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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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2021年5月の記事一覧

犬になる夢を見た

大好きなご主人に飼われて 毎日お散歩に行って お話を聞いて撫でてもらえる そんな犬になりたかった ふざけた夢に心が跳ねて もう少し生きてみようと思えた 顔の無いご主人との永遠は やさしい一つの季節のようで 少しずつ遠ざかり お散歩行こうって鳴いても 離さないでって叫んでも いつしか声すら届かなくなった 夢は涙と一緒に溶けていった 言葉は首輪や鎖として 布団やご飯皿として残った 心の中を幸せな犬と悲しい犬が 交互にくるくるぐるぐる回り続ける ふわふわと地に足のつかない

生きるのに必要な君のひとしずく

半分この愛なんて要らない 何より大事に思うもの どうして分け合えるの そんな優しさ残酷なだけ 半分くれるなんて言わないで 優しさなんかで愛さないで 君をすべてくださらないなら 私ひとりで潰れて息絶える 半分でも一口でも 本当は涙出るほど嬉しいの 胸が裂けるほどくやしいの 優しさで撫でてもらえて 死んじゃいたいほど喜んだ 君の欠片に触れられるなら どんなさみしい一瞬でも必要だ 何もくれないなんて言わないで あと少し君を感じていられるように ひとすくいの水をください 君に

なくならない世界

すべてのものは過去にはならない 時間はただの位置でしかない 古くなるなんて錯覚だよ 脳は現在も過去も区別しない 好きな電気は何度でも 脳に読み聞かせてあげて 君の好きな世界は いつもここにあるよって安心させてあげて あの歌はいつでも歌ってくれる あの物語はいつも仲間に入れてくれる あの人との思い出は無くなったりしない 君が愛しく抱きしめるかぎり 君の好きな世界は ずっと一緒なんだよ

みにくい肉マネキン

お気に入りのドレス着て 歩いて踊ってピクニック 来週も来月も来年もずっと うーんと可愛く絵に描いてね 君の部屋に飾ってね 私はただの肉のマネキン 手も足も頭も服を着せるパーツ ほんとは恥ずかしくて トルソになりたい どうか君の脳内でだけは きれいなお人形に描いて