傘泥棒死すべし!

気持ちよく晴れた8月の朝

彼女がこう言ったんだ

「今日は午後から天気悪くなるんだって

傘持ってった方が良いよ」

僕は何だか そんな彼女の先見の明に

感動してしまって

嬉しくなって

うきうきして 右手にかばんと 左手に傘を持って

意気揚揚と会社に出かけた

道行く人は誰も傘など持たず

まるで街全体が

「今日は午後から天気悪くなるんだって」

ことを知らないみたいだ

ただ ただ 1人 いつも決まった時間にすれ違う

あの女性だけは

キレイなこじゃれたまさしくアンブレラいうべき傘を

1つ持っていた

すれ違いざまフト合った目の中に

何百回とすれ違ってきた中で

初めて見た小さな笑みを見つけた

それはまるで

これから世界に迫り来る

大災難を この2人だけが

回避できるかのような

まるでノアの箱舟のノアとその妻との間にしかありえないような

あたたかい微笑だった



 



それはいいとして おいといて



 



僕はそんな8月のよく晴れた空の中を

彼女が選んでくれた美しい傘をぶらさげて



 



実に珍しく仕事に向かった



 



道行く人たちは今日これから起こる

大災害と大惨事を知らないのだろう

実にすがすがしいいい顔をしている

僕だけが別の意味でいい顔をしていることに

気付いているのは僕と彼女だけだ



 



さて そんな こんなで 会社に着き

くだらない仕事を今日もしていると

お昼時から



 



やはり



 



やはり



 



空が曇ってきた!

職場の同僚はみな口々に

えーとかあーとか降っちゃうのーとか聞いてないよー

とか言ってるあはは

僕は聞いてたし降るんだよ

あわれな人民たちよ今日は まるでかえるのように

ずぶ濡れになるがいい

そう かえるになってかえるのだ!



 



ということは僕は 良い人で あるから言わずに いた



 



心の中で 叫んでいるだけにとどめておいた



 



しかし 顔は心を映す鏡であるから

酸いも甘いもかみ分けた

人生経験豊富な死にかけた老人には

僕の心など全てお見通しかもしれなかったが

しかし そんな死にかけの老人などのことは

気にかけなくていいのだ。あの首相もあの大臣も

死にかけのあの年寄り のことなど気にかけていない

に違いない むしろ 早く死んでくれと

新しい 次の次の 世代のことで頭がいっぱい

なのだ。僕も そんなこんなで頭がいっぱいのまま

仕事を終えた。今日もつまらないくだらない

仕事だった。



 



外を見る・・・



雨だ! やった! 土砂降りだ!

ざまあ見ろくだらない人々よ。さあキミ達は

かえるだ! かえるでかえるのだ・・・・!

ふふふ・・・みなの慌てふためいている姿がこっけいで

ユーモラスでたまらないあはははは本当なら

声をあげて高らかに勝利宣言とともに

みなの打ちひしがれている顔を画鋲を裏向きに貼り付けた足で踏み付けて回りたい

回りたい

うわははは

何と優越感を感じているのだ今俺は

馬鹿馬鹿しいほどの脳内麻薬が今この偉大なる脳の中に放出放出放出

うはははは

うわははは

おはははは



 



さて



 



それではひとしきり

妄想ごっこも楽しんだしかえるとしよう

傘をさしてかえるとしよう



 



え?



 



え! 俺の傘が、傘が無い!

確かのこの朝この傘立て

このみんなが使う傘立ての見失わないようにこの端っこにひょいと

立てかけておいたのに!

だ、誰だオレの

オレのかわいい彼女がオレにプレゼントしてくれた

美しくもはかないオレの傘を盗んでいったのは!

くそうおぉ・・・・・、傘泥棒め・・・・許さん・・・・

傘泥棒、死、す、べ、し!



 



 



 



ああ

ああ

俺の傘が無い

誰だ

誰だ

盗りやがって

オマエか

オマエか

オマエか

オマエか

俺の大事な傘が無い



 



雨が降るとわかっていたから

俺は恥ずかし気もなく

傘をブラサゲて歩いてきたんだ

この美しい空の中を

それをこのやろう

盗りやがって



 



殺せ 殺せ

傘泥棒は殺せ

8つ裂きにして

ミンチにして

ぐちゃぐちゃにして

殺せ



 



死すべし

死すべし

傘泥棒は

死すべし

前世

今世

来世で死ね

傘泥棒

死すべし



 



おお

うう

俺の傘が無い

どこだ

どこだ

どこに行ったんだ

これか

こいつか

それとも

こいつか

俺の大事な傘が消えた



 



空は曇るとわかっていたから

俺は臆病にも

傘をブラサゲて歩いてきたんだ

この美しい空の中を

それをこのやろう

盗りやがって



 



殺せ 殺せ

傘泥棒は殺せ

縛り首

さらし首

スキャナーズにして

殺せ



 



死すべし

死すべし

傘泥棒は

死すべし

1000年前にさかのぼって

死ね

傘泥棒

死すべし



 



傘が傘であるように

俺はお前を愛してる

だからこそ

俺の傘を盗るんじゃねぇ

俺の愛を裏切るんじゃねぇ



 



殺せ 殺せ

傘泥棒は殺せ

8つ裂きにして

ミンチにして

ぐちゃぐちゃにして

殺せ



 



殺せ 殺せ

傘泥棒は殺せ

縛り首

さらし首

スキャナーズにして

殺せ



 



生かすな

生かすな

傘泥棒を生かすな

逃さない

逃さない

傘泥棒は逃さない

永遠につきまとう

サツガイの恐怖

お前が死ぬとき

それは傘泥棒の報いだ



 



死すべし

死すべし

傘泥棒死すべし

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