ささやかな防御

人生の最も幼い頃の記憶は、祖父に抱かれて裏庭を散歩したこと。
裏庭は全て祖父の自作で、そこでは大雨の後に野良の亀を見つけたり、枝垂れ梅を見たり、畑で作業する祖父を追ったり、丘から見える世間をぼんやり眺めていた。とにかく思い出が多い場所。

私の趣味嗜好の類い、クリエイティビティはそこで育まれた。また、あまりに深く考え過ぎる無駄に哲学的で学者気取りの思考も、そこでの空気や草花に長い時間見守られて成長した。

そんな祖父の最後を看取ったのは、私。

薬の副作用で幻覚を見て自分の若かりし頃経験した戦争をどれほど生々しく語られても大好きだったのに、お医者さんが宣告したその瞬間、祖父を初めて怖いと思ったのを鮮明に覚えている。

少なかったけどアルバイトのお給料で買ってあげた清々しい青空のような水色のポロシャツを着せて、火葬したんだった。あれは自己満足なのかもしれないけど、祖父も喜んでいてくれたら良いなと、ずっと願っている。


こんなことを書くのは、今、この歳になって、自分の過去を整頓しなければ、結局は前進できないということに、気付いたからだ。
私を守るために、私のことを書き始めることにする。

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