「向き癖 作らない工夫」-医療ルネサンス-
こんにちは。
0歳からの頭のかたちクリニック大阪院の小児科医の松下です。
前回に引き続き、以前読売新聞の「医療ルネサンス」にて連載された赤ちゃんの頭の形についての記事をご紹介します。
今回は第3回の記事内容をご紹介し、私の感想もお話いたします。
第3回「向き癖 作らない工夫」(2023年5月10日掲載)
昨今は赤ちゃんの頭の形について関心が多く寄せられており、2023年春にはさいたま市の「母子健康手帳別冊」に新たに「赤ちゃんの頭の形」というページが追加されました。この記事では、その中で寝ている赤ちゃんの向き癖について注意喚起されています。
赤ちゃんがいつも同じ同じ向きに頭を傾けて眠っていると、頭蓋骨の骨が柔らかいために片側の頭の骨の変形につながり、さらに向き癖が治りにくくなるということがあります。
本誌では日常生活でできることとして、
・新生児期から授乳のたびに赤ちゃんの頭の向きを意図的に替えてあげる
・3ヶ月を過ぎたらたまには赤ちゃんを腹ばいにしてあげる。
などが提案されています。 ここで注意が必要なのは
赤ちゃんをうつぶせ寝ではなく、腹ばいにさせることです。
これまで赤ちゃんをうつ伏せに寝かせることは、乳児突然死症候群(SIDS)との関連性が指摘されており、日本でも1998年以降仰向け寝で育てることが推奨されてきました。仰向け寝が一般化したことにより、たしかにSIDSの発症率は40%ほど減少しましたが、その一方で後頭部の骨の変形事例は6倍増えたという報告もあるのです。そこでうつぶせ寝ではなく、腹ばいの時間を作ってあげることで、後頭部の変形を防ぐという考えです。
向き癖の改善は難しい―できる範囲での対策を
私自身も小児科医として頭のかたちが変形した赤ちゃんを数多く診てきましたので、自身の子育てのときには、なるべく縦に抱っこして赤ちゃんの首や背筋を鍛え、首の座りを早くするなどさまざまな工夫を行ってきました。幸い自身の子どもたちはもともと向き癖がなかったので、特に頭の変形はありませんでしたが、自身のした工夫が予防につながっていたかどうかはよくわかりません。
実際の診療現場でも赤ちゃんを寝かせる向きやときにときに腹ばいにすること、縦抱っこの時間を増やすことなどを指導しますが、これらの指導を行っても向き癖がついてしまう赤ちゃんやそれが改善しない赤ちゃんは多くいました。確かに向き癖を付けないようさまざまな対策を講じることは大切なのですが、向き癖がついてしまったからといって、親御さんの努力不足とは限りません。なかには対策をしていても生じてしまう赤ちゃんもいるということを知り、親御さんが自分を責めないようにすることも大切です。「向き癖対策はやらないよりはやったほうがよい」という程度にとどめておくとよいでしょう。
お気軽にご相談ください
記事内でも紹介されている通り、赤ちゃんの頭のかたちについてはインターネットでも情報が欠如しており、調べてみても正しい情報にたどり着けないことが少なくありません。さいたま市のように公的な機関が情報発信を行っているケースもありますが、まだまだ周知が足りない分野だと私は思っています。当院では頭の変形やその原因となりうる向き癖予防の工夫などについても、ご相談に応じています。
気になることがあれば、お気軽に当院にご相談ください。
医師 松下 理恵
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