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飼い猫チョコのこと 家出編④

私と姉の二人暮らしに、仔猫がやってきて二ヶ月が過ぎた。一緒に眠ってくれるようにはなっていたけど、慣れているかどうかと聞かれたら「もう少しかな」という感じ。

例えば、シャーッと威嚇はされないけど一定の距離を保たれている、呼んでも振り向いてはくれない、だっこしてしばらくすると暴れて逃げていくといった様子。  

ある日、姉の友人が我が家に遊びに来た。仔猫を中心に一しきり盛り上がった後の夜10時、マンション8階にある我が家から、一階の駐車場まで見送りに行った。その時、姉の腕の中には、首輪も紐もつけていないチョコがいた。

ここまで読んで、猫を飼ったことのある人なら、慣れていない猫を外に連れて行くとどういうことになるか、悪い予感でいっぱいになると思う。そう、チョコは一階の駐車場で暴れた。そして、姉の腕の中からすり抜け暗闇に消えて行った。慣れない人の腕の中で、見たことのない景色と匂い、怖かったよね。必死に隠れられる場所を探したのだと思う。

私と姉と、姉の友人は、懸命に探したけれども見つけられなかった。私は姉がチョコを外に連れて行くのを止めなかったにも関わらず、姉を強く批難した。姉も私もたくさん泣いた。

たった二ヶ月の猫との生活。もう二度と会えることはないだろうと思った。

それから一ヶ月後、奇跡が起きた。当時、私がお付き合いしていた彼が、チョコを連れ帰ってくれたのだ!

彼は、マンション近くの一軒家のブロック塀に、香箱座りをしているチョコに似た猫を見つけた。チョコかもしれない、、、と即座に思い、猫の柄の判別ができる距離になるまで一時間ぐらいかけてじわりじわりと近寄って行った。そして、いよいよ手の届く距離になったときに、チョコだとわかって捕まえたのだ。

野良猫化しているチョコを捕まえる彼の根性と、野良猫化しているのに捕まってしまうチョコののんびりとした性格。なんというめぐり合わせ。私も姉も、彼に本当に感謝した。

チョコは猫同士で喧嘩したのか額に生傷があった。そして、野良猫らしい険しい表情をしていた。

私は早速病院に連れて行った。猫蚤はいたが熱はない。エイズキャリア以外は健康そのものであった。チョコは一月の野良猫生活を、健康にたくましく終えて帰ってきた。

それ以降も、玄関からたまに脱走しては、なぜかマンションの階段を駆け上がり、我が家と同じ位置にある12階の御宅の前で、家にいれろ!!と、あきらかに切れて鳴くという謎の行動をしていた。何がしたいのさ、かわいいから、まあいいけど。でも、階段を下っていかないのは偉いぞ、チョコ。

一瞬、野良猫になった飼い猫チョコの話。


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