マガジンのカバー画像

◎私の詩すべて◎

69
切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

空想上の心中

約束は無いままに いつか話したたくさんの 夢物語は宝物 全部全部しまって 持って行くからね 世界を忘れる日まで 一緒にいてね 名前の無い物語 影も形もあいまいで 繋ぐ手も無い寂しさを 一人抱いて抱いて 連れて行くからね 世界から消える時も 一緒にいてね 心中 心中 心中しようね 形の無い二人 幻のあなた 作り物の僕 指切りもしなかった 未来もつくれないんだ 目も合わないままだ 声も聞こえない 一人夢の中 お話をなぞる 何もかも落としても 苦しみで狂っても すべてが

ぼくときみ

おぼろげなぼくのきみ ぼくしかしらないきみだから ぼくがずっとだきしめる からだがなくてもいつまでも ぼくがきえるまでいっしょだよ あいまいなぼくのきみ ついにしらないきみだから ぼくはずっとひとりきり すべてはゆめだったとしても ぼくがきえるまでいっしょだよ

てをはなす

この手を離してあげましょう 掴んでいるから重いのです 静かに落ちていきましょう 私の居ないあなたの世界 快く安く静か あなたは二度と汚れない 音を立てず 波を立てず 手を離す 痛みはありませんから 握りしめた指ひらくだけ 楽になりますよ 体をあずけました 温かい居場所をもらって いつまでも居られるかと思い ひととき宿をありがとう やわらかくて愛おしく いつまでもそこに居たい 願った私は弱かった 多くを望めば痛いのです この手を離してあげましょう 掴んでいるから重い

君の声の届く場所

君の声の届く場所に居たい 僕はいつでも振り向いて 抱きとめてあげる 君の望みの中に 僕は在る 君の声の届く場所に居よう 僕は君を探さずに 声だけ覚えている 君が鳴くとき 僕も鳴く 君の声の届く場所に居ても 僕は時々僕を忘れ 静かに眠るよ 君も世界から 居なくなる 君の声の届く場所に居られず 僕は一人ぼっちでも 怖さに耐えるよ 君が僕のこと 忘れても 君の声と会えて嬉しかったの 僕は何の役も果たせず 一夜の夢として 君をすり抜ける 寂しいね 君の声の届く場所に居たい

執着

消去法で愛したくないんだ どちらかといえば良いなんて そんな形で君を選びたくない 何があっても君をお腹に入れたい 簡単に手放せる軽い愛情じゃない 魂を引き摺りだして生贄に捧げてでも呪う 消去法で死にたくないんだ しかたないからここで終わり そんな流れで殺したくないんだ 何があっても物語を美しく描きたい 完結にまとめられる単純なお話じゃない 魂を引き摺りだして生贄に捧げてでも祈る

説明書の無い呪術

永遠に手を繋いでいるには どんな呪術が必要ですか 君と僕を縫い合わせて 一つの体にしましょうか それともお互いその身をバラバラに刻んで 二人の体を混ぜて二等分 そうして成形しましょうか 君の血と細胞からつくった小さなお人形の君を 僕の脳に埋め込んで いつもお話してもらいましょうか

さみしさについて

結局、さみしい。 どれだけ優しい刺激を胸に入れても。 日向で遊んでも、日陰で休んでも。 君の名前を知らなくても、数えきれないほど呼んでも。 何百キロメートルの彼方に沈黙している時も、 声だけ飛ばしあった後も、皮膚に触れる距離を知っても。 君はずっと僕の中に居るのに。 結局、さみしい。 さみしさは心細さだ。 僕がどれだけ君やこの世界を必要としていても、 君やこの世界に必要とされないなら僕は怖くなる。 居てもいいよと、存在を許されてはいても、 手を繋いでくれなければ、 頭の中は

同じ夢

ぼくたちは同じ夢を見た 甘やかでいとおしくやわらかい時間を ふたりでいっぱい抱きしめて 夢は夢の中でだけこころよく 夢は夢の中でだけいとおしく 日にあたって静かに溶けた ここには何も無い はじめから 何も思わず形無く 言葉の意味はあとづけだから 夢は夢の中でだけこころよく 夢は夢の中でだけいとおしく 溶けて水となり地にしみた ぼくたちは同じ夢を見た 時間の流れない空と土の中に 淡く小さく眠り続ける