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洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準Version 1.0(CODE FOR UNPLANNED ENCOUNTERS AT SEA:CUES)の信号旗に関する部分

概略

洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準Version 1.0(以下"CUES")には信号旗を用いた通信(旗旒信号)も規定されている。防衛省は情報公開してくんないし、日本語訳も無いので拙訳ですが公開しておきます。グーグル先生やDeeplに文章を投げつつ単語単語を確認していったので著しい誤訳は無いとは思いますが、have to,must,shallとかの強さの訳は統一されてない所は留意してください。
尚、結構な割合でNATO信号の規定を流用してるっぽい。タックラインや指示旗のルールを理解することはNATO信号を理解するのに大いに役立つであろう。と言うかまんまNATO信号書(ATP-01,volume II)からの流用も多い。
また、信号旗はNATO信号旗(下画像)の使用を前提としているらしい。

NATO信号旗一覧

旗旒信号に関する規定(抜粋)

3.0 通信手順

3.2 音響、発光、旗旒信号

3.2.1 双方の艦艇が視界内にいる、或いは視界が制限された状態で航行している場合、海上における衝突の予防に関する国際規則に定められる音響,発光,旗旒信号を、同規則に従って行われる操縦の意図を示すために使用しなければならない。

3.2.2 軍艦同士が国際信号書に基づき旗旒信号を使用する場合、その通信が国際信号書に基づくことを示すために回答旗を使用しなければならない。

3.4 コールサイン

3.4.1 個々の艦船のコールサインは、艦名,艦番号,国際無線呼び出し符号である。航空機のコールサインは、国際無線呼び出し符号である。船舶及び航空機はその国籍も明らかにしなければならない。
 
3.4.2 呼び出す相手のコールサインが不明な場合、“UNKNWON STATION”と呼称する。呼び出していることを相手に伝える為、位置,針路,速度といった十分な補足情報を共に伝える。“UNKNOWN STATION”と呼び出された艦・航空機は、自らの国際無線呼び出し符号で応答しなければならない。

3.7 タックライン

3.7.1 タックライン(tack line)は“TACK”と伝達・発音され、ダッシュ(-)で表記される。これは以下の様に使用される。
 
a)分離しなければ誤認される恐れのある信号・数字を分離することで曖昧さを回避する場合。例” G Corpen 000-10”
b) 特定の信号で必要とされる場合。“AV 26-3“

3.10 「指示」(Designation:DESIG)信号

3.10.1 「指示」信号は、自らを或いは相手の部隊へ説明をするため、または以下の信号が信号書のものでないことを示すために使用される。「指示」信号は以下の通信がそのまま発音される。

付録A 
抜粋された信号語彙と基本的な操作手順

注意:安全性と効率の観点から、これらのグループを通信目的で使用する必要は無い。(訳注:相手と連絡を取るというよりは揚げることで自らの状況を示すために使われる。)

一文字信号

これらの信号を国際信号書のものと混同してはならない。

凡例
アルファベット旗:発音(つまるところNATOフォネティックコード)
信号旗の意味。(場合によっては)より細かい意味や使用方法が下段に続く。大まかな意味が複数ある場合(B旗等)もある。半揚,全揚,降下は信号旗の状況、数字は基本的に数字旗を揚げることを指す。また、「留保」は示す意味がないことを意味する。

A:Alfa
潜水士、友軍の爆発物処理員が潜水中

B:Bravo
武器の訓練
a.半揚:目標は射程内(??? .原on range between phases)
b.全揚:射撃が開始された/射撃中
c.降下:射撃終了

 給油、危険物・爆発物の移送
a.半揚:一時的に移送が停止された
b.全揚:燃料・危険物・爆発物の移送中
c.降下:移送完了

C:Charlie
肯定、Yes。許可する。

D:Delta
留保(つまり今のところ空欄)

E:Echo
留保

F:Foxtrot
航空機(訳注:厳密に言えば固定翼機)の運用
a.半揚:風の条件が整えば、固定翼機の運用準備良し
b.全揚の後半揚:一時的に航空機の運用が遅れている
c.全揚:本艦は固定翼機を運用中
d.降下:固定翼機の運用完了

G:Golf
a:本艦が航行基準艦である
b:”G-信号符字”で示された艦が航行基準艦である

H:Hotel
ヘリコプターの運用
a.半揚:風の条件が整えば、ヘリコプターの運用準備良し
b.全揚の後半揚:一時的にヘリコプターの運用が遅れている
c.全揚:本艦はヘリコプターを運用中
d.降下:ヘリコプターの運用完了

I:India
接舷作業
a.半揚:接舷準備中/接舷の受け入れ準備中
b.全揚:接舷準備完了/接舷の受け入れ準備完了
c.降下:1本目のもやいを確保した

J:Juliett
留保

K:Kilo
檣頭/マスト上で作業中

L:Lima
放射性物質の危険。許可を得ることなく本艦或いは指定されたユニットから…ヤード以内に接近してはいけない。
1:200ヤード,2:500ヤード,3:3000ヤード

M:Mike
航行中でない時:医務当番艦。本艦が医務/歯科当番艦である。
a.M1:本艦が医務(内科)当番艦
b.M2:本艦が歯科当番艦
 
航行中:本艦の行動は無視せよ(訳注:不関旗的なものなのか?)

