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千年オリーブテラス・インタビュー VUILD株式会社 代表取締役CEO秋吉浩気さん(その1)

2023年秋、オリーブで心とからだをととのえるウェルネスガーデン「千年オリーブテラス for your wellness」が、小豆島にグランドオープンします。今日は7月にひと足早くオープンしたコミュニケーションラウンジ「The GATE LOUNGE」について少しお話ししようと思います。

コミュニケーションラウンジThe GATE LOUNGEは、「千年オリーブテラス for your wellness」を訪れた人々を最初にお迎えする場所。オリーブと人々をつなぐ、はじまりの場所です。オリーブオイル(美容用・食用)やオリーブ茶を体験したり、オリーブの歴史や文化、オリーブの香りや持っている力をオーディオガイドを通して体感したり。オリーブの飴を使ったマインドフルネスイーティング、海を見晴らすテラスでのプランツメディケーションなども体験することができます。

初めてThe GATE LOUNGEを訪れた方の多くが、実は少し驚かれます。それぞれ形の違う木のパーツを組み合わせてできた建物。「自分たちで島のヒノキを調達して、乾燥や加工までしたんです」とご説明すると、さらに驚かれます。施主自らが材料を調達し、製材や加工した木材から誕生したThe GATE LOUNGE。そのきっかけはオリーブ兄弟の「森を切り開く開発ではなく、島の恵みを使い循環させる形で作りたい」という想いと、「建築の民主化」を掲げるVUILD株式会社 代表取締役CEO 秋吉浩気さんとの出会いにありました。

2023年3月、編集部はThe GATE LOUNGE建設中の秋吉浩気さんにお話を伺いました。今回から2回にわけてお届けします。

VUILD株式会社 代表取締役CEO 秋吉浩気さん

VUILD株式会社 代表取締役CEO
秋吉浩気さんインタビュー①

瀬戸内海と島々と、千年のオリーブ大樹が立つ「オリーヴの森」は、まさに稀有な場所。このプロジェクトは素晴らしいものになるに違いないと思った。

オリーヴの森のような素晴らしい場所はずっとそこに暮らしている人でなければ見つけることができない場所、出会えない場所です。これまでいろいろな場所を見てきましたが、開かれた半島の先端から瀬戸内海と島々が見える。そこに千年のオリーヴ大樹が立っている。日本中探しても他にはないのではないかと思える稀有な場所です。素晴らしい条件がたくさん揃っているので、今回のプロジェクトは素晴らしいものになるに違いない。そう思いました。

自分たちで伐採した木を運び、皮をはぎ、丸太を乾かして、仕口を加工する。このプロジェクトは、「建築の民主化」を実践するプロジェクト。

今回のプロジェクトは小豆島で生まれ育った人たちが地域に投資し、お客さんを迎え入れる施設や場所を作る。自分たちが住む地域に投資し、豊かな場を集積させていくことで、企業の価値とともにそのエリアの価値も高めていく。地方創生プロジェクトの王道パターンだと思います。私たちのデジタル家づくりプラットフォーム「NESTING」の初号機が建った時、オリーブ兄弟のおふたりが北海道の現場に来てくれました。その時、トップダウンで建築家に一方的に決定されるのではなく、私たちとなら一緒に作る過程が楽しめるから選んだと言ってくれました。そういうことを私たちも大事にしているし、そこに共感して価値観を置いてくれているのはうれしいと思いました。

すでにスタッフの皆さんが施設のひとつ、The GATE LOUNGEを自分たちの手で作りはじめていますが、これって普通では考えられないことです。自分たちで伐採した木を運び、皮をはぎ、丸太を乾かし、仕口を加工する。建築素材を自分たちで調達し、建築を作っている。まさに、私たちが「建築の民主化」というものでやりたかったことを実践している。地域住人自身が作りたい町や建築を本来あるべき姿で作れるように、デザインとテクノロジーの力で支援することが使命だと思っていたので、まさに今、それができているのだと思います。

見えない価値の集積、歴史的文化的な集積を、どうやって金銭的な資本に還元しつつ、持続的に繁栄させていくか。それは外から来た人間が一時的に開発したのではできません。世代を超えて受け継がれる森を目指して小豆島でオリーブを育てるというサスティナブルな事業を行っている小豆島ヘルシーランドを、私たVUILDがデザインやテクノロジーでエンパワーメントする。今回のプロジェクトは、そういう意味でも社会的インパクトは大きいと思います。

地域プロジェクトの場合、眠っている資源があっても、それに気づいていなかったり、焦点を当てることがなかったとする。焦点を当てるのは、外から来る者の役目だと思う。

施主自らが伐採した木を運んで、皮をむき、乾燥させるビニールハウスまで作る。今までの建築では考えられないプロセスの変革をしているわけですね。自分たちでやってみようというのは簡単ですが、実行するのは難しい。それを千年オリーブテラスの人たちは本当にやってしまうのがすごいと思います。地域のプロジェクトの場合、眠っていた資産や資源があっても、それに気づいていないことが多い。やろうと思えばできたかもしれないけれど、そこに焦点を当てることがなかった。焦点を当てるのは、外から来る者の役目だと思っています。

今回は小豆島の島内にあるヒノキを伐採し建材として使用しますが、はじめ伺った時、島外から建材を調達してきて建てるから、木造にすると建設費が高くなると仰っていました。でも、島内に森があるのになぜ使われないんだろうかと不思議に思いました。自分たちが育てた島の恵みを使い、それをまた育てるという循環が島内で完結していないことが課題だと思いました。また、島の木を使う場合、製材所はあるが乾燥機がないこともわかりました。

島内の人は島内の木材が使われないのは乾燥機がないからだと言います。それを聞いていて、だったら作ればいいんじゃないかと思いました。論文など調べながら感覚的にビニールハウスで完走できるんじゃないかと思っていたのですが、乾燥のプロに聞いてみたらできそうだと。できないと思う理由は何か、規定概念を疑っていくと意外にただできないと思っていただけだったりします。そのバイアスの一個一個にメスを入れていく。常識や慣習は常に疑うようにしています。

次回へ続きます。

【VUILD株式会社】
3D木材加工機「ShopBot」の輸入代理店・サポートを行う「ShopBot支援事業」、オーダーメイド家具をオンデマンドで地域生産するためのWEBアプリケーション「EMARF」を運営する「EMARF事業」、建築設計を行う「VUILD ARCHITECTS事業」、デジタル家づくりアプリケーションサービス「NESTING事業」の4つの事業を通して、専門性がなくても「ものづくり」に取り組むことができ、誰もが大工や建築家になれる環境づくりに努めている。HP:https://vuild.co.jp/