「デジモンアドベンチャー:」古参ファンの憂鬱・新規層の困惑

こんにちは、センリと申します。
こちらは、旧作デジモンアニメ好きの私が、2020年放送の「デジモンアドベンチャー:」に抱いたお気持ちを垂れ流すだけの記事です。

一部、デジモン新規視聴者の感想も載せてます。

最初に断っておきます。
ほぼほぼ不満しか出てきません。

「リメイク版めっちゃおもろいやん!」
「リメイク最高! マジありがとー!」

という人が読むと100%ストレスがたまる内容になっているのでご注意下さい。


筆者は旧作アニメ好きライトオタク層

一応、私がどの立場から感想を書いているのか、最初に軽く触れておきます。

・小学生の頃に旧作「デジモンアドベンチャー」~「デジモンフロンティア」を毎週見ていた。
・高校生の頃に突然電波を受信。「デジモンテイマーズ」全話を見直し、改めてデジモンファンになって他の作品も全て見直す。
・好きなモンスターを使った二次創作マンガを120ページくらい描いた。
・「デジモンセイバーズ」が合わず、次第にコンテンツから遠ざかっていった。
・比較的最近の映画などは一切見ていない(評判悪いか、気付かなかったため)

この程度のデジモンオタクです。

原作ゲームはほとんど知りません。そういう層の方とお話すると8割がた話についていけなかったので、たぶんデジモンというコンテンツ全体においてはライト寄りなオタクだと思います。

「デジモンかぁ。子供の頃好きだったよ!」という層よりはヘビーかもしれませんが、ずっと追ってるわけでもないので、見方はそこまで一般層と変わらないかなぁと思います。


不満1:旧作の魅力を潰している上に新規に優しくもないストーリー

私が一番、困惑したのがこの部分。

本作は旧作をリメイクしながらも「完全新作」と銘打っているよく分からないタイトルですが、その内容は、古参にとっても新規にとっても「面白くない」「何を楽しみに見ればいいか分からない」ものでした。

実は私のパートナーニンゲン(旦那)は、私と同世代であるにも関わらずデジモンアニメを見たことがない人でして。デジモン好きである私は「この機会に!」と思い、旦那と一緒にリメイク版の視聴を開始しました。

両者の感想を簡単にまとめると、こうなります。

私「旧作の楽しかったポイントがだいたい全部潰れてる」
旦那「意味の分からん演出が多すぎて話についていけない」

まず私の感想から書きますと。

旧作ファンから見ると、アドベンチャーで楽しかった部分が軒並み消される改変されるかしていて、童心に返ることすらできなかったというのが正直な感想でした。

●私の思う旧作の魅力
・未知の世界を冒険し様々なデジモンと関わるワクワク感
・冒険の場であるデジタルワールドの異世界感
・子供たちの心の成長がデジモンの進化という形で示される燃え展開
・子供騙しで終わらないちょっとヘビーな展開(パートナーや善玉デジモンが敵に殺されるなど)

それがリメイク版では……

・無味乾燥なマップに配置された敵デジモンを倒すだけの冒険
・デジモンの生態系、生活感がまるで感じられないデジタルワールド
・最初から何もかもを悟り、使命のためだけに動くオトナな子供たち(しかも初対面1日目でデジモンが過去作の最終形態まで進化する)
・道中デジモンとの関係は基本
1話内で完結して薄っぺらく、「クリリンのことかー!」と感情を揺さぶられるようなシーンが皆無。

という感じに変わっていました。

実際には死んでる善玉デジモンはいるんですけど、描写が薄いのでそこまで感情的になれないんですよね。「パートナーデジモンの死」もあるけど、「出会って初日に死亡」なので結果的に「道中デジモンが死んだ」くらいの重さに留まっている。いやそうじゃなくてさ……。

結果、私がデジモンアドベンチャーに求めていたものが「何一つ見られていない」という悲惨な状況です。

でも、それだけならまだ許せます。これからデジモンを見る新規層や現代の子供たちにとって面白い内容であるならば、旧作の良さが消えても全然問題はないからです。新しいファンを取り入れなければコンテンツは廃れるだけですからね。

