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沐浴

真昼の湯舟に揺られるような
真昼の湯舟に溺れるような

遠く遠くに追いやられなければ
昔話にもなりやしないよう

振り返ってみれば幾分か時間が過ぎ
例に漏れずその身も流れに従い
抜け落ちた髪はまるで死んだ細胞
未練のように身体に纏わる
未練のように身体に纏わる

いつかいつかと唱えながら
いつかはついに訪れず現在(イマ)に至る
伸びた髪を切れと促すあの人この人
未だ未練がましいのは他の誰でもない
似たような世迷言を繰り返すのが
例えどれほど愚かだとしても
僅かながらの機微を逃さず
綺麗事だって信じていたいのです



さもなければ開け放していた窓を



真昼の湯舟に揺られるように
真昼の湯舟に溺れるように

ある日の排水溝に留まるモノ
流れを堰き止めて舌打ちを誘う

振り返ってみても答えがないこと
相変わらず御身は悩むばかり
抜け落ちる髪は成る程死んだ細胞
未練のように身体に纏わる
未練のように身体に纏わる

未練のように身体に纏わり
何故いつから疎ましくなってしまうのか



空気の通りを見逃さないで
閉め切ってばかりでは湿気っぽくていけない
閉め切っていたのがいけないわ
それでいいの いいでしょう 

 もう

空気の通りを侮らないで
開け放して
あけはなして もう
空気の流れを堰き止めないで
明け渡して
あけわたしてよ

も う




さもなければ開け放していた 窓 を
さもなければ開け放していた 窓 は
さもなければ開け放していた 窓 に
さもなければ開け放していた 窓 が



真昼 の 湯舟 に 揺られる よう だ
真昼 の 湯舟 に 溺れる よう だ




いつかいつかと唱えながら
いつかはついに訪れず現在(イマ)に至る
伸びた髪を切れと促すあの人この人
未だ未練がましいのは他の誰でもない
似たような世迷言を繰り返すのが
例えどれほど愚かだとしても
僅かながらの機微を逃さず
綺麗事だって信じていたいのです

いつかいつかと唱えながら
いつかはついに訪れず現在(イマ)に至ったとして
伸びた髪を切れと促されたところで
その未練こそもはや他の誰でもない
似たような世迷言を繰り返すのを
例えどれほど愚かだとされても
僅かながらの機微を見殺さず
綺麗事でも守りたかったのです
守って いたかったのです


お願い
空気の通りを侮らないで
開け放して
あけはなして もう
空気の流れを堰き止めないで
明け渡して
あけわたしてよ
ねえ


信じていたかったのです
守っていたかったのです
限界までそうして纏わられてきたのです
もう限界です限界はすぐ其処で


真昼の湯舟に揺られるようです
真昼の湯舟に溺れるようです
限界など無視して浄(キヨ)めてきたはずなのです

いつまでこうして揺られているのです
いつまでこうして溺れてゆくのです




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(2019.06.20)

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