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風に揺れる



10月に入ると、早朝から鳴り響く蝉の声も、照りつける日差しも、突然降り注ぐ夕立も、茹だるような熱帯夜も、夏の代名詞とも言えるようなそれらは無くなり、瞬く間に秋に模様替えしていった。
1か月前まではまだまだ暑いと言いながら半袖で過し、秋の訪れを今か今かと待ち望んでいたのに、時の流れというものはとてつもない速さで押し寄せてくるものね。



金木犀の匂いが好きだ。風に乗って運ばれてくる金木犀の優しい匂いが好きだ。微かに鼻腔を刺激する甘くて優しい匂いは、わたしの心を穏やかにさせる。
金木犀の匂いが私の鼻に届いた時、初めて秋を意識した。気づけば、辺りの木々たちは緑色の葉を赤色、黄色、オレンジ色に染め上げていた。


一人暮らしを始めて、1年と半年が過ぎた。少しだけ寂しくなる。帰りたくなる。人肌が恋しくなる季節だからかもしれない。 1年前のこの位の時期にも同じことを感じていたような気がする。1年前と違うことと言えば、最近、就活関連のプリントを大学でよく配られるようになって将来に対する不安が付き纏うようになったことだ。働きたくないっていう気持ちと、生活のために働かなければという2つの気持ち。正反対の気持ち。この不安とあとどのくらい向き合えばいいんだろうと考えるとまた新たに湧き出てくる不安。

生きるのがむずかしい。

きっとみんな平等に持ってるこの気持ち、生きるのが少しだけ周りより下手なのかもしれない。


“いつでもLINEしてね”

母がよく私にくれる言葉。この時期になると無性に母の手料理が食べたくなる。


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