2021年記憶に残った作品10選

※あとり依和が2021年に出会った作品群のため、2021年発表作品とは限りません。掲載順はランキングでもありません。ご把握をば。

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1. スモールワールズ/一穂ミチ (小説)
12月30日に読み終わったということもあり今一番記憶に残っている。そりゃそう。
「ネオンテトラ」「魔王の帰還」「花うた」「愛の適量」「式日」からなる5編の短編集。
短いスパンで発表されていたからか、最初から単行本化を見据えていたのかはわからないけど、仕掛けまで含めてきれいに5編で1冊だな、とおもった。
ぞくりとするような人間の覚悟も、やりきれないような愛おしさも、遠くの光を見つめるような真っ直ぐさもあって、とても好きでした。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000348753

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2. ハナ、高飛びするってよ/KedamaMi (漫画)
全編Pixiv掲載のエッセイ漫画。レズビアン22歳バーテンダー、ハナが彼女に振られて単身ドイツに渡ってなんやかんや苦しんだりもがいたり考えたりする話。
「ハナはわたしときみの要素を煮詰めたようだね」と言い合える友だちにも読ませてふたりで自爆した。何もかもがそううまくいかねーよな、みたいな気持ちと、それでも自由になりたい、みたいな気持ちがずっとせめぎ合っていて
なんなら少し苦しかった。久々に、読み始めたら終わるまで終われない、をやった。
https://www.pixiv.net/artworks/56232547

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3. ブランチライン/池辺葵 (漫画)
母と自立した四姉妹、それから長女の息子、計6人、それぞれの穏やかで広大で芯のある暮らしを切り取る物語。
池辺葵先生は20代女子がマイホームを買うというあらすじの「プリンセスメゾン」も長らく気になっていてまだ読めてなかったのですが、ブランチラインを読んでいるとより一層、読まねば……と強く感じている。
三女の茉子さんが、受け継いで営む小さな喫茶店で密かな憧れを抱いて待つお客さんとの話を読んだとき、これは絶対に誰かに必要な物語だ、とおもった。
掲載誌FEEL YOUNGでなんとはなしに途中から追っていた作品に、ぐっと惹き込まれて離されなかったあの瞬間を確かに覚えている。何度か読み返して、細くてちいさくて長い息を、一度だけ吐いた。
https://feelweb.jp/episode/3269754496334652344

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4. 不思議/星野源 (MV)
2021年一番好きだったMV。MVってやっぱり最高のロケーションでぽつんと立って歌ってるやつが結局大好き〜〜〜〜!のやつです
羽田空港で撮影されたとのことで、それももしかしたら今だからこそなのかな、と感じたりもした。映像作品ってやっぱりそういう「瞬間の生感」が残せるという圧倒的な力があるなとおもいます。
楽曲自体がそもそもよすぎて、ラブソングに不思議というタイトルを付けるの、なに? 愛じゃん……
リリースほぼ直後にご結婚を発表されたことによってこんないい作品を通して盛大な惚気になってたのもよかったです アーティスト、そうであってくれ
https://youtu.be/ilnLczvLGAY

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5. 高校生家族/仲間りょう (漫画)
週刊少年ジャンプ連載中。タイトル通り家族全員(主人公・光太郎、父、母、妹、ねこ)が桜舞う春、ぴかぴかの1年生として入学し、同じクラスでそれぞれ青春を謳歌していくハートフル学園スポコンラブコメディ(?)(わからない)(一言で表せない)
一番の見所は、家族全員べつの部活動に所属してマジでそれぞれが様々な形でめちゃめちゃに青春を謳歌しているところです。
そしてギャグが高校生家族だからこそ成り立つおもしろさとして活きていて、多様性って唯一性なんだなって改めておもいました。篠原健太先生のウィッチウォッチと並べて挙げる時に何度でも言っちゃうけど、こういう「誰がどこで何をやっていても、それぞれが満ちているならよい」というやわらかなメッセージが含まれる作品が、いま少年ジャンプで連載されていることが単純にうれしいです。そういう世界で少年少女たちに生きていってもらいたいと強く願っているので。もちろん大人も、わたし自身も。
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496485088943

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6. 化け物嬢ソフィのサロン〜ごきげんよう。皮一枚なら治せますわ〜/紺染幸 (小説)
敬愛する物書きさんが薦めてくれたことによって、初めて読んだなろう小説。
皮膚の奇病を持つご令嬢がジャパニーズ・オカンの前世が蘇ったことによって、「他人の皮膚のみ治癒できる力」を使って悩める人々と深く慈しみ合う物語。
どの章も女性的な立場や振る舞い、品性を感じられるお話なので、どちらかというと女性に刺さりやすい作品なのかな、とはおもう。けれど、家族、恋人、友人と慎ましくも凛々しく、強かに生きていく人々のエピソードがどれも本当に切実で、でも文章はあたたかくて、今回並べた作品の中で最も涙を流しました。小説で久々に号泣した。こういう人間になりたいな、って素直におもう。
https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n7890he/

