スポーツから考察するアメリカのHR

皆さまもご存知の通り、アメリカの「HR」は、日本の「人事」と基本的には似ている一方で、異なる要素も多分にあります。また、ビジネス文化や慣習の違いもあり、アメリカのHR独特と捉えられる考え方も存在するため、HRの概要を理解するのが難しいと感じる場合もあります。

そこで、今回はHR関連の要素を身近なものに例えて考察したいと考え、「スポーツ」になぞらえてみました。


競技の目的を理解する
まず、所属する組織が何を目的にしている集団なのかを理解する事がポイントとして挙げられるため、現在行っている競技が何なのか、勝敗があるのか無いのか、ある場合は何をしたら勝ちなのかという事を知る事が重要となります。つまり、日本から派遣されている駐在員の方であれば、赴任先の組織がどういった所なのか(管理する所、利益を上げる所など)、何をする事で自身のミッションや会社の成功に繋がるのか(ルーティン作業をこなす、組織の問題を改善する、新規案件を受注するなど)という事を正しく知るという事になります。

また、組織を理解するという意味では、現在の組織がどういった立ち位置であるべきなのかという部分も含まれます。アメリカの赴任先が、終身雇用が前提となる構造で成り立つ在日本企業とは異なるはずの組織(アメリカでは年間で約17%の人数が入れ替わる)でありながらも、日本の考え方が強く反映され過ぎてしまっていてはNGなので、本当に長期雇用を見込んだ採用が向いている組織なのか、業務の線引きが極端に曖昧な形になってしまっているのが良い事なのか、などを再考する必要があるかもしれません。


現在のコンディションを知る
次にポイントとなるのが、競技を行うための身体のコンディションを知るという事です。HRに関して企業訪問をしている際に、時折「ウチは問題が起きていないから大丈夫」という事を耳にする事がありますが、例えばこのケースを野球に例えてみると次の様に考えられます。

野球のピッチャーが、めっぽう早い投球でバッターを抑えていたとします。現在は抑えているので問題は無いと考えられるかもしれませんが、その早い投球をするために身体に過度な負担をかけてしまい、近い将来怪我をしてしまうという事もあり得ます。つまり、今まで問題なかったのは必然だったのかという部分が肝となり、潜在的なリスクの認知ができているか否かが今後の成功に大きく左右すると考えられます。

また、監督が選手のコンディションや作戦を全て選手任せにするという事が一般的には無いのと同様に、権限移譲をしているからと言って、部下の業務の現状把握ができていないという事はあまり一般的ではありません。時折、「ウチは〇〇に任せているから大丈夫」という事で、実際に何がどう行われているかを把握していないケースもあり、放任しすぎてしまった結果、会社の医療保険が過剰な内容のプランになっていたといった事例も耳にした事があります。


現状に合った練習方法を考える
目的と身体のコンディションが理解できたら、次は目的を達成するためにどの様な練習をすれば良いのか、という部分がポイントとなります。例えば、野球のピッチャーで中4日の登板するためには、中6日だった日本の時の様な投げ込み練習はしない、あるいは怪我をしないためのトレーニングやサプリメント摂取もするでしょうし、何よりもコンディションによって練習メニューを変えるのかと思います。

つまり、「今までのやり方が正しいとは限らない」という事を念頭に置き、アメリカのビジネス文化に合った組織作りをする事や、コンプライアンスをタイムリーにアプデ―トする事でトラブルを未然に防ぐ、あるいは専門家に相談をして正しい知識を得る、現行の制度をより最適化させる、などという事が当てはまるのかと思います。

更には、プロ野球のバッターが毎日素振りをする事を踏まえると、マネージャーとして部下と英語でコミュニケーションを取る必要がある業務の場合、毎日英語の勉強をする事がビジネスパーソンとしてプロフェッショナルと言えるのかもしれません。


皆さまの中には、夏から秋にかけてスポーツをする機会があるという方もいらっしゃるのかと思いますが、その際休息の一息つかれるのと共に、お仕事を振り返る事によって新しい発見があるのかもしれません。

機会がある様でしたら、普段とは少し異なる角度から普段のお仕事を振り返ってみられてはいかがでしょうか。(2018年6号)


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