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ゲームシナリオサンプル『赤ずきん様』

■タイトル:
赤ずきん様

■ジャンル:
童話風の物語

■あらすじ:
わがまま放題の赤ずきん様は、実はお姫様。
後継者争いに巻き込まれないために森深い村に移り住んでいた。
そこにへたれオオカミがやってきたが、人間が怖くて襲えない。
そのあまりのへたれっぷりに赤ずきん様は怒る。

「なんて気の弱いオオカミなの!」

そして、隣村の青ずきんちゃんに襲いかかるように命令した。
オオカミは赤ずきん様のいいなりで青ずきんちゃんに襲いかかるのだった。
しかし、この青ずきんちゃんは、とても良い子で、赤ずきん様は改心してしまう。

青ずきんちゃんの母親が危篤状態だったので、赤ずきん様は馬を駆り王城へ行き、医師団を連れてきた。
こうして、二人はいつまでも仲良く暮らすのだった。

■レギュレーション
10000文字(約20KB)
30文字×3行

■制作時間
5時間

■キャラクター:
・赤ずきん
女。12歳。自己中心的でわがままなかまってちゃん。

・青ずきん
女。11歳。病気のお母さんのために今日も頑張る、けなげな子。

・オオカミ
男。少女も襲えないへたれ。

・従者
・青ずきん母
・村人
・馬
・王様

■本文

//背景:赤ずきんの家

【ナレーション】
王都から離れた森の中。
森の中にある『二の村』には、赤ずきん様が住んでいました。

【赤ずきん】
なんで私が、おつかいなんていかないといけないのかしら。

【従者】
手の空いている者がいないのです。
心苦しいのですが、ここは赤ずきん様に行っていただけないかと。

【赤ずきん】
そんなの知らないわよっ。
私はおつかいになんていかないわよ。
今からもうひと眠りするの。

【従者】
もう昼ですよ!?

【赤ずきん】
うるさいわね。
私はお姫様なの。
そこんところわかってんでしょうね?

【従者】
そ、それはもう……
王様から、赤ずきん様のことを命にも代えても守れと、
ご下命を拝しておりますゆえ。

【赤ずきん】
なら、黙って下がりなさい。
おつかいならあなたが行けばいいじゃない。

【従者】
そう言われましても。
私はこれから王都へ向かわねばならないのです。

【赤ずきん】
え……王都に行くの?
まさか、お父様に会うわけではないでしょうね?

【従者】
それが目的ですので。
王様に赤ずきん様の近況をご報告せねばならないのです。

【赤ずきん】
なんですって……っ!?

//回想(王様の言葉を思い出す)

//背景:城(セピア色)

【王様】
良いか、赤ずきん。
王族たるもの、みなの規範にならなければならないぞ。

誰かのために行動できる人間にならなければならない。
わがままなんてもってのほかである。

//回想終わり

//背景:赤ずきんの家

【赤ずきん】
(なななななんてこと……!
お父様が今の私の近況をお聞きになったら、
カンカンに怒ってしまうわ)

(くっ……お城じゃないからって気を抜きすぎたわね……)

【従者】
いかがなされましたか、赤ずきん様。
お顔が真っ青ですよ。

【赤ずきん】
え?
あ、ちょっと、おなかが……。

【従者】
そ、それはいけませんっ!
すぐに王都へ出向き、医師を手配しなければっ!

【赤ずきん】
と思ったけど、気のせいね。
おなかはもう平気よ。

ええと、おつかいだったかしら。
いいわ、行ってあげる。

【従者】
よろしいのですか?

【赤ずきん】
よろしいもよろしくないも、
手の空いている者がいないならしょうがないじゃない。

それに、いつも苦労をかけているあなたに
これ以上無理させるわけにはいかないもの。

【従者】
赤ずきん様……っ!

そのお心づかい、
今は亡きお妃様を思い出すようです!

【赤ずきん】
で、でしょー。
お母様のように優しく気高くあるために、
一日一日頑張らなくっちゃね。

【従者】
今の赤ずきん様のお言葉を聞いたら、
王様はどんなにお喜びになるか!
すぐにお伝えしなくては!

【赤ずきん】
ええ、お父様によろしくね。

あ、帰りに、王家印のフィナンシェ詰め合わせ
買ってきてちょうだい。

【従者】
はい。
了解いたしました。
では行ってまいります!

