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Speedstarはなぜ崩壊したのか

こんにちは。フリーランスWebライターのほたてめんです。

私は約1年半前にマインクラフトをプレイしていたところ、知人からNFT Worldsというゲームの記事を書かないかと声をかけられてから、web3の記事を執筆しています。

私がNFT Worldsの記事の執筆を始めた頃、大流行していたBCGがありました。そう、この業界で知らない者はいない「Speedstar」、通称スピスタです。

web3やトケノミクスの勉強を進めるうち、なぜこれほどまでによくできたBCGが崩壊していったのか謎に思ったので、noteの第一回目はスピスタが崩壊した理由について考察していきたいと思います。

今後もBCGについて考察していく予定なので、ぜひXなどをフォローしていただけますと幸いです。


Speedstarとは?

まずはSpeedstarについて軽くおさらいしていきましょう。

Speedstarは、競馬シミュレーションのBCGです。従来のように競馬で勝てたらトークンをもらえるのではなく、馬を育てたり、回復させたりすることでトークンがもらえます。

つまり、働いて仮想通貨をもらうわけです。コンセプトは「Work and play to earn(働いて遊んで稼ぐ)」。

また、トークンが3種類ある点も大きな特徴です。IDOやプレセールはなく、すべてゲーム内でのみ獲得できるとのことでした。

時系列

大まかにどのようなことが起こったのかをまとめてみました。ただ馬のNFTは現在tofuから削除されているため、価格の動向は推測になります。

・1月:ウェブサイトとWP公開
・2月:Genesis Saleで10,000頭の馬NFTが完売
・3月:NFTの価格が上昇 commonのNFTでもフロアが$300前後に
・4月5日:ブリーディングシステムがローンチ 
  $JOC/$ONEがスシスワップに追加
  直後にbotが大量買いして価格が一気に上昇 
  たった5分程度で数千万円稼いだ人も
・4月7日:馬が投げ売りされてフロアが下がり始める

盛り上がった理由は何だったのか

ゲームローンチ前にもかかわらず、ここまでSpeedstarが盛り上がった理由は何だったのでしょうか。

私はまず、当時の風潮とトークン設計にあると考えています。

DeFi Kingdomや馬系BCGの影響

当時のweb3界隈には、ヒットしたBCGが出ると、同じチェーンの他のBCGも盛り上がるという流れがあったといいます。

Speedstarのブリーディングシステムがローンチされたのは2022年3月。

同じ月に、同じHarmonyチェーンでローンチされた、DeFi Kingdomsが盛り上がっていたことが理由のひとつだと考えます。

また、Pegaxyなど馬系のBCGが盛り上がっていたことも背景にあるでしょう。

斬新なトークン設計だったから

Speedstarには、トークンが3種類あります。

・$JOC→職業の人たちがもらうトークン
・$SPEED→施設の運用でもらうトークン
・$STAR→レースに勝利でもらえるトークン(ガバナンストークン)

後にローンチしたSTEPNもデュアルトークンシステムで話題となり、その後続々と同様のBCG/M2Eプロジェクトが幻影を追いかけ始めましたが、Speedstarはさらに1種類多い3種類のシステムを導入しています。

BCGを持続可能とするためには、トークンを消費するユーザーの存在が欠かせません。ただ金儲けのためにBCGをするユーザーが入ってくるだけでは、いずれ必ず崩壊します。

しかしSpeedstarは、トークンの消費者の存在がうまく組み込まれていました。

例えば、多くの人に注目されていたのは「ギャンブラー」の存在です。ギャンブラーは、Speedstarのメタバース上で競馬をする人のことで、馬券を買って賭ける人のことです。馬券を買うという目的でトークンを消費させることが、脱ポンジを測る仕組みとして注目されていました。

崩壊した理由を考察

ではここまでうまく設計されていたにもかかわらず崩壊してしまった理由は何だったのでしょうか。4つの理由があると考えます。

  • ブリードが始まって馬が供給過多になった

  • 運営の収入源となる広告とギャンブラーが実装前に崩壊した

  • 肝心のチェーンがハッキングに遭った

  • 単純にタイミングが悪かった

1:安い&早いブリードのせいで馬NFTが供給過多になった

BCGあるあるですが、ブリードのようなミントが始まるとNFTの供給が需要を上回り、ユーザーが投げ売りを始めます。Speedstarも例に漏れず、価格が暴落して崩壊につながってしまいました。

私は、ブリードを実装するなら、供給の安定を測るためブリーディングを1時間に1回〜24時間に1回などに制限したらよかったのではないかと考えます。

例えば、今でも少しずつ稼げているM2Eの金字塔、STEPNと比較してみましょう。

※4/17 $SPEED=$0.02 $STAR=$1.59
※ブリードのコスト(9000$SPEED + 1$STAR)+ ブリーダーへの賃金(500 $SPEED)+ポーション代

※4/29 $GST=7.83 $GMT=$3.75
※ミントコスト(200GST) + レベル上げ(20GST+10GMT)1566+156.4+37.5

この他に、STEPNはミントするためにリペアやレベル上げが必要など、簡単にはミントできないようになっています。

一方のSpeedstarは、オスなら1時間に1回ポーションを作ることができるため、短いスパンでブリード可能です。

この点が、供給過多になってしまった理由の一つなのかなと思っています。

2運営の収入源となる広告とギャンブラーが実装前だった

このようなミントのしやすいさから、投資家もゲーマーもこぞってミントし続けた結果、運営の収入源となる予定だった「ギャンブラー」が実装前する前に価格崩壊を起こしてしまいました。

もし、「ギャンブラー」が実装されていたなら、もう少し緩やかに崩壊したのではないかと予想します。

ただし、そもそも消費者となる予定の一般層がSpeedstarについて認知していなかったことから、実装していても崩壊していた可能性はあったかもしれませんね。

3肝心のチェーンがハッキングに遭った

Harmonyチェーンがハッキングに遭ったことも、理由のひとつでしょう。

Harmonyチェーンは、2022年6月23日、ハッキング被害に遭いました。Harmony上に構築された「Horizon Bridge」から流出したということ以外、詳しい原因は分かっていません。流出した額は、1億ドル(当時約135億円)以上と言われています。

Harmonyのチームは、即座にブリッジ機能を停止したり、犯人の特定に努めたりしましたが、いまだ解決していません。そこから価格が戻ることはありませんでした……。

4単純にタイミングが悪かった

Speedstarのブリード機能がローンチされたあたりで、業界に衝撃を与えた事件がいくつも起こり、市場から撤退した人が多く出たことも要因のひとつでしょう。

一説では、2022年の仮想通貨のハッキング被害額は約30億ドル(約3990億円)相当にも上るそうです。2022年はハッキング被害が史上最悪の年とも言われています。また、大手仮想通貨取引所FTXが破綻したのもこの年でした。

2022年に起こった主要な事件は以下のとおりです。

・3月:Roninハッキング
・5月:テラUSDとLUNA暴落
・6月:HarmonyのHorizon Bridgeハッキング
・7月:3AC破産申請
・11月:FTX破綻

RoninとHarmonyのハッキングは、北朝鮮のハッカー集団が関与している可能性が高いとのことです。

参考:2022年、ハッキング被害額が過去最悪──2023年に向けた対策とは

まとめ

そもそも、BCGは、まずゲームを作ってからローンチすべきなのではないでしょうか。

NFTのセールには資金調達の意味もあるとは思いますが、NFTを売って、「では2年後のゲームローンチをお楽しみに!」と言われても、先が長すぎやしませんかね?

ゲームが完成してからローンチし、成功した事例があったらぜひ教えてください!

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