見出し画像

全裸監督 第9章 要約

第9章 4本『SMぽいの好き』主演・黒木香が陰部に挿入した指の本数

1986年の村西逮捕は、マスコミ各社に派手に報道されたことでAV業界の存在を国民の多くが知ることにもなった。最初の容疑/職業安定法違反とは、労働大臣認可の免許を持たないプロダクションから未成年の17歳の少女を供給してもらいAVを撮影していた容疑。もう1つの児童福祉法違反とは、別のAV作品に出ていた女性が未成年だったことが発覚したことによる。
いずれも、17歳と知っていてAVを撮影していたかどうかの取り調べを受けたのだが、知っていたら使うはずもなく、処分保留。実質的に不起訴となる。

この逮捕劇の中で、当時のAV業界、クリスタル映像の売上が推測されている。当時、ビデオメーカーが問屋に卸す金額は定価の40~50%。定価15,000円だとすると6,000円がメーカーの収入になり、1タイトル3,000本の売上とすれば、1作品で1,800万がメーカーの収入になる。当時のクリスタル映像は月に8本を発売していたから、月の収入は1億4,000万ほどだったと推測している。

クリスタル映像は早稲田鶴巻町にある本社から四谷にある完全防音の超高級マンションに制作室を分離、24時間体制で撮影していく。また、その後クリスタル映像のナンバー2になる日比野正明の入社前後のエピソードが続き、この章のメイン、黒木香が登場するのは後半。事件となる黒木香の発売前のデモテープを本橋信宏が視聴するシーンから始まる。

横浜国立大学教育学部の現役3年生のAV作品「SMぽいの好き」は、AV専門誌に紹介されてから火がつき、一般週刊誌が異例の大きさで取り上げたり、雑誌「スコラ」で全編解説されるなど、社会現象になっていく。黒木香の腋毛は、まるで陰毛をみせられたような錯覚に陥ることを逆手に取った、確信犯的な作品になっている。なぜ男たちが黒木香に熱狂したのか?その分析と様々なメディアで文化人や芸能人と対談したエピソードが続く。

対談した相手は、村上龍・荒木経惟・中上健次・ねじめ正一・中沢新一・森田芳光・野坂昭如・大島渚・泉麻人・川崎徹・田中小実昌・栗本慎一郎・北方謙三・和田勉など。「平凡パンチ」「週刊ポスト」で毎週当代の論客と互角に渡り合った。ちなみに、この対談をまとめた本「女と男の間には 黒木香対談集」(飛鳥新社)が読んでみたくなりネットで検索してみたが、品切れが多くあってもプレミアがついて相当高かった。

「SMぽいの好き」のエピソードとして面白かったのは、制作費が僅か6万だったこと(一泊3万の那須のペンションを2日借りただけ)。当初はあまり期待せず、黒髪の神秘的な女子大生を宇宙企画のような清廉なイメージで撮る予定だったが、普段は30分ぐらいしかやらない撮影前の演技指導を8時間もやったことで、黒木香と村西とおる双方がどんどんエスカレートしてSM的要素が入っていったこと。黒木香が「SMぽいの好き」の出演以前に「SM麗奴」(スタジオ418)という他社作品に出ていたこと(この事実がSMぽいの好きの撮影後に発覚、スタジオ418に連絡して発売を後回しにしてもらった)。黒木香のエピソードは、論客との対談で見せる知的な部分と、本能のおもむくまま性欲を貪る嗜好のギャップが秀逸で人間的な魅力にあふれている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?