パイの大きさを増やす発想。[くま日誌]275号
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昨日も「プラスサム」の話について書きましたがもう少し続けてみようと思います。
私たちはデフォルトの設定が「一定の大きさのパイ」をみんなで分け合う(ゼロサム)というようなイメージで考えてしまいがちですよね。「嫉妬する」とか「羨む」という気持ちも、他の人の取り分が増えれば自分の取り分が減ると言う気持ちから表出してるのかもしれません。
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世の中もそのような「ゼロサム」の考え方に沿って議論が進められてると思われることもあります。
よくあるのが「労働市場に参加する高齢者の数が増えることで若者の仕事を奪ってしまう」とか「外国人が増えて私たちの仕事を奪ってしまう」という議論ですね。
これは直感的には確かにそのように思われるところもありますが、実際は労働市場に参加する人が増えれば増えるほど、パイ全体が大きくなるため、私たち自身の取り分も増え、参加する人全員がハッピーになります。
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ステークホルダー全員というのは、投資家、従業員、経営者、協力会社、税収を得ることができる国や市町村などそのビジネスに関わる全員が利益を増やすことができるという意味です。
よく広告や記事などで、例えばAppleやAmazonはいかに巨額の利益を上げているのかということが、まるで悪いことをしているかのように喧伝されていたりします。
実際にAmazonは2019年2月、ニューヨークに本社を建設する計画を断念したそうです。近くの住民や政治家がこの本社移転に強行に反対したためで、その理由は「Amazonが受ける税金控除の額が大きすぎる」ということでした。
仮にそこにAmazonが進出していれば、一時的な税金の控除なんてわずかなものですよね。Amazonは多くの雇用を生み出し多くの税収を長期にわたって納めてくれるからです。
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また企業だけでなく、収入が多い企業の幹部も批判されることがあると思いますが、ほとんどの場合的外れではないかと考えています。なぜなら彼らはパイを広げることを仕事にしているからです。
もちろん公平に利益を分割することも重要ですが、それより重要なことは価値を生み出しパイを広げることなんですよね。
このメンタルがあるからこそ、敬意を持って従業員に接し、従業員を教育し、より良い処遇を実現するという形になるんじゃないかと思ってます。
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私たちも、他人から奪うのではなく価値を与えることで、パイの大きさを広げることをイメージしながら日々の仕事に取り組むことが重要なことではないかと考えています。
■まとめ
・私たちは気を抜くと、「一定の大きさのパイ」をみんなで分け合う(ゼロサム)というようなイメージで考えてしまいがちである。
・このメンタルをベースにした議論も世の中に多くあり、他人が自分のものを奪っているという発想の議論も散見される。
・しかし多くの場合それは「高い付加価値を創出した結果」であり、プラスサムの世界では私たち自身も利益を得ることができているのだ。