じゃあこのリメイクは、新規視聴者に向けた全く新しいデジモンアドベンチャーになっているのかというと、別にそういうわけでもないんですよね。

ここからは、旦那の感想。

●シリーズを知らない人の目線から見たリメイク版
・いきなり合体進化してるけど何? まったく燃えない。
・なんで子供たち(太一、ヤマト、空)はこんなに冷静なの?
・聖なるデジモンがそんなに大事? 冒険の動機そこでいいの?
・進化の時に出るあのマーク(紋章)はなんなの?
・旧作オマージュ多そうだけど、古参との温度差を感じて微妙な気分。
・たまに単品で良い話はあるけど全体的についていけない。

ちなみに旦那は、勇者ロボットアニメとか少年マンガとかその他もろもろのエンタメ作品が大好きなオタクです。面白ければ子供向けアニメも普通に見ます。いわばデジモンの新規顧客になり得る層なのですが……まあ、そんな人から見てもこんな状況ですね。

一体このリメイクは誰に売ろうとした作品なんでしょうか?

古参ファンとしても、新しいデジモンを見てみたいファンとしても、疑問を感じずにはいられないです。


不満2:子供たちの成長描写がとにかく雑

物語は基本的にキャラクターの変化を楽しむもの。特にデジモンに関しては、子供たちの成長がメインストーリーの軸となっている王道的な娯楽作品です。

その一番大切な軸の部分が、リメイク版はとにかく雑! 雑の極みです! 正直、これが一番の問題だと個人的には思う。

古参ファンの私、新規層の旦那、両名ともが同様に抱いた感想としては、

「メインの主人公2人に感情移入できない!」
「太一・ヤマト・空は『強くてニューゲーム』してるよね?」
「唯一、感情移入できるのは……丈かな?」

でした。
特に私が違和感を感じたのは以下の2つの点です。

●最初から「世界の危機のため」に戦おうとする小学生たち
旧作では、まず異世界に飛ばされたことに困惑しながら、「家に帰るため」に皆で協力して冒険を始めます。

その先で、自分たちが悪いデジモンに狙われていることを知ったり、道中で出会ったデジモンと親交を深めた結果として、彼らに害を成そうとする敵とも戦う流れになっていきます。そして最終的には現実世界の危機をも救う。

しかし今作では、いきなり現実世界がピンチ。まあそれはいいとしても、その「現実世界の危機を救うため」になぜか一般小学生たちが「俺たちがやるしかない!」と立ち上がるのです。

え? 皆さん、勇者の家系とか何かですか?

全体的に「物わかりがよくて責任感の強い」小学生ばかり出てきます。子供の成長を軸に話を作るべき題材なのに、彼らは最初から心構えがオトナなんですよね。

●子供の成長とデジモンの進化が結びついていない
旧作では「仲間との絆」を表現するための最大の手法として、ジョグレス(合体)進化が最終盤に登場しました。

それを今作では「初対面の二人がさも当然のごとく」やってしまう。しかも、互いに初めての経験であるはずなのに、この合体進化に対する疑問や困惑は一切抱かず、まさに勇者みたいな面構えで戦いに身を投じていきます。

このシーンは旧作映画のオマージュでもあるのですが、その映画はTVシリーズ終了後の時間軸が舞台。序盤でこれをやられて古参ファンの誰が喜ぶと思ったのか。全体構成を考えた人を小一時間問い詰めたい気持ちでいっぱいです。やればいいってもんじゃねぇだろ。(ちなみにシリーズ構成をやってる人が脚本した回は軒並み心理描写不足に思う)

ジョグレス以上の進化が今後出てくるとしても、序盤でやることではない。案の定、この後に続く「通常の進化」が軒並みショボく見えてしまいました。普通に考えて順番がおかしいのです。


不満3:前作オマージュも雑

原作がある以上、前作のオマージュはやるべきです。「デジモンアドベンチャー」と聞いて皆が思い出すような名シーンは、やはりリメイクである以上、外すべきではありません。(それを外すなら新作を作れという話です)

