剤師は待ちの姿勢ではダメ」という佐々木さんの姿勢に共感する人が多かった。
 薬剤師は本来は服薬管理などで積極的な役割が果たせるはずだが、実際は、処方箋を見て薬を用意するだけの活動にとどまっているケースが多い。「高齢者がお薬手帳を持たずに複数の病院から薬をもらう結果、飲み合わせが悪くなるポリファーマシーの問題などは薬剤師が中心になって解決してほしい」「薬剤師は、高齢者が間違いなく服薬できるよう、もっといろいろ対応に工夫してほしい」「信頼できるかかりつけ薬剤師を簡単に見つけられるような情報がほしい」ーー。様々な意見が出されて、終末期の服薬について、議論は盛り上がった。







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