ライオンのおやつ 小川糸 ポプラ社

33歳、ガンのステージ4の雫ちゃんのホスピスでのお話。確実に目の前にある死を待つ者視点で物語は進む。ホスピス「ライオンの家」では、週に一度おやつの時間があって、ゲスト(患者はそう呼ばれる)のリクエストに応じて、おやつが振る舞われます。雫ちゃんが、ホスピスでの何にも縛られない生活を通して、自分の人生のこと、生きるということ、何気ないことのありがたみ、など様々なことに思考を巡らせます。

ここで「おやつ」の時間ってどんな意味?おやつは、あってもなくても生きてはいけるけど、でも、あったら人生がうるおう!ちょっとした幸せをあじわえるし、そのために、生きようとさえ思えるもの!おやつの時間は、「死」を待つ者が住まうホスピスで、「生きる」意味を作り出してくれる大切な存在に思えました。たかがおやつ、されどおやつ。思い返してみたら人生にあってもなくてもいいものなんてたくさんあるし、極論ほどんどのものがなくてもいいのかもしれないけど、そのために生きようって思えることだってある。何気ないことの大切!さ!

私のママも1年半ほど前に癌が見つかり闘病生活を送っていました。転移もしてたけど手術成功して今は元気にやってます
わたしにはその過去もあって、この本に感情移入しすぎちゃうかな、読むのやめようかな、って思ったけど、全文に目を通せて本当に本当に本当に本当に心からよかったとおもいます。


ママへ

あの時はコロナ禍もあったから付き添いも面会もできず、ママ1人で病院に向かって治療やったし、入院前に検診に何回も通う中でも弱音ひとつはかず不安な顔ひとつ見せず普段のままで生活してるからなんとなく安心してわたしは変わらずママに甘えてばっかりで、気にかける素振りは見せつつも内心は安心し切っていて家のこともたまにしか手伝わずでした。死と向き合うことがこんなにも不安で精神が錯乱するもので、知り得ない巨大な恐怖を受け入れることがどれだけ偉大なことか。ただ小説を読んだだけやけど、前よりはわかる気がします。ごめんなさい。謝りたいですごめんなさい
雫ちゃんはいい子で、言い方を変えると周囲のために我慢しちゃう子だったので、雫ちゃんの父も本当に雫ちゃんが考えていることを見抜けなかったことがあったのですが、同じようにあたしもママの不安を見抜けなかった。いや見えないふりをして自分の不安を払拭したかっただけなのかも、どこまでも自分勝手な人間でごめんなさい親不孝者です。
雫ちゃんが死ぬとき、「ごちそうさま」っていったんやけど、自分の人生をまっとうして、いろいろあったけど、最終的においしかった、ありがとう、って思えるほどの人生だったのだと思います。わたしも、本読みながらめちゃくちゃ泣いちゃったけど、これはハッピーエンドだと感じ、暖かくラストを迎えました。私はまだママに感謝しなあかんこともいっぱいあるから、いっぱいいっぱい孝行するから、ママの最期(もうずっと先のね!)には絶対に「ごちそうさま」って言ってもらうようにするので、2年前のことはゆるしてください。いつもありがとう

もちろん、ほかの家族のメンバーも、そして自分も、人生を美味しかった!っていえるようにしたいし、おやつみたいな、人生を豊かにしてくれるようなものをたくさんみつけて、人生のおわりに、食べたおやつを思い出しながら死にたいな!

あーーーカタルシス!こういう系の本久しぶりに読んだ!

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