2019年に向けた給与動向と間違えたくない昇給の考え方

2018年も最終四半期を迎えましたが、この時期になると、次年度の給与に関して考え始められる日系企業の皆さまも多いのではないでしょうか。時折、「評価や給与の事を従業員と話すのは大変」と耳にする事もありますが、今回は大変さが少しでも軽減される様、給与動向と昇給の在り方について考察してみました。


最低賃金の傾向

現在、アメリカでは最低時給を$15にするという流れがある様で、州単位ではマサチューセッツ州が2023年に$15に届く見込みで、主要都市ではニューヨーク市が2018年12月31日から(11人以上の会社)、サンフランシスコ市とサンノゼ市では2019年に、ニュージャージー州の一部の地域では既に昨年から最低時給$15に到達しているという状況です。また、ニューヨーク市のフードチェーンの最低時給は、今年の1月から$13.50に上がり、12月31日からは$15になるとされています。

この時給$15という金額は、年収換算すると$30,000前後になるという事や、大学新卒者の全国平均が$50,390という事を踏まえると、この数年で給与相場はどんどん上がっているという印象があります。そのため、実際の金額はさておき、従業員の期待値も上がっている環境があるという事を念頭に置く必要があります。

2019年の給与予算の動向

では、次年度の給与をどの様にして行けば良いのかという部分ですが、恐らく皆さまの感覚では「3%増」が一つの目安になっているのかと思います。この「3%増」という数字は、CPI(消費者物価指数)が反映されていると誤認されている事もありますが、実際は、全国の「次年度の給与予算の上昇率」となっています。毎年、大手調査会社がこの数字を出していますが、どのデータも2%後半から3%前半の増という事が見られます。

ただし、この「3%増」という数字はあくまで予算の上昇率であり、各従業員の昇給率とは異なるので注意が必要です。昇給率は各従業員の評価による上下はもちろん、職種によっても大きく変動します。例えば、STEM(ハイテク職種)系は売手市場のため、他のポジションよりも市場給与相場の変動が大きく、それ相応の昇給が必要となる事が考えられます。(ソフトウェア系の職種の場合、昨年の大学新卒者のエントリーレベルは$67,236となっていました)

さらに、ニューヨーク市のExempt従業員(11人以上の会社)の最低年収が2018年12月31日に$58,500に到達する事を踏まえると、大幅な昇給が求められるケースも想定されます。

正しい昇給の考え方とコミュニケーション

そうなると、次年度の給与をいくらにするべきなのかと頭を悩ませる事になりますが、やはり市場の動向を知る事が最重要であり、それが昇給を考えるための第一ステップとなります。また、市場の動向といっても給与アンケート結果の集計など「日系市場」を見るのではなく、「アメリカ市場」の動向を知る必要があるため、「地域」「業種/業界」「職務内容」を基にデータを見て行く必要があります。

そのデータを知る事で、給与の傾向と共に実際の適正レンジを把握する事ができ、それを基に社内の給与レンジを組む事が第二ステップだと考えられます。そのレンジを用いる事によって、今後の昇給計画やMAX給与までのギャップなどが計れる様になります。

また、実際の給与額を算定するという側面だけでなく、こういった客観的なデータがある事によって、従業員とのコミュニケーションが円滑になるというメリットも考えられます。給与交渉の際、従業員が独自のデータを持参するケースもありますが、そのデータの正当性が分からなくて困ってしまう事や、そもそも「金額を感覚で決めている」と感じられてしまった場合は、話し合いが難しくなってしまうという懸念があります。

こういった状況で手元に正しいデータがあると、その説明をする事によって、納得して貰える可能性が高まる事が大いに期待できます。(むしろデータが無いという状況は避けたい所です)



これから昇給に関して考えて行かれるという企業の皆さまにおかれましては、今年は上述の様なデータを参考にしながら、ご準備されてみてはいかがでしょうか。(2018年7号)


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