FLSAステータスに関する変更点と賃金体系の変化

昨年7月にDOL (Department of Labor)よりFLSAステータス (Exempt/Non-Exemptの区分)に関する変更案が出され、2016年7月から有効になる見込みで進んでいるのを聞かれた事はありますでしょうか。

これに対して、2016年2月1日現在は内容の審議がされている段階で、変更案によって中小企業などが受ける多大なコスト増の影響に関して米国商工会議所がシンポジウムを開いています。そこで、今回は現在のFLSAステータスの定義のおさらいも交えて変更案をまとめましたが、更に、最近私が日系企業の皆様に伺った中で気づいた点もいくつか挙げさせていただきました。


今回の変更案は、現在6種類あるExemptionの中でExecutive, Administrative, Professional, Highly Compensated Employees の4つが影響を受けるものになります。(他にはComputer Employee ExemptionとOutside Sales Exemptionがあります) これらのExemptionの定義はFLSAによって、各カテゴリーごとの最低賃金や職務権限などが定められています。

まずはExecutive, Administrative, Professional の3つのExemption (EAP Exemption)の変更点ですが、対象者の最低賃金を、BLS (Bureau of Labor Statistics)がまとめる全国のフルタイム従業員の給与データの40パーセンタイル(計測値を並べて小さい方から40番目)に設定し、そこから毎年一定の割合あるいはCPI (消費者物価指数)に合わせて昇給させていかなければならないとされています。DOLによると、現在週給$455または年収$26,660の最低賃金が、週給$970または年収$50,440に跳ね上がると見込まれています。

この金額はどの州の最低賃金よりも高く、例えばアメリカでもっとも高い平均年収を誇るNY州の最低賃金よりも$15,000、CA州よりも$10,000も高いとされています。

Highly Compensated Employeeに関しては、BLS がまとめる全国のフルタイム従業員の給与データの90パーセンタイル(計測値を並べて小さい方から90番目)に設定しなければならないとされており、それによって最低年収が現在の$100,000から$122,148になると見込まれています。 

これらの数字は業種/業界、地域、会社規模によって影響される事は無い、全国統一の給与水準になります。また、この最低賃金が与えられていない従業員は、Exemptの職務基準を満たしていたとしても、残業代の対象となります。なお、Time Cardの記入などはNon-Exemptの社員と同じ対応が必要になります。


そして、様々な日系企業の皆様にお伺いさせていただいている中で気付いた点は、FLSAステータスに関して再確認の余地がある所も多いという部分です。

一つはExemptとNon-Exemptの区分に関してですが、恐らく昔誰かが決めたものを踏襲して来た流れもあるのかもしれませんが、FLSAの基準ではなく会社独自の判断で決めてしまっている所も見受けられます。そこにある懸念点としては、本来Non-Exemptであるはずの従業員が誤ってExemptに区分されているなど、FLSAの”Exemption Test”の内容に合致しない場合は”Misclassification”とみなされ、会社側には過去の残業代の支払いに加え罰金が科されます。

次に多いのが、Non-Exemptの従業員がいるにも関わらず、給与が月に一度しか支払われていないケースですが、こちらは本来Semi-MonthlyあるいはBi-Weeklyでなくてはならないので、ペイロールの頻度を変更する必要があります。

他には、タイムカード(シート)を記入していない、または正しい記入がされていないなどのケースがありますが、例えば、実際の勤務時間とは異なる時間を記入している場合、監査が入ってメールの履歴などを見られるとアウトになりますし、正しい休憩時間を取っていない場合(昼食休憩の最低30分)も同様となります。

これらの様なケースは、何か問題が起こった場合の監査の際だけでなく、元従業員が失業保険を申請した際に調べられたりする例も耳にした事があるため、注意を払う必要があります。



FLSAステータスなどの部分は、なかなか見直す機会が無いのが実情かとは存じます。また、会社の状況や構成上難しい点もあるのかもしれません。しかし、今回の変更点が本当に7月から有効になるのかはまだ分かりませんが、重要なのは、その様なレギュレーションの内容を把握する事や社内の状況を確認する事である点を踏まえると、まずは今の時点で確認できる部分を見て行くのも良いのかもしれません。

今回の変更案の話題を機に、社内のFLSAステータスやそれに伴う労務管理や賃金体系などを再確認されてみるのはいかがでしょうか。 (2016年2号)


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