//従者立ち絵消える

//SE:扉が閉まる音

//数秒間、wait状態

【赤ずきん】
ふぅ……なんとかなったわね。

【赤ずきん】
おつかいかぁ。
このカゴいっぱいにキノコを集めなくちゃいけないのよね。

【赤ずきん】
うーん……。
まあ、とにかく引き受けちゃったものはしょうがないわ。
面倒だけど、ぱぱっとやって終わらせましょう。

//背景:森

【赤ずきん】
森ってジメジメしているから嫌なのよね。
あー面倒だわ。

キノコどこに行けばみつかるのかしら。
うわ、蜘蛛の巣!

もうっ、
この赤ずきん様になんて仕打ちなの!

//SE:ガサガサと不穏な音

【赤ずきん】
ん、なに、今の音?

まさか、オオカミ?

//SE:さっきよりも大きめにガサガサと不穏な音

【赤ずきん】
また!
近づいてくる?
嘘でしょ。

【赤ずきん】
(でも、オオカミだったら一気にがばってくるはずよね)

(はは~ん、わかったわ、
私のこの美しさに惹かれてどっかの馬鹿な男が
物陰から覗いているのね)

(うふふ、そうに違いないわ!
オオカミなはずないじゃない!)

【赤ずきん】
そこの草むらにいる者、もうバレてるわよ!
さっさと出てきなさい!

//waitを数秒

【赤ずきん】
……あれ、出てこない?

//SE:草むらから何かが飛び出してくる

【オオカミ】
――――――――……が、がおおおッ!!

【赤ずきん】
へ……お、オオカミ!!
い、いやあああああああああああああああああああ!!

【オオカミ】
がおおおおお、がおおお……がおおお……。

【赤ずきん】
いやあああああああああああああ!

【オオカミ】
がおお……おおお……。がおぉ……。

【赤ずきん】
(あれ、このオオカミ、襲いかかってくる気配がないわ?)

【オオカミ】
……すみません。
……おどろかしてしまって。失礼しました……。

【赤ずきん】
(なにこのオオカミ。人を襲わないの?
そんなオオカミ聞いたこともないわ)

(というか、驚いて損しちゃったじゃない!)


【赤ずきん】
そこのオオカミ、ちょっと待ちなさいよ!

【オオカミ】
はい?
あの……なんでしょう?

【赤ずきん】
なにもしないってなにを言っているの?
あなたオオカミじゃないの?

【オオカミ】
オオカミです、すみません……。

【赤ずきん】
すみませんって。
あなた、この私を驚かせて、
謝ってすむと思っているの?

【オオカミ】
え、ああ、すみません。

【赤ずきん】
すみませんじゃないわよ、
ほら、転んだ拍子に手をすりむいちゃたじゃない。
どうしてくれるの!

【オオカミ】
えっと、
どうしたらいいんでしょう……。

【赤ずきん】
(なんて気の弱いオオカミなの!
なんだかイライラしてくるわね)

【オオカミ】
あの、とにかく、
もう驚かせたりしないので、すみません。

【赤ずきん】
謝るのをやめなさい!

【オオカミ】
え……。

【赤ずきん】
あなたにとって私は食べものでしょ。
ほら、このカゴにあるキノコみたいなものよ。
キノコに謝ってどうするのよ!

【オオカミ】
いや、でも口癖みたいなもので、つい謝っちゃうんですよ。
……すみません。

【赤ずきん】
だから、謝るなっ!
だいたい、どうして、食べるのを諦めたの?
まさか、この赤ずきん様がおいしくなさそうに見えたの?

【オオカミ】
いや、そういうことではなく。
自分、今まで人間さんを襲ったことがないんです。
その、怖くて……。

【赤ずきん】
そんなのでよくオオカミがやってられるわね。

【オオカミ】
すみません。

【赤ずきん】
また謝った!

【オオカミ】
あ、いえ……その……すみません。

【赤ずきん】
――ッ、もういいわ。
あなたを見ていると無性にむしゃくしゃしてくるの。

だって、あなた、オオカミでしょ!
それなのに、恥ずかしくないのッ?