今作にも、そういう意図で入れたであろうシーンが多くあります。ただ、本当に「差し込んだだけ」レベルになっているため、総じてストーリーの完成度が低くなっています。

序盤における合体進化がその最たるものですが、やはり「そのシーンに至るまでの過程を無視した演出」がとにかく多く、オマージュのシーンが全体の流れを阻害している印象を受けるほどでした。

特に記憶に残ってるのは以下の3つ。

・序盤での合体進化
・初登場デジモンがやたらピックアップされる(レオモン)
・過去の名シーンをなぞっただけの展開(エンジェモン)

もしかしたらこれは古参ファンだけが感じることかもしれませんが、総じて「いや、今それ見せられても……」という気持ちになりました。

一方で、初見の旦那は「特に燃えない」という感想でした。

古参ファンへ提供する「付加価値」として、あるいは作品の「骨格」として欠かせない要素であるはずの「名シーン」が、結果として視聴者の感情移入を阻害する要因にしかなっていない。

本当に、誰のために作られた作品なのか分からないと感じます。

ここまでくるともはや「有名な過去作の名声を利用して自分の好きな話を作ろうとした汚い大人がいた」、もしくは「とりあえずこうしとけば売れるだろうという打算のもと、特に熱意もなく流れ作業で作られた作品」にしか見えなくなってしまうのですが……私の考えすぎでしょうか。


不満4:燃える流れが作れていない

基本的にこういう娯楽アニメって「主人公が障害を乗り越える瞬間」が見せ場で、そこをいかにかっこよく熱く描くかによって楽しさが変わってくると思います。

デジモンで言えば、進化バンクと挿入歌を入れるタイミングがとてもとても重要。もう、あの曲を聴くだけで古参ファンは血が滾るレベルで興奮します。それくらい、過去作は演出が上手かった。(ダレるところもあったかもしれないけど総合的には良かった)

しかし今作は、「え、そこで進化バンク入れる?」という感じなんですよね。

しかもその進化バンクが長い!「話の展開上ここで一段階進化しておかないと」っていうだけのシーンにも、普通にフルの進化バンクを入れたりするんですよね。しかも2体立て続けに流したり。挙げ句の果てには、別に障害を乗り越えるシーンでもないのに挿入歌を入れちゃったり。

とにかく進化バンクが「燃える演出装置」になってないんです。正直、早送りしたいくらい。デジモンにおける「お約束の流れ」を作れていない。ストーリー面でも演出面でも。

たったこれだけのことでも「デジモンアドベンチャー」としての魅力は半減してしまうので、進化バンクの扱いはマジで慎重になるべきでした。

挿入歌が変わるのは許せる。でも、演出の下手さだけは看過できません。

この「作者だけが勝手に盛り上がってる」感。
まだ書き慣れていない素人の創作小説を彷彿とさせます……

不満5:道中デジモンがただの装置

旅の中で出会うデジモンとの交流も、原作の魅力でした。特にアドベンチャーは、旧シリーズ4作の中で一番ここがしっかりしていたと思う。「行ってみたい」と思えるデジタルワールドが描かれていた。

しかし今作に登場する道中デジモンは主に4種類です。

・完全なる敵(ちょっと喋る強者1体&全く喋らないザコ大量)
・ちょっと喋る味方
・とりあえず襲われてる一般デジモン(ちょっと喋る)
ただの戦う乗り物(もう3体くらい見た気がする……)

なんか、普通に飽きるんですよね。
キャラとしての中身がない。すっからかん。
「あーまたそういう感じ。あー、ソイツ倒してね、終わり。ハイ」みたいな感じです。

言ってみれば、主人公たち以外が全員モブキャラなんですよ。
冒険モノがそれじゃ全然ドラマが生まれないんです。
むしろ、ドラマ描く気あります?
デジモンをちゃんと「生き物」として扱ってます?

