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欲望のままに芝生に寝転がってみた

大人になって芝生に寝転がったことがあるだろうか?

とある公園でウォーキングをしていた時だ。足元には芝生が一面に広がっている。フカフカの芝生だ。

寝転がったら気持ちがいいだろうな。
そんな思いが沸き上がった。この公園を歩いている時に常々見てきたが、レジャーシートを広げ、食事を楽しむ人、読書をする人、昼寝をする人、どの人も気持ちがよさそうだ。

いつもウォーキングしかしていないが、あんな風にこの芝生の上でのんびり過ごすのもいいな。そう思っていた。そのせいか、この日は芝生の上に寝転びたい、その気持ちが強かった。

そう思うのに実行しないのはなぜだろう?
歩きながら考える。
人目が気になるから?

でも誰が気にするというのだろう?
他にも同じように過ごしている人はいる。
他人が寝転がっているのを見ても私が気にしないように、他人は私のことなど気にしていないだろう。

女性が一人寝転がっている姿を想像する。
若い女性が寝転がっていたら、気持ちがよさそうだと思う反面、危なくないかと心配になる。
高齢の女性が寝転がっていたら、具合が悪いのかと思って心配になる。

では、私だったらどうだ?
文字通り脂がのった、ずんぐりむっくり体型のおばちゃんがごろっと横たわっている。あぁ、気持ちよさに我慢できずに寝ちゃったのだな、そう思うだけだろう。

よし。ここは欲望のままに寝転がってみよう。
レジャーシートはないが、むしろ直に寝てみたい。

そう決意し、歩きながら程よい場所を探す。
緩やかな斜面に芝生が生えている。人もそういない。うん。ここにしよう。

まずはちょっと座ってみる。
小石等がないかを確認し、いざ横に。

おぉ~。これは気持ちがいい。
緩やかな斜面だからか、思いのほか寝心地もいい。

気持ちがよさそうに見えただけで横になってみたら実際は背中が痛かった、という結末も覚悟していたが、フカフカの芝生は横になってもフカフカのままだ。特に芝生がチクチク刺さって痛いということもない。

空が青空ではなく雲に覆われているのが残念だが、寝転がって見る空は、いつも見ている空より広くて高く、見晴らしがいい。日差しがないのが暑すぎず、むしろよかった。肌にあたる風がなんと心地よいのだろう。

なんだか眠くなってきた。ちょっと目を閉じてみる。気持ちよすぎて寝てしまいそうだ。いや、もしかしたら数分、寝てしまっていたのかもしれない。

「おーい。大丈夫か~?おーい。」
という声で我に返った。ジョギングしていた夫が覗き込んでいる。平和な時間だ。なんだかおかしくなってきて、吹き出しそうになる。

欲望のまま芝生に寝転がる。最高だった。

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