アルジャーノンに花束を ダニエルキース 早川書房

なにから記録していいか分からん、、感じたことをそのまま言葉にするにはあまりにも深すぎる作品、まだ私の中でも収集がついていない、読了後の心の高揚が、まだ落ち着いていない、
はじめのページをめぐる、知的障害者チャーリーの乱雑した文章(経過報告、けいかほーこく)から話ははじまる。まさかこの話、ずっとこの調子、、?ちょっと不安になる。でも逃げない。チャーリーの、きっと一生懸命書いたであろう滅茶苦茶な文章を、一文字ずつ追う、どうやらチャーリーは、人為的に知能を高めるための研究対象に使われて、これから脳の手術をするらしい。この頃のチャーリーには笑ってくれる友達がたくさんいて、もっと利口になりたいと思ってる。

手術が終わる、稚拙だったチャーリーの経過報告は、どんどん整然とした文章になっていく。漢字だって書けるようになるし難しい単語も使えるようになる。

それと同時に過去の記憶も掘り起こされる。友達だと思っていた人は自分を馬鹿にして笑っていたことを知る。母親は、自分のことを心から忌み嫌っていたことを知る。恋を知る。性を知る。20ヶ国語を理解できるようになる。政治や、宗教を知る。手術のおかげで、チャーリーの知能は比類ないスピードで向上する。

チャーリーの経過報告を通して、世界を知ることは必ずしも良いことだとは言い切れないことがよくわかった、、パン屋のあの友だちは、自分のことを馬鹿にしてたし、ニーマー教授は、以前の自分を、まるで人間ではない生物として話すし。

チャーリーは自分を対象とした研究にだって口出しできるようになる。それほどに知能レベルが飛躍する。でもやっぱり、知りすぎてしまった。世の中を厭世的な目で見るようになってしまった。以前より孤独になった。研究発表の途中で、アルジャーノンと共に脱出を図る。

こんなにも知能レベルが飛躍して別人のようになったチャーリーを、依然として以前のチャーリーが覗いている描写がある。お酒を飲みすぎると突然退化ししたように、子どものような喋り方をするチャーリーは印象的で、なんだかゾワっとした。アリスと愛し合おうとすると、過去の恐怖(母親や妹に植え付けられたもの?)に邪魔される。。。賢くなって人が変わったようなチャーリーの中にも、以前のチャーリーはちゃんと居る。良くも悪くも、、、

ある日、近頃ずっと調子の良くなかったアルジャーノンが亡くなる。そして皮肉にもチャーリー自身が、自分を対象として研究の最終着地点を見つけてしまう。チャーリーは論文を出す。アルジャーノン・ゴードン効果、について。それは、「人為的に知能を高められた生体は、比類ないスピードで知能を獲得するが、その後、それ以上のスピードで、知能レベルの低下に結果する」という内容のものだった、、、

どんどん稚拙な文章に戻っていく。(ガチ翻訳家さんリスペクト)書けるようになった漢字だって書けなくなっていくし、教えてもらった句読点だって打てなくなる。どんどん学習したことを忘れていく。切なくってならない。学んだこと、できるようになったこと、読み書き、忘れたくないと、チャーリーは図るけど、どうしても思い出せなくなってしまう。新しいパン屋の同僚にまた意地悪をされてしまう。愛していたアリスのことを忘れてしまう。 

うう、、、、読了後のこの感情の名前をわたくしはまだ知らん!とにかくずっと心が高揚してるというか動揺してるというか...適切な日本語かわからないけど、とても切ない、儚い、空しいというか...
終始語り手がチャーリーだったのが良かった。知的障害者の立場がいかなる立場であるのか、もちろん私になんて到底わかるものではないけど、でも、なにか同情してしまう。ふと思い出して、あの時、あの人私に嫌味言ってたんか、って気づくことあるし、私も厭世的な世の中の見方をしてるから、世の中をどんどん知って心が冷めていくチャーリーの様子には共感できてしまった、、
知能が高くなって家族の元へいき、受け入れられたり、マンションのお向かいにお友達ができたり、アリスと恋に落ちたり。やっぱり"普通"であることが求められる世の中なんやなと。彼はその温和な性格から、知能がどうこう以前に、周りから愛される存在なのかもしれんけど、やっぱり知的障害という壁があると無いとでは周りも自身の生き方も変わるよなー、そこが難しい。
でもいろんな運命を辿りながらもチャーリーは終始心の優しい人間で、お友達のアルジャーノンのお墓にそっと花束を添える、、、知能レベルが戻ってしまってもその心の優しさは変わらず。だからこそとても胸が痛い。。。"純粋無垢" という言葉がぴったり似合うチャーリーに、生きやすい世の中が訪れますように。色んなことを考えさせてくれる、本当にいい作品だった!!!!大泣きしちゃったね

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