【オオカミ】
そりゃ、恥ずかしいです。
人間を襲ったことがないオオカミなんて、
みんなから馬鹿にされるだけですから。

【赤ずきん】
そうでしょ。
なら変わればいいじゃない。
強いオオカミになるのよ。

【オオカミ】
いや、無理ですよ。
だいたいどうすればいいのか……。

【赤ずきん】
簡単よ、人を襲えばいいの。

【オオカミ】
お、襲えば……?

【赤ずきん】
そうよ、なんだったかしら――。
そう、成功体験よ!

それがあれば人は変われるの。
きっとオオカミもそうだわ。

【オオカミ】
襲いかかってもいいんですか?

【赤ずきん】
私に?
ダメに決まってるじゃない!

【オオカミ】
で、ですよね。
……でも、自分、小さな女の子じゃないと
絶対に襲いかかれないって自信があるんです。

【赤ずきん】
まあ、無理でしょうね。

【オオカミ】
はい……。

【赤ずきん】
あ、そうだわ!
たしか隣町に『青ずきん』って子がいる
って聞いたことがある。

【オオカミ】
青ずきん……ですか?

【赤ずきん】
そう、私と同じくらいの年って言ってたから、
きっと小さいわよ。

そうと決まれば。
えっと、隣村はたしかこっちの道ね。

【オオカミ】
え、あの……ついてくるんですか?

【赤ずきん】
だって放っておいたら、絶対に襲わないでしょ?
この赤ずきん様がここまでしてあげたのよ。
しっかり襲いかかりなさいよね。

【オオカミ】
わ、わかりました……。

【赤ずきん】
その意気よ。
ほら、行くわよ!

【オオカミ】
ちょ、ちょっと待ってください。
ええっと、赤ずきん様ー。

//背景:青ずきんの家

【青ずきん】
お洗濯は終わったし、お掃除も済ませたよね。
あとは、おばあちゃんのところへパンを届けるだけ。

【青ずきん母】
ごめんなさいね、青ずきん。ごほごほっ。

【青ずきん】
ああ、寝てなくちゃダメだよ。
こっちは私がやっておくから、
お母さんはしっかり休んで病気を治して。

【青ずきん母】
青ずきん、ありがとうね。

【青ずきん】
気にしないでよ。
二人っきりの家族だもん。
じゃあ、おばあちゃんの家に行ってくるね!

【青ずきん母】
ええ、オオカミには十分に注意するのよ。

【青ずきん】
はーい。

//背景:森

【青ずきん】
ん~、今日も良い天気だなー。
あ、これおいしいキノコだ!
こっちにもあるっ!

//青ずきんの立ち絵を消して、赤ずきんを表示

【赤ずきん】
いたいた、あの子よ。
あの子が青ずきんね。
ちょっと心配していたけど弱そうで安心したわ。

【オオカミ】
……赤ずきん様、すみません。
やっぱり帰らせてください。

【赤ずきん】
ここまで来て、なに言ってるのよ。
ダメに決まってるじゃない!

【オオカミ】
で、でも、人間って怖い生き物なんですよ。
毒がなければどんなものでも食べるし、
武器だってたくさん持ってるし。

子供を襲えば親が仕返しに来るかもしれない!

【赤ずきん】
あなたの目の前にいる人間をよーく見なさい。
どう、怖くないでしょ。
むしろ、か弱くて優しそうでしょ?

【オオカミ】
赤ずきん様は、
人間の中でもとびきり怖い分類なのでは……。

【赤ずきん】
誰がとびきり怖いですって?

【オオカミ】
いえ、すみません。
なにも言ってません……。

【赤ずきん】
まったく、私がここまでお膳立てしてあげたんだから
ちゃっちゃと襲ってきなさい。

【オオカミ】
…………。

【オオカミ】
……あ、いてて。
急に腹が……。

きっと虫です。
悪い虫が、這い回って……いてて。
今日はもう無理かも……。

【赤ずきん】
なら、あなたのおなかを引き裂いて、
虫をとりだしてあげましょうか?
ほら、早くおなかをみせなさい。

【オオカミ】
ひっ!
あ、虫、気のせいでした。
痛みもないです。

【赤ずきん】
じゃ、行けるわね。

【オオカミ】
……はい。

//立ち絵の、赤ずきん、オオカミを消して、少し離れた場所を表現。

【青ずきん】
今日はキノコ鍋にしようかな。
お母さん、キノコ大好きだもん。
病気もよくなるかも!

