人はなぜマルチ商法にハマるのか
昔々あるところに一人の若者が住んでいた。
ある日そこに旅人が訪れ、若者に言った。
「経済的な自由を手にしたくないか?時間の切り売りやめて、ラットレースから抜け出そう」
若者は答えた。
「方法もわからないし、失敗も怖い」
旅人は
「では私の仲間に加わりなさい。
お金持ちになれる仕組みと、志を同じくする仲間、ロールモデルとなる先輩が君を待っている」
と誘った。
こうして若者は、旅人の仲間に加わった。
それがマルチと言われるグループとも知らずに...。
前段
ということで、「人はなぜマルチにハマるのか?」について書いていきたい。
これは僕がマルチグループの人とと接する中で気づいたことのまとめである。
あ、だから人はマルチにハマるんだ、と僕なり納得したことの、僕なりの解釈だと思ってほしい。
また、接した人数はごく少数であることも付け加えておきたい。
それでも、一つの人間心理をつくものとして、マルチグループというのはとても良くできているように思え、一種の感動のような驚きがそこにはあると感じた。
対してなにかの役に立つとも思えない情報だが、暇つぶしの一環としてまとめていくので、同様に暇つぶしとして読んでもらえればと思う。
言うまでもないことだが、このnoteでは、マルチを推奨もしなければ、貶めるつもりもない。このnoteを介して、誰と戦うつもりもないので、その点だけは蛇足を承知で描き加えておく。
◆ハマる理由① お金持ちになりたいが失敗が怖い
マルチグループが提供しているものの一つに、「お金持ちになれるシステム」というのがある。
正確に言うと「お金持ちになれるかもしれないシステム」であるが、だとしても、まるで夢のようなシステムである。
例えばどんなものだろうか?
僕が見たマルチの仕組みにあったのは、会員母体自体がマーケット、という仕組みだ。所属会員は数万人いるそうだ。
会員たちは、自分の"親"から毎月サプリや化粧水などを毎月定額購入しおり、そして自分に"子"ができるといくらかマージンが入ってくるというシンプルな仕組み。
つまり、
自分の支払い < マージン総額
となれば、在籍自体は実質無料になり、そこから先は完全に収入となるわけだ。
見方によっては、月額利用のかかるサブスクアフィリエイトシステム、とも捉えられるだろう。
そして、会員がやらなくてはならないことは極めてシンプルだ。やることは新たな会員を勧誘してくるだけであり、数人勧誘できれば一段落。
そしてトントンになって以降は、名誉会員のような扱いになり、所属会員に対して商売ができるチャンスを与えられる。
たとえば、会員向けの飲食店。
会員たちは、勧誘に必死である。
毎月相当な額がサブスクで出ていくので、いち早く"子"を作る必要がある。その勧誘活動の一環でパーティを頻繁に開く。
つまり、その会場として提供する飲食店を経営するということだ。
客が来ることが確定している飲食店ほどカンタンなビジネスもない。
このように、サブスクアフィの仕組みの向こう側に、さらに大きそうに見える夢をおいておくことで、会員はますます「これをやるだけでお金持ちになれる」と信じられるようになる。
まとめると
これさえやればお金持ちになれると心から思える、シンプルな仕組みを提供すること。
これがおそらくマルチの肝の一つだ。
なぜこの仕組みが刺さるかというと、
お金持ちになりたいとはみんな思っているものの、やり方がわからないし、失敗して人生が台無しになるのは皆怖いからだ。
だからシンプルでわかりやすく、お金持ちになれそうな仕組みに皆惹かれる。希望を感じてしまう。
正直、その金額を毎月払うなら、1年貯めればアパート経営くらいなら始められそうではあるが、そうと知っていても会員たちはマルチの方を選ぶ。
「でも失敗するの怖いし、ここでみんなと一緒にやったほうがいい」
「一人で起業できるなら、ここにいないよ」
会員たちは、バカではない。
まあ、秀才ではないかもしれないが。
しかし、友人として付き合うのに十分な知性と人間性を持ってる。
つまり、彼らは騙されているわけではない。
彼らはマルチに属することに、明確に価値を感じている。
多くの人たちや起業家からすると割にあわないようにしか見えなくとも、彼らは明確に価値を感じ、自分にとって役に立つことにお金を払っているのだ。
故に人はマルチにハマるのである。
◆ハマる理由② 積極的にビジネスを教えてくれる人が、マルチしかいない
普通に考えればわかることだが、多くの社長は弟子を取らない。取る意味などないからである。
自らの成長と、自らのビジネス、組織の問題解決、顧客獲得。やることは無限にあり、普通に手一杯である。
どこに弟子を取る時間があるだろうか?
