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手作りよりも手作り。スープストックトーキョー×100本のスプーンのレトルト離乳食

100本のスプーンの店内で提供している離乳食。これまで母乳やミルクしか口にしていなかった赤ちゃんが食事をする姿は、家族にとって奇跡みたいな瞬間。小さなお客さまとその家族の笑顔。そんな幸せなシーンが100本のスプーンの店内には溢れています。

でも離乳食、手作りするのって大変。おうちやお出かけ先でのお食事の時間をもっと楽しくできたら…そんな想いからレトルトの『あかちゃんがなんどもおかわりしたくなる離乳食』が誕生しました。開発担当した須山シェフ、ECで販促を担当している中村さんにお話を聞いてみました。


須山 裕之(Hiroyuki Suyama)
スープストックトーキョーのメニュー開発を担うシェフ。店舗・オンラインで販売している商品の企画・開発を担っている。スープストックトーキョーと100本のスプーンで販売しているレトルト離乳食の開発も担当。1児の父。

中村 友子(Tomoko Nakamura)
スープストックトーキョーオンラインショップの営業・販促を担当。レトルト離乳食の「カミカミおうえんたい」を発案。たくさんの赤ちゃんとそのご家族に優しい離乳食をお届けするべく奮闘中。1児の母。

悩み多き離乳食期

ー100本のスプーンでも店頭でもご好評いただいている『あかちゃんがなんどもおかわりしたくなる離乳食』。わたしは息子の離乳食が始まる前からすごくハードルを感じていたので、当時にもこの離乳食があったらなあと思っていました。

中村:わかります!わたしもです。成長に合わせてお米の炊き方、潰し方を変えることにドキドキ。食事以外にもやらなくてはいけないこともあるので毎日てんてこまいでした。

そんな風に一生懸命頑張っているお母さんやお父さんを応援するものを作りたい。だからスープストックトーキョーのレトルト離乳食は、ここまでやる!?っていうほど手作りよりも手作りなんです。

ー手作りより手作り!どういうことなんでしょうか。

五感をフルに使う離乳食

須山:せっかく一食分をスープストックのレトルト離乳食で食べてもらえるなら、家庭ではなかなかできないことを一食に込めたいと考えました。
たとえば、ご家庭だと野菜はおんなじタイミングで煮て、潰して…という方法が主だと思いますが、レトルト離乳食ではそれぞれの種類にたくさんのテクニックを取り入れ手間ひまかけて仕上げています。

「鶏肉と7種の野菜のミネストローネ」ではトマトと一緒にキャベツを煮込み、トマトの酸味をしっかり飛ばしてからすり潰してトマトソースにすることで、キャベツの甘み、野菜のうまみをソースに溶け込ませています。食べやすさにプラスして、家庭ではなかなかやれないようなひと手間を。

「鶏肉とさつまいものおじや」「鯛出汁とトマトのおじや」には離乳食では普通は使わないきくらげやぶなしめじを使用しています。これらの食材は消化されることなく便として出てしまうため離乳食に入れる必要はないのですが、香りの部分で五感を刺激するために入れています。

「北海道産とうもろこしのシチュー」に使っている鮭。これは実は離乳食の具材として入れているわけではなく、出汁を取る為に使っています。引いた出汁は骨が入らないように丁寧に濾してから食材とあわせています。「鯛出汁とトマトのおじや」もおなじ手法を取っていて、魚の骨やアラから取る出汁とは違った、魚介の風味や旨味が詰まった出汁なんです。

左から、「鶏肉とさつまいものおじや」「鶏肉と7種の野菜のミネストローネ」「北海道産とうもろこしのシチュー」「鯛出汁とトマトのおじや」

おかゆは粒感を残したものをあわせて、お米の食感も味もいちばん美味しい状態で合わせられるように。その他、アスパラやニラ、大根といった食材は、野菜本来が持つ塩分が高いため、直接的に塩を使わなくても出汁やソースの旨味が合わさり、美味しく仕上がるように設計しているんです。

ー家庭ではできないテクニックがふんだんに使われているんですね。どうしてこんなにもこだわろうと思ったんですか。

須山:そもそも「離乳食」はその名の通り母乳やミルクから離れて大人の食事に近づくもの。だから、離乳食もちゃんと料理のひとつとして楽しんでもらいたいと思ったんです。初期・中期の離乳食は、どちらかというと一種類ずつ素材を試していく時期。より料理に近づく時期だからこそ後期食を開発することになりました。

