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痛恨のミス。郵便屋さんをフォローするつもりが𠮟責になってしまった…

ネットで買い物をよくする私にとって、宅配便の配達員さんや郵便屋さんの存在はとても大きい。恐ろしいほどの日差しが照る夏場でも、凍えるほどに冷えこむ冬場でも、荷物や郵便物を運んでくれる配達員さんには感謝の気持ちでいっぱいである。

1年ほど前のことだろうか。梅雨だったのか、台風だったのは覚えていないが、叩きつける雨音が窓越しからも大きく聞こえるほどに、かなりの激しい雨が降っている日だった。こんな日にはもう、緊急手配された荷物以外は運ばなくていいルールがあればいいのに、と思うほどに激しい雨が降る日、バイクの止まる音がした。

窓から見ると、郵便屋さんのようだ。手紙やハガキの郵便料金の安さを考えれば、これでは割に合わないのでは?と思うほど雨が激しく叩きつけている。

チャイムが鳴ったのでドアを開けてみると、思わずタオルを渡したくなるほど びしょ濡れになった郵便屋さんが、申し訳なさそうな顔をして立っている。郵便物を差し出しながら言う。

「すみません。ちょっとここが濡れてしまって」
確かに宛名の辺りが濡れて文字が滲んでいる。中の手紙も少し濡れているかもしれない。

だが、この雨である。いくら気をつけていても、濡らさない方が難しい。こんな雨の中を、仕事とはいえ運んでくれたことに感謝である。配達中は雨で視界が悪いし、足元も滑りやすくて危ないだろう。

色んな感情が沸き起こり、でも郵便物を受け取るわずかな時間に全てを端的に伝えるのは難しい。端的に、端的にと思うばかりに出てしまった私の言葉が、

「気をつけて下さいね」だった…。

私の中の気持ちとしては「(この雨だから大丈夫ですよ。気にしないでください。それより雨で危ないですから、配達中にケガをしないよう)気をつけて下さいね」のつもりだったが、言葉があまりに足りなすぎる。

郵便屋さんにしてみたら「(大切な郵便物を濡らすなんて、何てこと!)気をつけて下さいね」に聞こえたことだろう。

瞬間、ぴっと背筋を伸ばし「すみません」と頭を下げて恐縮している姿が、閉じていくドアの間から見える。

あぁ、違うのです。そういう意味ではなくて…と思う間にドアは閉じてしまった。

なんてことだ。こんなに大変な中を配達してくれたのに、言葉が足りなすぎて叱責した形になってしまった。申し訳なさを抱えたまま、だがフォローすることもできずに月日は経っていった。

失言から1年。同じ郵便屋さんが来るたびに、なんとなく気まずい空気が流れる中、再びの激しい雨。降水量17mmの中、バイクの止まる音がした。デジャブである。見ると、予想通り郵便屋さんである。

チャイムが鳴る。あの時の、あの郵便屋さんだろうか?ちょっとドキドキしながら出てみると、本当にあの時のあの郵便屋さんだった。

あの時と同じく、タオルを渡したくなるほど びしょ濡れで、やっぱり申し訳なさそうな顔をしている。

「すみません。ちょっとここが濡れてしまって」

あぁ。きた。今度こそ!
前回の失言を挽回せねばという気合いと、わずかな時間に告げねばという焦りが私を襲う。

「大丈夫です!ありがとうございます!!」
精いっぱいの笑顔と元気な声、そして心からの感謝の気持ちである。

「運転、気をつけて下さいね」も言いたかったが、言えなかった。一礼して去っていった郵便屋さん。うまく私の言葉が伝わっていることを祈るばかりである。

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