2年後の君へ手紙を書いた、5年前の君へ

拝啓


手紙ありがとう。
返事を待たせてしまってごめんなさい。連絡が遅いとはよく叱られるので自覚していたつもりではあったのですが、永らく君からの手紙を受け取れずにいたことはほんとうに申し訳ないです。
18歳になったその日に君が綴った言葉はあまりに美しく、ちょっと途方に暮れてしまいました。我ながらすごくいい文章を書くね。びっくりしちゃった。

君が不安に思っていた通り、2年どころか5年経ったってわたしは変わらずにいるのだなと実感しました。

優柔不断は変わらないし、言い訳をしてしまうのも、自分にすら嘘を吐いてしまうのも、まだまだ、わたしの内からなくなってくれはしない欠点です。
君に言われるまですこし忘れていました。いまのわたしよりよっぽどわたしのことをわかっているみたい。

せっかくなので、君がこれから出会う5年間のヒントと、いまのわたしの近況報告でも記そうとおもいます。

夢と現実の狭間では、まだまだもがき続ける。
苦しいのは終わらないし、どうしたって手に入らないものや、こぼれ落ちていくものもある。
それでも君が言うように巡り合わせがあって、
君は、一度すれ違っているひとと再会をするし
追い続けているひとと目が合ったりもする。
たくさん悔しい思いも、やるせない思いも、ゆるせない思いも知って、抱えて、どうにか生きていく。

無責任な「大丈夫」の力を知る。


大丈夫。
だいじょうぶ。


最近のわたしはというと、やっと今の君のように絵を描くことが楽しくなってきたし、歌をうたうのも楽しくなってきたし、悔しいと思えるようにもなってきた。大切な友だちがまた増えたし、わたしをゆるしてくれるひとがいる。
先日、この1年勤めていた会社を辞めたし、生まれてから22年間暮らしていた実家もなくなったし、先を見ようとすると笑いがこぼれてきちゃうくらいまあまあやべー状況ですが

「あまりに長いスパンでものごとを考えると苦しくなってしまう時がある。とりあえず今は目の前のことをひとつずつ片付けていくといい」

とは、君が大好きな先生に教えてもらったこと。
今の君にとっては、ついこのあいだ貰った言葉だろうけれど、いまのわたしにとっても、大切に残り続けています。


いまのわたしも、君と同じようにこれからを楽しみに思えています。
いろいろなものから、自分自身を解き放ってあげたいし、もっとあいしてあげたい。いま生きていることを尊びたい。隣にいてくれるひとのことも。


きっと大変なんだろうけれど。
まだまだ苦しみ続けるのだろうけれど。

でも苦しみも痛みもこうやって残していけば、また次のどこかのわたしが拾ってくれるんだろう。


忘れたくない、忘れられたくないって君は言った。


忘れるのもまあ、そんなにわるくはないよ。
忘れたくないけどさ。
でも思い出したときの鮮やかさは、"感情が蘇る"という体験は、忘れないと味わえないみたいだ。

過去をめいっぱい抱きしめる。
泣きたくなるくらい愛おしい遠い日々のこと。


いまのわたしも
いつかの君にとってそうでありますように。


敬具

2021.03.17 あとり依和
(浮遊信号pixivFANBOXより再掲)

■18歳のわたしが書いた手紙は原文ママでFANBOXにて有料記事で公開しています。
https://www.fanbox.cc/@fysgofficial/posts/2027813

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