一方マルチは違う。マルチは会員を増やすことこそがビジネスのキードライバーである。活動の大部分は自分に付きしたがう弟子を取ることに費やされている。
経済的に自由になりたい、サラリーマンを抜け出したい、自分の会社を持ちたい。
このような考えを社会人が抱いた場合、教えてくれる人を見つけるのは極めて難しい。
例えば都心に暮らす学生なら、インターンなどを通じて経営者と出会ったり、同級生がベンチャー社長をしていて「社長ってこんなかんじなのか」と肌感を得ることもできるだろう。
しかし殆どの場合、一介のサラリーマンにとって社長とは雲の上の存在であり、教えを請うなど夢のまた夢だ。
仮に師事すべき経営者に自力で行き着いたとしても、普通のサラリーマンを弟子にするとは到底思えない。
それが現実である。
だからこそ、人はマルチに巻き込まれるのである。
なぜなら、マルチは積極的そして大人数で弟子を勧誘しているからである。
マルチは優しい。
マルチは彼らの入会を拒否しない。
マルチはそのような人のために存在しているからだ。
積極的に探しても出会えない野生の経営者の師匠。
探してなくても向こうからやってくるマルチ。
もうおわかりだろう。
故に人はマルチにハマるのである。
◆ハマる理由③ マルチが魅力的なコミュニティだから
個人的にはさほど魅力を感じないが、会員にとっては魅力的なようである。
まず、全員がお金持ちになりたいという目標をもっており、そんなコミュニティはマルチくらいであろう。趣味でもなんでも、志を同じくする人で構成されたコミュニティは居心地がいい。
また、自分の"親"にあたる人物を含め、組織の上の人は皆優しい。夢をバカにしたりしないし、応援してくれる。
それも当然である。
なぜなら会員がお金持ちになるということはマルチの活動を頑張るということであり、それがマルチという仕組みにとっての発展だからだ。
人の悩みの9割は人間関係にあるという。
その点マルチグループは良いコミュニティを内包している可能性が高い。
人間関係の悩みの深刻な人ほど、その中に強い輝きを見るのではないか。
故に人はマルチにハマるのである。
終わりに
以上が僕の理解するところの、人がマルチにハマる理由である。
実は冒頭の茶番で概ね内容を網羅していたというオチである。
マルチに関しては賛否どちらにも過激な思想を持つ人がいる。
ゆえに、できるだけどちらにも敵を作らないよう、フラットに書こうと試みた。しかし題目が「ハマる理由」である。言い換えると、当事者が何に引き寄せられているかであり、魅力に近い概念である。
こうした枠組み上のバイアスもあり、結果としてどちらかというと賛よりの文が出来上がったように思う。
そこで、バランスするために改めて伝えるが、本文はマルチグループへの参加を推奨しない。
一度会員となれば、世の様々な事業体が汗水流して稼ぐLTV(ライフタイムバリュー: 顧客が障害を通してその会社に落とす金額のこと)を遥かに超える金額をあっという間に提供することになる。
また、当然だが最も儲かっているのはマルチビジネス運営体である。
会員は運営体から商品を買い付けて第三者に転売しているにすぎず、母体が大きくなればなるほど運営体は利益的になっていく。
先の例のマルチ運営体の視点で見たとき、これは巨大な定期購入ビジネスであり、その最大の障壁である会員勧誘コスト、つまり営業コストを会員に肩代わりさせることで成長している。
構造上、最も損をしやすいのは後発参入の末端構成員であり、数百万単位の金銭損失を被る可能性があることを示唆し、本稿の結びとする。
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