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記憶とカレー

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カレーに関する記憶のまとめ。
運営しているクリエイター

#喫茶店

常連とイチゲン

 大学時代、学校の近くに行きつけの喫茶店が3軒あった。その内2軒――ギャルソンとTARO――については先日書いたから、今回は□□について書いてみる。  この店だけ伏せ字にするのは、もしも関係者が読んだ場合にきっといい気がしない内容だからである。 ※  □□のカレーは不味かった。何しろ苦かった。きっと焦がしたのだろうと最初は思ったけれど、いつ食っても同様に苦い。事によるとこれがこの店の味なのかもしれないと思ったから、以後ここでカレーを食うのは止しておいた。  □□の店主は

具無しカレーの記憶

 大学の帰りに学科の友人らと一度、正門前の “TARO” で食事したことがある。もう外が暗かったから季節は冬だったろう。  店主の奥さんがカレーライスを置いてキッチンへ戻った後、佐伯が「具が、無ぇ…」と言った。佐伯は女子だが、男のような物言いをした。  みんな別の話に夢中で誰も反応しなかったから、もう一度云うかと思って見ていたが、佐伯は云わずに食べ始めた。そうして「あぁ、美味い」と言った。やっぱり誰も反応しなかった。  具が見当たらないのはケチっていたわけではなく煮込んで

生姜の入ったカレーとハシビロコウ

 大学時代に通った喫茶店がいくつかあった。多分一番よく行ったのが『カフェ・ド・ギャルソン』だった。  落ち着いた感じの良い店で、紅茶の種類が随分豊富だった。自分には違いがわからなかったから、いつも名前を言いやすい『アフリカンジョイ』を注文していた。  一方、食べ物のメニューは簡素で、トースト、サンドイッチ、カレーライスぐらいしかなかったと記憶している。  カレーは随分美味かった。他のお客が「ここのカレーはねぇ、本当に美味いのだよ。家で真似しようとして色々やってみたのだけれど