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前略、美容室より

美容室での会話、苦痛ですよね(小林製薬のCMっぽく)。

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美容室に行った。長年担当してくれていた松本さんが他店に異動になってしまったので、新しい美容師さんに担当してもらうことになっていた。私の毛質や頭の形、そして、私がどう切ってほしいかをよくわかってくれていた松本さんがいなくなってしまい、また新しい美容師と一から関係を築いていかねばならないと思うと、人見知りの私は、少々気が滅入るとともに、緊張していた。

予約時間の10分ほど前に美容室に到着し、案内されて席に座っていると、「どうも~!新しく担当させていただきますリツコですぅ~!!」と、元気のよい小柄な30歳前後の女性美容師さんがやってきて名刺を差し出された。名刺には「RITSUKO」とある。非社交的な私は、こういったグイグイくる感じの人が苦手なので、若干顔をこわばらせつつ(リツコよ、名字はどこへ行ったのだ…)と思いながら、「よろしくお願いします」と言うのがやっとだった。余談だが、ダンスやヨガのインストラクターをしてる女性って、活動名が下の名前(given name)で、しかもローマ字表記しがちなのはなぜだろう。あまりかっこいいとは思えないのだが。

松本さんになら、ざっくりした感じで要望を伝えても納得がいく仕上がりにしてもらえていたが、新しく担当してもらう美容師さんには”希望の髪型のビジュアル的なものを見せてイメージを伝えなければ”と思い、用意していた画像を見せようとスマホを出して開いた画像が、サッカーの神様ペレの顔に自分でヒゲを描き足した画像だった。固まるリツコ。焦る私。

なぜこんなことをしたのか全く記憶が無い

「あっ、すみません!」と言いながら目当ての画像を探すも、その最中、ずっとスマホの画像フォルダにある、放尿しながら飛ぶセミや、誰かの尻にすがりついて泣いている白人男性、「おーい、水島!一緒に日本に帰ろう」の『ビルマの竪琴』の名場面など自分がおもしろいと思って保存している画像群をリツコに見られっぱなしでさらに焦り、画面をフリックする手が汗ばむのがわかる。

やっと目当ての画像を見せ、「こんな風にお願いしたのですが」と伝えると、

こんな風になるわけがないが…

「了解しました~!」とリツコ。カットが始まるやいなや、「旦那さん何してる方ですかぁ~?」「このあとどこか行かれるんですかぁ~?」「お休みの日は何してるんですかぁ~?」と矢継ぎ早に美容師がしがちな質問を繰り出すリツコ。「いえ、別に…」と、ありし日の沢尻エリカよろしく多少のいらつきを隠しきれずに答えると、それからリツコは話さなくなってしまった。

今なら言える。ごめんね、リツコ。もっと話しかけてくれてもよかったんだけど、私、オトコも流行りのお店もファッションも興味ないの。濃い目の芸能スキャンダルといった下世話な話の方が好きなの。カルテに書いといてね♡

ギクシャクした感じのまますべての工程を終え、ギクシャクしたままお見送りされて、お店を後にした。リツコには、「この後どこにも立ち寄らない」と答えたが、その後、喫茶店に入り、サンドイッチを食べた。高くてまずかった。心斎橋、おそろしい街。

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追伸:仕上がりはとっても気に入っています。ありがとうございました、リツコ殿。

理想と現実(※イメージ)

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