//SE:ガサガサと不穏な音

【青ずきん】
今、音がしたような……?

//SE:草むらから何かが飛び出してくる
//赤ずきんの時のように何度もやるとくどいですし、オオカミとしても赤ずきんに見張られているので、すぐに飛び出します。

【オオカミ】
ガ、ガオオオオオオオオ!!

【青ずきん】
きゃあっ!

【オオカミ】
た、たべ……食べてもいいですか?

【青ずきん】
え?

【オオカミ】
あ、いや、すみません。
やっぱりダメですよね。
おどろかせてごめんなさい。

【青ずきん】
え……ううん、ちょっとビックリしちゃっただけ。
オオカミさんこそ大丈夫?

飛び出してきた時に、
小枝でひっかいちゃったんじゃない?
ほら、血が出てる。

手を貸して、ハンカチを巻いてあげる。
うん、これでよし。
かすり傷で良かったね。

【オオカミ】
…………。

【オオカミ】
……あの、つかぬことをお尋ねしますが、
あなたは本当に人間さんですか?

【青ずきん】
え?
うん、青ずきんって言うの。
でも、どうしてそんなことをきくの?

【オオカミ】
いえ、こんなに優しくしてもらったのは初めてで、
もしかしたら噂に聞く天使なんじゃないかと。

【青ずきん】
ふふ、面白いこと言うのね、オオカミさん。

【オオカミ】
あ、いや……あはは、すみません。

//立ち絵、青ずきんとオオカミを消して、赤ずきんだけ表示

【赤ずきん】
襲えって言ったのに、なに談笑しているの、
あのオオカミ……。

もう見てらんないわ!

//立ち絵、オオカミと赤ずきんを表示。

【赤ずきん】
ちょっと、なにやってるのよ、オオカミ!

【オオカミ】
うぁ!
赤ずきん様!
すみません、また失敗しちゃいました……。

【赤ずきん】
失敗しちゃったじゃないわよ。
今からでも襲いかかりなさい。
あなた、人を襲いたいんでしょ?

【オオカミ】
え、ああ……。
無理です! 

こんな天使みたいな女の子、
襲えません!

【赤ずきん】
今襲いかからなかったら、
あなた、一生人間を襲えないわよ。

【オオカミ】
……か、構いませんっ!

この子を襲うくらいなら、
自分は……人間を襲わないオオカミになりますっ!

【赤ずきん】
はあ?

【青ずきん】
あ……ねえ、あなた、
もしかして隣村に越してきたっていう女の子?

たしか、名前は……赤ずきんだったかな?

【赤ずきん】
ええそうよ。
高貴で美しい絶世の美少女とは、
この赤ずきん様のことよ。

【青ずきん】
私、大人から聞いたことがあったの、
隣村にキレイな女の子がいるって。
ずっと会いたいって思ってたんだ。

本当にキレイ!!
えへへ、会えてうれしいなっ!

【青ずきん】
っ……なんだかやりにくいわね、あなた。

……キレイなんて言われたの初めて……。

【青ずきん】
本当にキレイだよ!
オオカミさんの悩みまで聞いてあげて、
心までキレイなんだね、赤ずきんちゃん!

【赤ずきん】
あああ赤ずきん……ちゃん!?
いいいや、そ、そこまでキレイじゃないわよ、私。
だって、オオカミにあなたを襲えって言ったの私よ。

【青ずきん】
うん、それはしょうがないと思う。
オオカミさんはそうしないと
生きていけないんだもん。

わたしだって
お魚さんとかウサギさんとかを食べてるし。

【赤ずきん】
信じられない、お人好しね。

……はあ、あなたがどうしようもない奴だったら、
無理矢理にでもオオカミに食わせていたのに。
白けたわ。

私、帰る。

【青ずきん】
ええ、行っちゃうの?
もうちょっとおしゃべりしてたいなぁ……。

【赤ずきん】
わたしだって、暇じゃないのよ。
頼まれた仕事だってあるんだから。

【青ずきん】
それってもしかして、キノコ集め?

【赤ずきん】
ええ。このカゴいっぱいにキノコを集めるって仕事。
まだ半分も終わってないんだから。

【青ずきん】
でも、赤ずきんちゃん……。
そのカゴの中のキノコ、全部毒キノコだよ?

