殺戮にいたる病 我孫子武丸 講談社文庫

とにかく衝撃のラスト、開いた口が塞がらないとはまさにこのこと!本を閉じることを忘れて、暫く情報整理してた

違和感を感じる節がなかったわけではない、稔がオジンと呼ばれたり、学生とは思えないくらい金銭的に豊かだったり、目撃情報に30代40代に見える男性あったり。でもちゃんと注意して読んでなかったからこんがらがった。母は息子を疑ってたよな?息子のことを「あの子」と表していて、でも基本三人称語りだったから、わたしは「稔」=「息子」=「あの子」で認識していたから読了後ごちゃごちゃになってよくわからなかった。でもたしか息子の部屋を詮索してたはず、じゃあ息子の部屋にビニール袋が捨てられていたのは、、??そのへん理屈が合わないのは個人的に好かないので、しっかり注意して読み直してみたいと思う。

本全体の所感としては、、生々しかった!グロテスクな描写が多くて目を瞑ってページをめくったこともあった。勿論実際に見たことのあるシーンではないから想像し得ないはずであるのに、どうしてもそのグロテスクな様子を脳裡に浮かびあがらせてしまう...我孫子さんの描写はすごいと思う。性的対象がマイノリティであるということで大きく括ると、朝井リョウの正欲(半年ほど前に読んだ)と同じテーマなのかと思ったけど、ことの重大さはまったくもって違うし、稔にはそれが道徳的範疇を越えているものという自覚がなかったように思うし、自分の息子を犠牲にしてまで自分の欲を優先した。読み始めた頃は「殺戮」にいたらしめられる対象は「稔」であるとおもっていたが、「殺戮」を通してでしか自分が満たされないという意味だった、、その結果、数人の女性、息子、実の母を殺戮した。あまりに無惨すぎる!そんな殺人鬼がこれまで普通の顔して生活していたのも恐ろしい。でもめちゃめちゃ難しいテーマでもあるな、、、
インポテンスやら異常性癖、特殊嗜好を持つ人たちって、幼少期の家庭環境が原因やったりすることが多いんかな?本文中にそういう記述もあったし、稔もその原因が無くはなさそうではあったけど。多様性の時代やらなんやら謳われる世の中ではあるけど、一義に多様性といっても、世間的にはLGBTQのことを指すし、死体愛好者の尊重なんかは勿論謳ってない。そんなの野放しにしてたらたまったもんじゃないし。本文中で、元警官の樋口が専門家の教授に話を聞きに行ったときに、いろんな事例が挙げられてたけど、あれも全部事実なんや、、お墓を掘り起こしたアメリカのエドゲインとか。読んでる間にちょっと調べちゃった、彼も精神的疾患があったみたいやけど。ほんとに難しい。多様性の時代とは言っても、道徳から離れては絶対にいけない。これに尽きると思う。

特殊嗜好、、難しいテーマやなあと思いながら読み進めてたら衝撃のラストで今まで読み進めてきてた内容全部飛びかけたけど、なんとか思い出して感じたことは記録できたかな、、物騒でグロテスクな本は久しぶりやったので少し刺激的やったけど、ちゃんと読み切った!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?