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不運はつづくよ、どこまでも?
ある夜、夫が言った。
「来週の〇曜日、帰るのが遅くなりそう」
「来週の〇曜日とは、〇日のことですか?」
あえて敬語で訊いてみる。
「あっ。〇曜日って〇日だっけ・・・」
どうやら夫も気づいたらしい。その日は私の誕生日だ。夫は申し訳なさそうにしているが、私はさほど気にしていない。
もはや誕生日を絶対に祝ってほしい年齢ではない。忘れられていたら悲しいな、くらいだ。そう、忘れられていたら。
まぁ、仕方がない。毎年大体どこかで外食はしているが、今年はウーバーでも頼むか。誕生日に自分で料理をしなくて済むなら、それでいいことにしよう。
そうして迎えた誕生日当日。
なぜだか朝からくしゃみと鼻水が止まらない。
花粉症だろうか?時期的には珍しいが、花粉症でないと説明がつかないレベルのくしゃみと
鼻水の量である。
昨日まではなんともなかったのに、何も誕生日当日に花粉が急に舞いださなくても。
まぁ、しかしこれも仕方がない。外は強風が吹き荒れている。そりゃ、花粉も大量に飛ぶだろう。そんな風に思っていた。窓の閉まった室内にいても、くしゃみや鼻水は止まらなかったけれど。
というのも、花粉症を気にしている場合ではなかった。強風だけでなく雨もかなり強くなっていて、大荒れのピークが帰宅時間を直撃すると天気予報で言っていたのだ。
今日は仕事を早めに切り上げて家に帰りたい。
倍速で仕事をこなし、いつもより早めにあがったが、すでに強風で傘をまともにさせない状態だ。家に帰りついた頃には、当然ながらびしょぬれである。おまけになんだか喉が痛い。
ここで一気に疲れと落胆が襲ってきた。
この大荒れの中ではウーバーの人は来てくれないだろう。今晩は冷蔵庫にあるもので済ませるか。誕生日の夜に料理をしないといけないなんて、がっかりだ。
うん、でも仕方がない。その分、週末においしいものを食べに行こう。無理やり自分を励まして、早々と眠りについた。
さて、ふて寝で終わった誕生日の翌日である。
爽やかに目覚め気分一新!といきたいところだが、身体がだるいうえに、この上なく重たい。
おまけに両ひざまでなぜだか痛い。熱があるのかと思って計ったが、平熱である。
誕生日を迎えたからといって、こんなに急に身体が老いるものだろうか?私の細胞、そんなに優秀なのか?なんてすごいプログラミングがされているのだ。
しかし、そんな軽口も叩けないほど午後には体調が悪くなる。もはや座っているのもつらいほどで横になる。身体が重すぎて、トイレに行くのさえも一苦労だ。
おまけに食欲がない。これは大事件である。この私が食欲をなくすなんて、なんだかよっぽどどこかが悪い証拠だ。しかもなんだか寒い。世の人々は半袖で過ごしているというのに、私は上着を羽織っても鳥肌がたっている。
難儀だ~。
心の叫び声である。これはもう、大変とかつらいとかいう言葉では足りない。難儀、この言葉と漢字がぴったりだ。
急に老婆になったのかという状態でなんとか家に帰り、食事もまともにとらずに横になった。
体温を計ってみたら熱が上がり始めている。昨日のくしゃみや鼻水は風邪の前兆だったのだ。
おでこに冷却シートをはり、体調が早く良くなるよう祈りながら眠る。
誕生日から全くついていない。
いや、正確には夫に誕生日を忘れられていたあの時からか?
翌朝、目覚めると冷却シートがカラカラに乾くほど蒸発している。恐る恐る体温を計る。
37度5分。
平熱が低い私にとって、これは高熱である。前に37度5分まで熱が上がったときは、インフルエンザだった。
もはや嫌な予感しかしない。仕事を休み、病院に行く。検査の結果、あっさりと医者に言われた。
「コロナですね」
コロナですかぁ・・・。もう絶望である。コロナ禍でもコロナにかからなかった。細心の注意を払いここまで来たのに、よりによって誕生日にコロナを発症したのか?
ショックを受ける私に医者が追い打ちをかける。
「5日間は外出を自粛して下さいね」
あぁ、忘れていた。そうだ、外出自粛しないといけないのだ。しかも5日間。
ということは、楽しみにしていた週末の食事も行けないじゃないか。
なんたることだ。こんな誕生日のスタートがあるだろうか?いくら祝う歳ではないとはいえ、ちょっとくらいの特別感、非日常感は味わいたいものだ。
いや、ある意味、特別感も非日常感も味わってはいるのだけれど、違う。求めていたのはこういうものではない。
さぁ、この不運。一体どこまでつづくのだ?
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