そのあたりを削った分、パートナーや子供たち同士の交流が濃くなってるかっていうと、それもなく。むしろ逆で。

そりゃそうですよ。内側だけの交流じゃ予定調和を出ないんですよ。仲間割れとかしてさ、そこで外からの意見を取り入れて少しずつ人間って成長するんじゃないですか。旅先で出会うデジモンって、そういう役割もあるじゃないですか。

本作の道中デジモンは、本当に「障害物」とか「助けられるだけのノラ猫」とか、それ以上の存在意義がないのです。彼らが何のために会話する機能を持ったのか疑問に思うくらいに、デジタルワールドの社会が見えてこない。旅の楽しさは「出会い」なのに、それが全くない。

乗り物に使われるだけで頭空っぽのデジモンとか、もはや不憫です。彼らは普段、何のために生きてるんだろう。何を大切にしていて、何のために悪についているんだろう。何もない。作者の都合以外、何も見えてこないんだ。

不満6:なんでそのタイトルにした?

最後のは非常にどうでもいいことなんですが、どうしても気になったので書かせて下さい。

「デジモンアドベンチャー:」というタイトル。

明らかに失敗でしょ。

なんでって、「:」がまずなんて読むのか分からない人もいるし、読めても正しいのか不安になるレベルで意味が推測できない。小さい子供はまず読めない。

そして、一番の問題は「:」が検索では区別できない文字であることです。

要は、「デジモンアドベンチャー」で検索しても「デジモンアドベンチャー:」で検索しても、検索エンジンでヒットする内容は同じなんです。

これは放送終了後にこの作品を知った人が、この作品(あるいは原作)の関連情報を探す際に非常にわずらわしい自体を招いてしまいます。「:」を探してるのに過去作しか出ないとか、その逆とかが起こりえます。

あと、人間が見ても普通に紛らわしい。
認知度を高める気あるのだろうか。

「:には実はこういう深い意味があって……」とかは作者の自己満足でしかないので、心底どうでもいいです。本作が名作になればその辺を語る意義もあるかもしれませんが、この作品が名作として語り継がれることは多分永遠にないので、やっぱりいらないです。

そんなこんなで「ネーミングからすでに失敗してるよね」という話でした。
(一応、本職webデザイナーなのでこの辺はすごく気になる)


総評

●デジモンリメイク版のいいところ
・作画がまあ綺麗
・昔懐かしのキャラやデジモンが動いているところを見られる
・昔は出番のなかった好きなデジモンが登場すると嬉しい(オタクは)

●デジモンリメイク版の微妙なところ
・過去作のワクワクを期待すると裏切られる
・新作としての新鮮味を期待しても裏切られる
・説明不足でシリーズ初見の視聴者に優しくない
・盛り上げる演出がヘタ(進化・挿入歌の無駄遣い)
・冒険モノ、成長モノとして単純にクオリティが低い(子供だまし)

この手の低年齢向け作品についてよく思うのですが、「子供向け」か「子供だまし」かって部分は、やっぱり人気に直結します。

子供向けの作品は、子供向けに作っているだけであって実際は「大人でも楽しめる」娯楽作品だと私は定義しています。「トトロ」や「ドラえもん」なんかは最たる例ですね。

一方で子供だましな作品とは「子供しか楽しめない」娯楽作品です。中には子供ですら楽しめない作品も……。

そして、子供の頃から語り継がれている名作のほとんどは「子供向け」作品なんですよね。大人になってから見直しても大抵は面白い。「意外と深い話だった」とか「子供向けの割にけっこうエグイ話だったんだ!」と驚くことも多いです。

今回のデジモンリメイクは、過去の子供(現在の大人)を釣ることを目的とした作りになっている割に、「子供だまし」の域を出なかったなぁという印象でした。

まだアニメ終わってませんけどね。ただ、もうなんだか見る気力をなくしたというか、ここから良くなる展開が全く想像つかないので、せっかくnoteを始めたことだし自分の思ったことをまとめておこうと記事にした次第です。

ぶっちゃけただのストレス発散です。(笑)
過去の名作を金儲けの道具にするのいい加減やめろや!
新作で勝負しろや!
と。
デジモンは特にひどいと思うの。

「その気持ち分かるわ!」って方が、もしいらっしゃったら幸いですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?