評価を有意義なものにするためのポイント ② (制度と運用)

在米日系企業の皆さまと評価に関してお話しすると、ほとんどの会社では何かしらの評価制度あるいは評価フォームを持っているとお聞きします。ただし、それが日本で使用しているものを少しアレンジしてアメリカで導入しているケースや、以前外部に依頼して作成したものを使っているなどの場合がほとんどで、制度上の課題をある程度認識しつつも、現行のものを使い続けている状況が見受けられます。

今回のトピックでは、そういった状況ではどの様な懸念や改善点があるのかを考察してみました。


前回のNews Letterでも書かせていただいた様な「うまくいっていない」ケースでは、社内に制度やフォームがあるので「とりあえずそれを使っているから大丈夫であろう」という事や、「ウチは人数が少ないから関係ない」という事などで、現行の制度やフォームをそのまま使い続けてしまっているという、制度面の問題が潜んでいる場合も考えられます。

そういった場合にまず言えるのが、「うまくいっていない」状況は今後も続くであろうという事です。会社の状況や、社員のメンバーとそれぞれの能力も年月に応じて変わるため、評価する内容もそれに合わせて変わっていかなければなりません。

しかし、誤解してはならないのは、むやみに細かく精度の高いものにすれば良というものではなく、評価というプロセスに何を求めているのかという事がポイントになります。例えば、社員数の多い会社で「公平性の高い昇給」を主眼に置くのであればチェックポイントは細かい方が良いかもしれませんが、人数が5‐6人と少ない組織でコミュニケーションを取りやすくする事が目的の場合は、簡素な補足ツールの様なもので済むのかもしれません。

こういったビジョンがある程度明確でなければ評価制度やフォームを用いる意味があまり無くなってしまい、場合によっては集計や管理などの運用面で手間ばかりかかるばかりか、評価項目や方向性が現状とマッチしないために評価を行う事でむしろ不信感を生んでしまうなど、逆効果になってしまう事も十分考えられます。

評価を無意味なものにしないためには、マネジメントの期待値をしっかりと示す事と、その対象となる従業員の理解が大事になって来るため、必要に応じて毎年内容を精査し、期中であっても状況が変わったのであればそれに応じて内容を更新して従業員に理解して貰わなければなりません。 


また、評価結果として1‐5などの点数をつけている組織も多く見受けられますが、この様な仕組みで運用するためには評点の整合性が重要になります。よく耳にするのが、評価者によって評価の甘い辛いなどの差が生じてしまい、評点に公平性が欠けて来るという問題点で、それに関しては基準となる評点がどこにあり、どの様な成果を残せれば一つ上の評点になるのかという部分の明瞭さがポイントに挙げられます。

つまり、例えば「期待通りに職務を全うできた場合は”3”」という基準を定め、「こういった要素をクリアできたら”4”」という事が期首の評価面談の前に決まっていなければならず、もし数字ごとの差を細かく設定するのが難しい様であれば5段階ではなく3段階にするのも良いかもしれませんし、場合によっては点数をつける行為を辞める事も選択肢に入れても良いのかもしれません。

加えて、評価項目(目標)が全員同じ内容というケースも時折耳にしますが、アメリカではポジションごとに求められているものが異なり、それに応じて給料も決まって来るため、評価項目が同じ場合は評価をしている意味があまり無いとも捉えられます

評価項目(目標)は、ポジションごとの役割と階層ごとの責任を中心に定め、場合によってはその人だからこそ期待するものを加味する事が一般的です。また、評価項目(目標)のハードルも組織の中である程度難易度が同等である事が求められ、「AさんはBさんと比べて”3”(期待通りの成果)が簡単に取れる」などの差が無い様に配慮する必要があります。


今回のポイントをまとめると、制度面では評価項目(目標)や評価指標の整合性や公平性の高さが求められ、運用面ではマネジメントと従業員の間で評価項目(目標)の内容や期待値の理解が共有されている事や、マネジメントと評価者(時には同一人物)の間で評価の整合性が理解されている事が重要になります。

今期の評価を年末から春先にかけて行う会社は多いのかと存じますが、来季の評価項目(目標)を設定して行くに当たり、制度や運用面を今一度見直されてはいかがでしょうか。 (2015年4号)


関連動画: 【どこを見直せば良いのか⁈】評価制度が上手く行っていない理由【考察】

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