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7. キャロル/トッド・ヘインズ (映画)
2021年あとり依和が衝動で観てよかった映画大賞受賞作品。
1950年代アメリカを舞台に描かれる、これから開く女性とこれまでを開く女性同士のラブロマンス。
男性同士の物語は息を吸うように摂取しているので、やはり意識して受け取った女性同士のものはかなり記憶に残っているな〜という感想。
まあ〜〜とにかく映像がどこを切り取ってもたいへんにうつくしいのでそれだけでも観た甲斐があった。
きらびやかな美しさではなく、作中が冬だからということもあるのか、ストーリーも相まって静かで厳かな、すこしくすんだ色合いの美しさ。
洋画をたくさん観る習慣がまだ付いていないので、情緒における不透明さはたびたび感じるんだけれども、ふとした瞬間に彼女達が二人きりの車を走らせるシーンを思い出す。
https://youtu.be/5y2sv3SSJqs

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8. 蜜蜂と遠雷/石川慶 (映画)
年に最低1本は松坂桃李の映画を見なくてはいけない病に罹っており、2021年はこちらと「孤狼の血 LEVEL2」を観ました。今年は「あの日」を観て、公開が来たる「流浪の月」も楽しみにしています(日記)。
元天才ピアノ少女、ピアノ界の貴公子、再起を図るサラリーマン、突如現れた純朴な奇才男子高校生の4人をメインに描かれるコンクール前後の話。
映像美とか、演技とか、言葉とか音楽とかモチーフとか、ひとつひとつももちろん心に灯っているんだけれど、作品として自分の奥深くに「なにか」が残っているかんじ。
もっと、もっと耳を澄ませて、糸を手繰り寄せて、って言われている。
恩田陸先生の原作は未読なので、質感がどうなるのか気になっている。
https://youtu.be/b9z6NcS5Wwc

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9. ミッフィーのぼうけん/ブルーズー・アニメーション・スタジオ (CGアニメ)
なんかちょっと疲れてた時に櫻井孝宏のやさしいナレーションが聴きたくて観始めたら、ナレーションがある回とない回があって、わたしは気付きました。
ミッフィーのナレーションはミッフィーにしか話しかけていない。
ミッフィーがひとりで過ごしていると(ミッフィーにだけ)流暢に語りかけてくる櫻井孝宏は、ほかのキャラクターが出てきたりミッフィーと触れ合っていたりするとパタッと黙ります。
従来ナレーションというのはト書きの役割(状況説明や視聴者への問いかけなど)を担っているはずなのだが、この櫻井孝宏、ミッフィーのことしか認識していない。
おまえは、だれなんだ………?
色々思考をこねくり回したのち、ミッフィーのイマジナリーフレンド(CV櫻井孝宏)という結論に落ち着きました。
まだ全然視聴途中なので、観終わってから再度検証します。
友だち各位にこの話し過ぎてるのでもうそろそろやめたらって言われるかもしれない。
https://www.nhk.jp/p/ts/V94JPP7LZ2/

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10. かしこい子ども/kanipan (漫画)
不遇な子どもたちの戦いのはなし。作中モノローグ「どこかに行きたいんじゃなくて、ここから逃げたい」は、かつてわたしも似たような言葉を記したので、ああ、とだけおもった。
割と簡素な絵柄でノリとテンポは軽めなんだけど色気があって、重みのある鎖のようなストーリーと独白を描かれるkanipan先生の漫画がわたしはとても好きです。
単行化するのも決まっているみたいなので、Web上で全話無料はもうそろそろ終わるかも。
http://www.comic-medu.com/wk/kashikoikodomo

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●総括
かねはないがじかんはある!みたいな年だったので比較的Webコンテンツに注力気味で、久々にインターネットの波をかきわけたような感覚がちょっとだけある。ありがとう、巨大サービス。ありがとう、サブスク。
きっとこれはずっとそうだが、軽やかに暮らしを描く作品がどうしようもなく好きだなあとおもう。どんな作品も大抵受け取れるが、たしかな養分になっているのはそういうものたちなのかなあとおもう。2022年もできればもうすこしたくさん浴びたい。


2022.01.02 あとり依和
(浮遊信号pixivFANBOXより再掲)

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