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飼い猫チョコのこと 出逢い編①

私が大学時代に暮らしていた地方都市には、週末になると、繁華街に通称猫おばさんと呼ばれる人が出没していた。アーケード内に1メートル四方の柵を貼り、猫数匹をそこに入れ、その横に小さなチェアーを出して日がな一日気怠そうに座っていた。今思えば、譲渡会の先駆けのような活動だったが、猫おばさんの放つ精気の感じられない目線が怪しげに見えて、とても近寄りがたかった。

私は大学に通うために実家を離れ、社会人の姉と二人暮らしをしていた。当時、姉も私も20代。休みが合うと、二人でよく繁華街に出かけたものだ。
大学2年生の春、いつものように姉とショッピングに出かけた私は、いつものように猫おばさんに遭遇したけれど、その日だけはいつものように通り過ぎはしなかった。
なぜ通り過ぎなかったのかというと、姉が不意に立ち止まったからだ。姉は柵の中を歩き回っている元気な白色の子猫をじっと見て、「あの白い猫かわいいね」と私に言った。真っ白な生後1ヶ月も経っていないような子猫、可愛くないはずがない。姉が飼いたいと言い始めたので、私もすぐに賛成した。あの子が家にきたら、どんなに楽しいだろうか。

猫おばさんに飼う意志を伝えたところ、後日、猫おばさんの自宅まで取りに来ること、餌を買って渡すので3千円用意することを伝えられた。私たちの素性とか猫の飼育歴とか、一切聞かれなかったから、やはり譲渡会と言われたら引っかかるところだ。あの猫たちは全部雑種だったから、やはり保護猫の活動をしていたとは思うのだけれど、ただの善意の人ではないような独特の雰囲気を持った人だった。

姉は社会人で忙しかったので、学生で時間に余裕のある私が、海の近くに住んでいた猫おばさんの家まで、猫を引き取りに行くことになった。引き取りに行ったときに、予想もしなかった展開になった話はまた次回。続く。

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