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Wild Guess Second Season 第1話

K子はあの一件以来、穏やかな日々を送っていた。としおの尻毛の事などとっくに忘れ、いつもの日常を楽しんでいた。
これが、嵐の前の静けさとも知らずに…。

「私って、な~んて美しいのか・し・ら」
満足そうに鏡を眺めるK子
「うん、本当にK子は美人だよ」
婚約者は後ろからK子を抱き締めた。
「ダーリン、おはようのチューは?今日、帰っちゃったら、またしばらく逢えないんだから忘れないで!淋しいよぉ」
「ごめん、ごめん」
チュッ
「もっと濃厚なのがいい」
「K子は甘えん坊だなぁ」
ブチューーーーー

数時間後K子は空港に居た。婚約者の見送りを終え、一人悲しみに暮れていた。涙を流しながらやっとの思いでバスに乗り込んだ。窓側の席に座り、外の景色をぼんやり眺めていると、発車直前に帽子を深々被った男がK子の隣に滑り込むように座った。
「ふぅ~間に合ったぁ。」
K子は特に気にせず、悲しみの余韻が残っていたので景色を眺め続けていた。
「もしも~し?覚えてないとは言いませんよ?」
男はK子の太ももをさすった。
「ひゃっ、なんなの!?」
「おっと、ここで悲鳴を上げたら、あなたが不利になりますよ?」
「誰!?」
男は帽子を取った。
「僕ですよ。」
としおだった!!
「クックックックッ、あなたが婚約者との別れを惜しむ姿、遠くから拝見してました。遠くからでもあなたの顔はインパクトがある。遠近法を無視した顔のでかさだ。うひゃ」
「……」K子は横目でとしおを睨み付けた。
「恐い恐い!今の顔はまるで妖怪大戦争ですね。」
「通報するよ?」
「通報したいのはこちらですよ。あなたが帰った後、僕はラブホのおばちゃんに発見されて一命を取り留めました。ラブホのオーナーからは犯人は誰だと聞かれ、僕はあなたをかばい、わからないと答えました。でも、あなたの態度次第では通報したって構わないんですよ?」
「あれはテメェが悪いだろうが!捕まるのはテメェだよ!」
「残念ながら、僕が盗撮したデータはあなたが全て削除したので、僕の証拠はありません。」
「私だって証拠はないよ。」
「ありますよ。ラブホの防犯カメラと指紋です。」

K子の顔はいっきに青ざめた。
「あなたの事ずっと探してましたぁ。」としおはK子の太ももをなでながら耳元で囁いた。その吐息はとても熱い。としおの目に容赦はなさそうだ。

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