Perfect days ヴィム・ヴェンダース

今は今。今度は今度。自分は今の自分に満足しているしこれ以上は求めないはずなのに、なぜか溢れ出す涙!変わらない自分と、変わっていく周り、時代。自分がなんだか取り残されているような寂寥感。

主人公は東京の下町に暮らすトイレ清掃員の中年男性 独身 毎日の繰り返し。朝起きて布団をたたみ、植物に水をやり、歯を磨き、髭を剃り、缶コーヒーを買って車で仕事へ向かいます。スカイツリーが目に入ると決まってカセットテープを流します。会社に割り当てられているであろう同じ公衆トイレを清掃し、昼休憩には神社の境内で木々の写真を一枚撮り、浅草の高架下の居酒屋で夕飯を済まします。家へ帰って読書をし、眠くなったら眠る生活、無駄のないくらし!

主人公は多くは語りません。無口で、同僚にも何を考えているかわからないと言われます。そんな中でも見逃すことのできない彼の温厚さ 同僚のちょっとしたことでニコニコが止まらなくなったり、日常のちょっとした場面を目にして和んだり 他人には理解され難いけど、心の中に宿るそのあたたかさ!役所広司さん最高

でもその節々に暗い影が迫ってくるかのような描写がありました 夢?トラウマ?何かに対する恐怖?不安?最後までその真偽はわかりませんでした なんですかあれは

主人公にとって変わらない日常。変哲のない日々 それでも周りは変わります。同僚は仕事を突然辞め、長年会っていなかった妹には冷ややかな目で見られ、通っていたスナックのママは元夫に再会しちゃったり、、変化する周囲。自分だけが変わっていないことでなんだか切り離されたような気がするちょっとした寂寥感。

スナックのママの元夫と話すシーンで、影って重なったら濃くなるのか?独り言のように元夫さんが言います。2人は試すことにする。ここでの平山さん(主人公)の言葉が印象に残りました。「変わらないなんておかしい」(正確なせりふはわすれてしまいました)変わらないなんておかしいのです!時代は回ってるから!

映画は平山さんがカセットテープの音楽に合わせてなんとも言い難い表情で車を運転するシーンで終わる。この表情がが本当に迫真の演技!!さすが役所広司さん(さいこう)、人ってこんなに表情で語ることができるんですね 表情ってこんなに人に想像を掻き立てることができるんですねえ この表情は、私は「変わらないことへの安心感、満足感、幸福感」に「寂寥感」が覆い被さっている表情じゃないかなって考察しました やっぱり人間って社会的な動物であるだけに「独りで生きる」ってことは多かれ少なかれ孤独を感じて生きるということだと思います でも、これでいい、自分にとっては、変わらなくても、これで良くて、すこしの寂しさも合わさってこの生活に満足していて、明日も明後日もこの生活を続けるのです

それでも変わらないことへの肯定もいくつか見られたように思います 大昔のカセットテープにあやが涙を流したり、家出をしてきた姪っ子から平山さんが懐かれたり。昔のものが再び流行っているという事実にも、変わらないことというか、古びた、古臭い、と言われるものへの肯定を感じました 変化しない下町の浅草と、ザ・都会!てかんじの東京の他の街とのコントラストもよかったです 東京ラブ

個人的には東京の下町暮らしに憧れをもっているので 映像が好きでした 古本、カセットテープ、高架下、スーパー銭湯、ガラケー。変わらないことって悪いことではないけど、忙しなく流れる東京だと、際立ってみえる

ここまでまとめたけど解釈が合ってるかわからないしやっぱり難しかったです 流石カンヌ受賞作品、でもこの手の詩的な映画好きなのでとても満足です。この映画は多く言葉で語らないのが良かったです 役者さんたちの演技力の凄さも際立ってたし、こちらに考える隙を与えてくれたので...

主題とはずれてしまいますが 私自身この映画をストックホルムの映画館で観たのですが 他の観客は日本のトイレについてどう思ったのかきになりました ヨーロッパのトイレって基本有料やから(なのに汚い)いつも私は文句を垂れていたけど、こういうトイレ清掃員がこまなく清掃してくれてるなら、トイレが有料であることになんの疑問も感じないです 掃除してくれてる人がいることを忘れずに、感謝しながら綺麗にトイレ使わないといけませんね いつもありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?