欠けたネイルはきみのためにあったのだと、蝉の声が反響した
洗濯洗剤と、アイスクリームと、お惣菜を持って、灼熱のアスファルトを歩いた。
駅から徒歩20分。私にとっては遠いし長い道のりだけど、彼にとってはそうじゃないらしい。暑さと陽射しで買い物袋が一層重く感じた。
家賃4万7千円の白いマンション、その202号室に、それはある。
いやに足音の響く階段を上って、狭い廊下(と呼べるのかもわからないくらい、完全に外である)を数歩進む。ドアは、鍵を開けてもらっていたのですんなり開いた。冷房で冷えた空気が身体中に伝う汗を蒸発させ、たちまち体温