N:November
貴艦の動きは理解出来ない

O:Oscar
落水者有り

P:Papa
留保

Q:Quebec
本艦のボート(又は本艦宛てのボート)は直ちに本艦に戻れ

R:Romeo
横曳き補給
a.本艦の速度・針路は安定し、受け入れる準備完了/指示された舷側に来られたし。
b.全揚:接近準備完了/接近開始
c.降下:1本目の索を受け取った
 
縦曳き補給
a. 本艦の速度・針路は安定し、艦尾よりホースを流す準備完了/接近しホースを受け取る準備完了
b.全揚:本艦は貴艦の接近に備える準備完了/接近開始
c.降下:受給艦上にホース有り

S:Sierra
本艦の信号旗は旗旒信号の演習である

T:Tango
留保

U:Uniform
入港
a.半揚:投錨(右舷左舷を示すことが出来る)※U旗を揚げる舷で示すのか、STBT,PORT旗を揚げるのかはよく分からん
b.全揚:錨鎖が必要な長さ出た
c.降下:錨固定
 
停泊
a.半揚:投錨(右舷左舷を示すことが出来る)
b.全揚:錨鎖の調整(検錨のこと?)
c.降下:錨固定
 
出港
a.半揚:本艦は錨鎖を巻き上げている、または停泊状態を解いた
b.全揚:抜錨,揚錨
c.進行準備完了

V:Victor
装備の展開・回収
a.全揚:本艦は曳航式音響装置(掃海具除く)の展開または回収中
b.降下:装備は展開された/回収された

W:Whiskey
留保

X:X-ray
留保

Y:Yankee
留保

Z:Zulu
留保

0:ZERO
護衛
a.ボートで揚げている場合:本艇は護衛任務中???( I am guard mail duty boat)
b.本艦は護衛任務中

1:ONE
留保

2:TWO
留保

3:THREE
留保

4:FOUR
留保

5:FIVE
故障
本艦は故障した、或いは操縦不能

6:SIX
曳航作業
曳航作業中であることを示す旗

7:SEVEN
留保

8:EIGHT
ボート用信号

9:NINE
留保

・:DECIMAL POINT
小数点

INT:INTERROG ATIVE
信号が理解出来ない

「緊急」信号(Emergency Signals)

凡例
信号の種類
旗旒信号
信号の意味

緊急警報信号
緊急000~359
本艦又は指示された艦からの真方位(000~359度)方向の危険・緊急事態に注意せよ

緊急 右舷/左舷0~18
本艦又は指示された艦からの相対方位(10度単位で示される。信号の数字×10)方向の危険・緊急事態に注意せよ

緊急C
衝突コース。貴艦は本艦の衝突コース上にある。距離を取れ

緊急D
衝突。本艦或いは指示された艦が衝突した

緊急F
本艦に緊急着艦する航空機(固定翼機)あり

緊急H
ヘリコプターの緊急事態。本艦に緊急着艦するヘリコプターあり

緊急P
火災。本艦或いは指示された艦で火災発生。火災の種類は以下の通り
1.通常の可燃物
2.油分
3.電気
4.危険物(マグネシウム、照明弾(flares)など)

緊急U
危険。貴艦は危険な状態である。

緊急行動信号
緊急1
回避運動。各艦個別に回避行動。

緊急4
撃ち方止め。発砲中止。

スペシャルグループ(Special Groups)

回答-NE2
当海域で潜水艦が演習中。十分注意して進行されたい
訳注:国際信号書のNE2の用法を持って来ただけである。

潜水艦用信号弾

凡例
信号の種類(信号弾の色、種類など)
意味

赤色信号弾又は緊急識別信号
緊急事態。潜水艦が深刻な状況に陥っており、可能な場合直ちに浮上する。水上艦船は直ちに退避し、援助を提供するために待機せよ。

黄色又は白色発煙弾、または照明弾
潜水艦が水面、又は潜望鏡深度まで浮上する。付近から直ちに退避し、”キャビテーションスピード”を維持せよ(???原文:Submarine coming to the surface or periscope depth. Ships are to clear the immediate vicinity and maintain cavitation speed.)