他社で販売されているような野菜が何種類も取れます、とか、鉄分がたくさん入っています、ということに重きをおいたものではなく、スープストックトーキョーでやるなら五感をフルに使って「豊かな食体験を育てるもの」でありたい。ただただ食べるだけならやらなくてもいいかもしれないけれど、見た目も香りにもとことんこだわっています。赤ちゃんの大切な一食を楽しんでもらうことを目的としているので。

だから最終的には食べなくたっていいと思います。見る、香りを嗅ぐ、触る、口に入れる、食事の音を聞く。それで食べなくても赤ちゃんが体験したからこそ食べないという判断ができたということ。まずは興味をもってもらうことが大事なんです。

ー食べない、ということも体験のひとつですね。過去の自分に聞かせられたらどんなに気持ちが楽になったものかと思います。

中村:そうですよね。社内のお父さんお母さんメンバーとも離乳食販売開始前に座談会を行ったんですが、その時に「市販の離乳食に頼ってもいいと思いつつも、やっぱり離乳食は手作りがいい」という意見が多かったことに驚きました。

これから販売を行うわたしたちでさえ、市販に対してどこか抵抗があり、「手作り」ということに強く思いをもっているんだなあと実感しました。コドモの食事に対して大事に思っているからこそ、それが重荷になってしまうこともあるんだと。

だからこそ、須山シェフのレトルト離乳食に込められたこだわりの数々を聞いて、「これってわたしが作るより手作りじゃないか!」と気づいて。味や手間ひまはもちろん、「赤ちゃんの大切な一食を楽しんでもらいたい」という想いがこもっているので、後ろめたさがなく、むしろどんどん食べてもらいたいなと思いました。食事という時間を、赤ちゃんにも家族にとっても楽しい体験にしてもらえたらいいな、と。

大事な一食だからこそ、楽しい時間を

ー体験する、ということにおいてはECの離乳食ギフトに同封している「カミカミおうえんたい」も楽しい体験のひとつですよね。中村さんが発案されたものだとか。

中村:商品自体の良さをわかってもらって手にしてもらうのももちろんなんですが、「なんかいいな」「楽しそうだな」っていうところが入口となって楽しんでもらうのもいいなあと思っていて。冷凍スープの出産祝いギフトに同梱しているマンスリーカードがヒントになりました。マンスリーカードは月齢に合わせて成長の様子とともに写真に収めてもらうのが目的になっていますが「カミカミおうえんたい」は、お食事シーンとともに写真を撮ってもらうということを楽しんでもらったり、指人形やヘアバンドに見立てて赤ちゃんの食事を応援できるようなものにしています。

出産祝いに同封されているマンスリーカード

ー確かに、子どもは食べているところを誰かに見てもらって褒められたり、お気に入りのおもちゃに見守られているとやる気を出すことがありますよね。100本のスプーン店内でも赤ちゃんにスタッフがお声かけするとニコニコして食べているシーンをよく見かけます。

中村:そうなんです!「食べて食べて〜」って言いながら指人形を動かして応援しながら赤ちゃんとお母さん・お父さんがコミュニケーションを楽しんでお食事できるといいなと。

使用されている食材をモチーフにお子さまのお食事を応援

それと社内のお母さんお父さんメンバーで座談会をしたときに、「育休中にはなにか手を動かしたい、製作意欲が湧く」という話が多くあがりました。そこで、あえて完成したものではなく切り取ったり糊付けしたりして、お客さま自身で完成させてもらうものにしています。

カミカミおうえんたいを制作したデザイナーにもお子さんがいらっしゃるので、オトナもコドモも楽しめるように、とデザインをしてくれました。

ー社内のお父さんお母さんのアイディアがたっぷりと詰まっているんですね。
今後、離乳食関連で考えている企画はあるんですか。

須山:幼児食や手づかみ食、おやつなどの開発もできたらいいなと思っています。スープストックトーキョーの離乳食を楽しんでもらったお子さまもどんどん成長していくので、それに合わせてさまざまな食体験をしてもらいたいです。

ー優しさと楽しさがたくさん詰まった離乳食。お話を聞かせていただきありがとうございました。今後もたくさんの赤ちゃんや家族にとって楽しい食体験をお届けしていきたいですね!

取材・執筆:本間菜津樹