街コンの話①

 街コン。それは出会いを求める男女が集いマッチングしたりしなかったりするイベントのことを指すが、私は人生で2度街コンを経験したことがある。今年の1月頃、私は来月からの復職を控え「初対面の人と話す練習をしておいた方がいいかもしれない」と思い、街コン30回経験者の友人に影響され、大阪某所にて行われた街コンに参加した。とりあえず場数を踏むため、アニメや漫画、ゲームが好き、あるいは理解がある人が集う街コン2つに応募した。
 当日は猛烈に緊張し、なかなかイベント会場に辿り着けず同じ建物の中をぐるぐるするなどしてなんとか目的地に辿り着いたが、その時点でもうすでに疲労困憊であった。もう帰りたい。休職中にすることじゃないだろと思ったそこのあなた、私は何も言い返すことができない。しかしながら一旦参加した戦はきちんと挑んでから帰還したいものである。私はスタッフに案内され、個別指導の塾のようなパネルで仕切られた2人がけの席に座り、自己PRシートのようなものを書かされた。その時すでに私は31歳を迎えたばかりであり、こんな私を選んでくれる人など現れるのだろうかと少しばかり不安になった。でも収穫はなくても良い。最たる目的はコミュニケーションの練習なのだから、と気持ちを前向きに整え、あわよくばHUNTER×HUNTERの話ができる男性と出会えたらいいなと思っているうちに街コンはスタートした。街コンは回転寿司形式(友人がそう呼んでいる)で、女性は座ったままで男性がスタッフの合図とともに一つずつ席をずれていき全員と会話して誰が好印象であったか選び、中間発表の後再度回転寿司が始まり最後に1番気になった人の番号を書いてスタッフに手渡すというものであった。私は候補を3人までしぼり、最終的に2番目に来た年下のエヴァとヴィジュアル系が好きな青年と話が合いそうだと思ったので2の番号を書いた用紙をスタッフに手渡した。これが後にまさかの展開を生むことになろうとはその時の私は思いもしなかった。
 最終発表では私はなんとマッチングに成功していることがわかった。初めての街コンでこれは優秀な結果ではないだろうか。それぞれの席に座っていたほとんどの人が先に返され(マッチングしなかった人たちである)、女性はおそらく私1人が席に残った。2番目に私のところに来た彼が私のところにやってくると思いながら顔を上げると、まさかの事態である。思っていた人とは違う人がやってきた。でも2番のカードを持っている。一応最後の候補3人の内の1人ではあったもののなぜ。私は困惑した。しかしその後でその理由がわかった。それぞれの番号はランダムに割り振られており、来た順とは一切関係ないことに私は全く気づかないまま2番と提出用紙に書いてしまったので、本来2の番号を割り振られたはずの人とマッチングしてしまったのである。今世紀最大のアホをかましてしまい、私は半ばパニックに陥った。
 相手の男性は私の様子がおかしいと察知したのか「え?ほんとに大丈夫です?」みたいなことを聞いてきたが正直ほとんどパニクっていたのであんまり覚えていない。その後男性から「お昼はもう食べましたか?」と聞かれ、「もう食べました」と答えるとそこで会話が終了し、LINEだけ交換して解散になった。
 しかし、しかしである。いや待て、よく考えろ、思ってた人とは違ったが一応最終候補にはランクインしていた人だ。ここでお茶も何もせず帰るのはさすがに勿体無いだろう。そう思った私は婚活サイトの勧誘をスタッフから受けている彼を会場の外で数分待ち、声をかけ、お茶だけでもしませんかと誘った。幸い相手は了承してくれたので歩いて数分のところにある適当なカフェでお茶をすることになった。男性の方はお好み焼きが食べたかったらしいが初対面でお好み焼きはねーだろと思いタリーズのようなカフェに入り、相手は昼食をとっていなかったので卵サンドを食べ、私はホットコーヒーを飲んだ。
 相手は2つ歳下のシステムエンジニアで、メガネをかけた小柄で真面目そうな男性である。とりあえず街コンで出会った男なのでここからは彼をマチオと呼ぶことにする。マチオは脱出ゲームやクイズノックが好きらしく、色々と私に説明してくれたが全く触れたことがない分野だったので新鮮だった。幸いコミュニケーション面にも問題はなく、不快に思うところは一つもないまま90分ほど話し込んでしまった。初対面で会話が90分続くのは上々ではないだろうか。話し方も正直者という感じがあり個人的には比較的好印象であった。その後お互い帰路につくことになったが、私が某商業施設まで行ってから帰りたいというとマップを開いて「道がわかるようになったら言ってください」と言いながら案内してくれた。目的地まで連れて行くのではなく道がわかるようになったら解散という無駄のない案内、ここでもマチオに対するポイントはやや上がった。その後、マチオと別れた私は街コン猛者の友人にその日の報告をしたが、マチオは意外にもマメに返信をくれた。ここでも好印象であった。友人と食べたあったかいお蕎麦が緊張した胃袋を温めてくれた。非常に疲れた、しかもまさかの展開があった1日ではあったが、収穫はあったのでヨシとすることにした。マチオとのその後や2回目の街コンについては次回の記事に記すこととする。ちなみにマチオはHUNTER×HUNTERを読んだことがなかった。そのうち布教してやろうと思った。

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