緑色照明弾
潜水艦の模擬攻撃信号

注:もし対戦部隊が緑色以外の予期しない信号を視認した場合、潜水艦の緊急浮上を想定せよ。

「統御」群(Governing Groups)

凡例
信号
意味

BA
行動は実施されている(又は、本艦が活動を実施している)

BB
行動が完了した(又は、本艦の活動が完了した)

BC
推奨する

BD
貴艦の準備が完了する予定の時間を報告せよ
原:Report time you will be ready (to ...)

BE
旗艦の準備が完了したら報告せよ 原:Report when ready (to ...)

BF
準備せよ 原:Ready (to ...) (at ...)

BG
本艦の現在の意図は…

BI
行動は実施されていない(又は、本艦は活動を実施していない)

BJ
もし貴艦が望むなら…

BK
貴艦が望むとき

BL
準備完了時

BU
不可能

BX
「統御」群による通信終わり

戦術信号群(Tactical Signal Groups)

「陣形」(Formation)信号

陣形 右舷/左舷 0~18
現在又は指示された針路上の、指示された目標又は艦を起点とする、相対方位(10度単位で示される。信号の数字×10)方向の艦列を形成せよ

陣形 000~359
現在又は指示された針路上の、指示された目標又は艦を起点とする真方位方向の艦列を形成せよ

情報信号
B 陣形
部隊は隊列番号の…(この指示された部隊は指示された拠点を占領している)原:Force is in formation number ... (this unit or unit(s) indicated is (are) occupying station(s) indicated.

F 陣形
基準は…(拠点にいる又は本艦又は指示された艦から…方向…海里)
原:Guide of is ... (in station ... or bearing ... from this unit or unit indicated distance of ... miles.)

「占位」(STATION)信号

行動信号
占位 右舷/左舷 0~18
指示された目標又は艦を起点とする、相対方位(10度単位で示される。信号の数字×10)方向に通常の間隔(又は…海里)を持って占位せよ

占位 000~359
指示された目標又は艦を起点とする、真方位方向に通常の間隔(又は…海里)を持って占位せよ

占位 F
シークエンス番号
1.シークエンス番号…を想定
シークエンス番号…を想定し、それに応じた行動を取れ。

占位 R
貴艦が占位したら報告せよ

情報信号
A 占位
占位する。この部隊(又は指示された部隊)が占位している。

B 占位
占位することが出来ない。この部隊(又は指示された部隊)は占位を継続することが出来ない、又は指示された行動を中止する。その理由は以下の通り。
1.故障
2.技術的制約
3.天候

「斉動」(TURN)信号

行動信号
斉動 右舷/左舷 1~36
指示された方向(10度単位で示される。信号の数字×10)に一斉回頭
斉動 右舷/左舷 000~359
指示された方向に一斉回頭
方向(CORPEN)C
回頭止め。針路…に安定させよ(訳注:原文ではstead だが、ATP-01ではsteadyなので後者で訳した)
情報信号
J斉動
合流の際の編隊の針路・速度
(b)基準艦
(c)基準となる針路
(d)速度
(m)基準となる針路の変更は(針路),(時間)となると思われる
例)J斉動 270-10:合流する際の編隊の針路と速度は、正270度10ノット

「方向」(CORPEN)信号

行動信号
疑問 方向
貴艦の針路と速度は?

方向 右舷/左舷 1~18
方向旗で指示された方向(10度単位で示される。信号の数字×10)に針路変更

方向 右舷/左舷 000~359
方向旗で指示された方向に針路変更

方向C
回頭止め。針路…に安定させよ

方向E
安全な針路…へ針路変更

方向U
現在の針路(又は指示された針路)を(…まで)維持せよ

情報信号
B方向
基準となる針路は…

E方向
安全な針路は…

G方向
基準艦の針路は…(又は…に変更中)速度は…

K方向
針路は…

M方向
本艦(又は指示されたユニット)の針路は… 本艦の速度は…

X方向
本艦は指示された針路に(これから)変更する
針路は 右舷/左舷 に続き0~18の信号(10度単位で示される)×10度、又は000~359で示す

「速力」(SPEED)信号

行動信号
疑問 速力
貴艦の速度は?

速力
基準艦は速度…で進行。その他の艦は占位を維持しつつ進行せよ。

速力H
速度…で進行せよ

速力S
機関停止

情報信号
B速力
基準となる速度は…

G速力
基準艦の速度は…

M速力
本艦(又は指示されたユニットの)速度は…

S速力
占位する速度は…


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