Tegami from Racoon dog #1
拝啓 新緑の候、ZIONの皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
私は今、この手紙を新神戸から東京に向かう新幹線の中で書いています。Another Mountainphonicは、最終公演の真っ只中ですね。きっと素敵な夜が届けられていることでしょう。プラネタリウムを出たらまだ空が明るくて、あれは白昼夢だったかもしれないと夢見心地のまま、帰路に着いています。
今回のツアーは、どの会場も大変素晴らしく、この目で、耳で、五感で楽しむ機会に恵まれたことは、この上なく幸せな一週間でした。ライブハウスの熱狂も愛しく思いますが、ZIONのアナザーな一面を目の当たりにして、ますます目を離せないなと思っています。
さて、それぞれの会場で心に浮かんだ情景を、少しお話させてください。
モエレ沼公園のガラスのピラミッドでは、夕暮れの薄明かりの中で始まって、夜の帳が降りるのに合わせて段々と別世界に連れて行かれるような公演でした。
ガラス張りの空間の、独特な音の反響もさることながら、床に並べられたろうそくの火の揺らめきがガラスの天井に映って、満天の星空が瞬いているようで耳にも目にも美しい一夜でした。演奏を聴きながら、カムイミンタラが思い浮かんで、楽しく音で遊んでいるところを山間から眺めているような気持ちで眺めていました。
品川キリスト教会は、厳かな会場に、ピンと張り詰めた気持ちで開演時間を待っていましたが、後ろからギターをひとかきした音が聞こえて、いつもの楽しい時間が始まるぞ、と少し緊張がほぐれたのを覚えています。広い空間にバランスよく響く曲たちに、もっと聴いていたい、ずっと聴いていたい、と祈ってしまうほど、素晴らしい夜でした。
バンドー神戸青少年科学館では、一曲目のThunder Mountainからぐっと引き込まれて、頭上のスクリーンに映し出された360度の雪山が札幌公演でイメージした山を逆の視点で眺めているようで、全く雰囲気の違う会場がAnother Mountainphonicツアーによってつながったように感じました。虎だって熊だって出る、のびのびとした自然の力強さを思わせるアレンジは、このツアーで一番心に残っています。
満天の星空が映る中で始まったHurricaneは然別湖で見た夜空を思い出しましたし、Mother Shipでは宇宙に漂ったと思ったら、まるでイオのような岩肌と火山にたどり着いて、木星の近くまで飛んできたんだなと思わせる光景に、なんだかすごいものを見てしまった、と、うまく言葉にできない、不思議な気持ちでいます。
Eveでは夜空がだんだんと白んできて、夜明けを迎えたときには、気づけば一筋の涙が頬を伝っていました。
それぞれの曲を聴いてイメージした光景が、実際に映像として眼の前に出されて、視覚で捉えて体験することで、こんなにも深い感動を呼び起こすだなんて。
アンコールのPurple Summerで心に涼やかな風が吹いて、夕暮れ時の地球に戻ってきたような、宇宙旅行をして戻って来たような80分でした。
今回のツアーでのアレンジで、特に好きだったポイントも書かせてください。
Mother ShipをMountainphonicで聴いたときには、宇宙船でぐんぐんと星の中を突き進んでいくような高揚した爽快感を覚えましたが、今回は宇宙服に身を包んで上も下も右も左もなく、無数の星の中に漂っているような浮遊感と開放的な心地よさで、母なる宇宙に包まれている気持ちになりました。
Takurankeも、ジリジリと身を焦がすようなギターと気だるげな雰囲気も大好きですが、Anotherでは気の良い兄さんに励まされているような心強さを感じつつ、おしゃれな垢抜けた雰囲気が印象的でした。
Shieldではギターの音がダイヤモンドダストみたいにきらきらしていて、恋心とはそんなにも美しいものなんだなと眩しく感じ、Jigsawでは元の艶を残しつつ、軽妙洒脱な大人の雰囲気に魅せられました。
書き出せば際限がないので、この1週間のハイライトとしてここまでしたためておきます。すべてが楽しく、心地よく、大切な思い出がまたひとつ増えました。
ZION callingもホワイトハウスも、チケットのご縁があればお伺いしたいですし、ご縁がなくても、風の便りを楽しみにしています。
素晴らしい夜をありがとうございました。どうか皆様お元気で。
かしこ
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【余談】
いつもライブレポはソノダマンさんやざいおんプラスさんをはじめとするハイパーウルトラ素晴らしいファンの方々が書いてくださるので、私は届けないファンレターとして、返歌として、感想を綴ってみることにしました。
それはそれとしてラジオのお葉書もまた書きたい。
【付録】
生きる。
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