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しかし食事は難航した

 今日、昼食にモスバーガーを食べた。事前にオンラインで注文しておいて持ち帰る予定だったのだけど、店舗に着いた時に気が変わってその場で食べていくことにした。レジに居たバイトの高校生っぽい女の子にオンラインの注文番号を見せ、商品を袋詰めせずにトレーに載せて欲しいと頼んだ。その子はすぐに了承してくれたのだが、後から上司っぽい中年女性が現れ「本当は駄目なんですけど処理しちゃいますね」と言った。多分、色々と仕事を教えている途中なのだというのが分かった。この程度のイレギュラーな要求には応じても良いが、一応は新人の前で示しをつけておく必要を感じているらしかった。「ありがとうございます」と僕は会釈した。トレーを受け取ってから一人用のカウンター席に着くと、テーブル下の荷物を置くスペースに忘れ物があった。ビニール袋にお土産用のお菓子が二箱入っていた。
 僕は注文したライスバーガーのモスチキンセットを食べ始めた。どうもクリスマス前後の期間にはポテトの代わりにチキンをセットに出来るようで、この誘惑には抗えなかった。しかし食事は難航した。いざそこにモスチキンと米が同時に存在すると一緒に食べ進めたくなり、ライスバーガー単品での米と焼肉のバランスを崩す必要があるからだ。サイドメニューがポテトだったらそうはならない。この点だけにフォーカスし過ぎたのだろう、僕はかなり序盤の一口でレタスを不可抗力で引き抜いて食べてしまった。負けたと思った。何と戦っていたのかも分からないけれど、ひとまずジンジャーエールを飲みながら、残っているライスバーガーとモスチキンの量を見比べた。そして、配分を綿密に考えるだけの気概がもう残っていないことを悟った。
 残りを適当に食べてしまうと携帯でYouTubeを見始め、まだ半分以上残っているジンジャーエールをちびちびと飲み進めた。どことなく気が漫ろなままぼんやりと窓の外を眺めたり、Spotifyでポッドキャストを聴いたり、ドル円のレートを調べてみたり、noteで柳原可奈子の子育てに関する記事を読んだりした。それから横に脱いで置いたコートのことを想った。7、8年くらい前に買ったものでまだまだ着れるコンディションなのだけれど、ボタンだけが変色して燻んだ色になっていた。前を閉じるボタンだけではなく袖口の飾りボタンまで全て見事に変色しており、これを付け替えて着続けるべきか、いっそのこと新しいコートを買うべきか考えた。席を立つまでに結論は出なかった。

 買ったお土産をどこかに置き忘れるほど悲しいことはない。


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