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手書きフォントの映画タイトルみたいな夜の話

3月6日 土曜日の午後13時
下北沢の東口で友達と待ち合わせた。

14時公演のお笑いライブに行くために。

『『お花見しない?』』と、
理由をつけて公演の1時間前に集合した。
お花見を口実にただ一杯飲みたいから

一杯だけ飲むはずが、スルスルと時間が溶けて
気づいたら公演の10分前だった。

飲みかけのビールを一気に飲み干して
2人で駆け足で劇場まで向かった。
なんかこんなこと前にもあったな。

空きっ腹にビールを流し込んだので、
完全に酔っ払っている状態で席に着いた。

13時59分。

二人して息を整えながら顔を見合わせて
「いやいやいや」
『さすがにオンタイムでは始まらないでしょ』「そりゃそう、ダウだよ」
『ほんとにちょっとだけ休ませてほしい』

その数十秒後、開演した。オンタイム。

オンタイムじゃねえか。


公演時間100分って聞いてたけど、
それは絶対嘘だよ。

体感なんて30分だった。
楽しいだけが凝縮された時間だった。

楽しい余韻を残されたまま
昼過ぎの下北沢に放り出された我々、
当てもなくフラフラと歩いていたら
ビールフェスのようなイベントを見つけて
吸い寄せられるように立ち寄った。

地元っぽい人たち、家族連れ、観光客、
たまたま出会したであろう人たち、
ダウのライブ終わりっぽい人たち、

「みんなどこから来たんだろうね」
『きっとこれが楽しいってわかる人たちだ』

って、自分達もその中の一人なのに
まるで関係ないような顔をしながら
休日の昼間から呑気にビールを飲んでいた。

友達が『もっと楽しい場所がある』と、
ほどよく汚くて、小さくて、狭くて、
静かな小料理屋さんに連れて行ってくれた。

美味しいご飯を食べながら、
お酒片手に何時間もずっと喋っていた。

話した内容なんて何も思い出せないくらい。
中身のないことばかり、何時間も

気づいたら22時だった。

『『あ、お花見してないじゃん』』

歩いて数分のところに、
桜が咲いている緑道があるらしい。
ライブの終わりに蓮見が言っていた。

歩いて見に行ってみることにした。

そもそも、今日はそれを理由に
ライブより1時間も前に待ち合わせたのだから

近くのコンビニでロング缶を買って
ちょっとドキドキしながら夜桜を見に行った。

ふつーに桜咲いてた。めっちゃ綺麗。

10秒くらい眺めて写真を2枚撮った。

桜の写真を撮る人達を横目に
桜に背を向けながらベンチに腰掛けて、
座るのに飽きるまで喋っていた。

そろそろ時計を見て帰りの電車を調べないと
まずい時間なのは頭では分かっていた。
とっくに飲み干したお酒の缶に、
重力を感じ始めるくらいには名残惜しかった。

袖で画面を隠しながら、
おそるおそるスマホを一緒に覗いたら

23時50分

『ちょっと楽しすぎちゃったねぇ』

あの瞬間”ピーク”だった。

“帰る気”なんてない大人たちが、
お花見を口実に”帰らなかったの”

空になったお酒の缶を持って
駅とは反対方向へ歩きながら、
帰り道はずっと今泉力哉の悪口言い合ってた。


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