【赤ずきん】
えっ、そうなの!?

【青ずきん】
あのね、もしよかったら、一緒にキノコ集めしよ。
わたしも夕食はキノコ鍋にしようと思ってたの。

そうだ、オオカミさんもおなかすいてるでしょ。
一緒に食べよう?

【オオカミ】
はい!
今日からキノコしか食べません!

【赤ずきん】
それは極端って言うのよ。
まったく、このオオカミは……。

【青ずきん】
赤ずきんちゃんも一緒にご飯だよ?

【赤ずきん】
ふぇ……あ、ま、まあ、たまには……。
そういうのもいいわね。

【オオカミ】
赤ずきん様は急に弱々しくなりましたね。

【赤ずきん】
なにを言うのよ、このへたれオオカミ!

【オオカミ】
す、すみません!

//時間経過の暗転

【赤ずきん】
さて、このくらい集まればいいかしら。
青ずきんのほうはどう?

【青ずきん】
うん、キノコがいっぱい!
おいしい鍋が作れそうだよ!
お母さん、喜んでくれるかな。

【赤ずきん】
お母様だけ?
お父様は?

【青ずきん】
ええとね、お父さんは小さい頃死んじゃって。
今はお母さんだけなんだ。

【赤ずきん】
そうなのね。
じゃあ、私と反対だわ。
わたしは……お母様を早くに亡くしているから。

【青ずきん】
赤ずきんちゃんもなんだ……。
似たもの同士なんだね、わたしたち。

あのね、赤ずきんちゃん。
もしよければなんだけど……。

【赤ずきん】
なによ、そんなに改まって。

【青ずきん】
お友達になって欲しいの。
わたし、今までお友達がいなくて。

【赤ずきん】
え……ともだち。

え、ええ!
いいわよ、特別になってあげるわ!
友達……友達ね。うふふ。

【青ずきん】
えへへ。良かったぁ!

【オオカミ】
青ずきんちゃん、赤ずきん様、
キノコ集めてきましたよ!

【青ずきん】
よーし、じゃあ、みんなで一緒に帰ろう!

【赤ずきん】
ええ。

【オオカミ】
はい!

//背景:青ずきんの家

【赤ずきん】
ただいまー、お母さん、お友達連れてきたんだー。
赤ずきんちゃんと、オオカミさん!

あれ、お母さーん?
寝てるのー?

//立ち絵、青ずきんを消す

【オオカミ】
自分、人間のおうちに入って大丈夫ですかね……。
銃で撃たれたりしないでしょうか。

【赤ずきん】
心配性ね。
青ずきんが、友達って言っているんだから大丈夫よ。

【オオカミ】
そうですかねぇ……。

【青ずきん】
――――ッ!だ、誰か!
誰か来て、お母さんがッ!!

//場所を変えるための暗転、暗転後青ずきんの立ち絵だけを最初に表示し、赤ずきんとオオカミの立ち絵を遅れて表示させる。

【赤ずきん】
どうしたの、青ずきん!

【青ずきん】
お、お母さんが、お母さんが!

【赤ずきん】
え?
すごい熱……!
呼吸も荒いわね……。

【青ずきん】
どうしよう、どうしよう……!

【赤ずきん】
落ち着きなさい、青ずきん。
とにかく冷たい水で冷やして熱を取るのよ。
オオカミ、あなたも手伝いなさい!

【オオカミ】
わ、わかりました!
赤ずきん様は?

【青ずきん】
人を呼んでくるわ!

//背景:村の中

【赤ずきん】
(あの熱、
きっとこの村じゃ治す手段はないわ……)

(ううん、考えている暇はないわね!)

【赤ずきん】
ねえ、そこの馬、貸してくれない?

【村人】
お前さ、誰だべ?
この馬は仕事用だ。
遊びに使うなら貸せねえべよ。

【赤ずきん】
うるさい!
友達のためなの!

【村人】
ちょ、ちょっと待つべ!
おーい、ああ、行ってしまっただ……。

//背景:森

【赤ずきん】
(森の中じゃスピード出せない……!
乗馬の稽古、面倒くさがらずに
しっかり受けておくんだったわ!)

【赤ずきん】
今はあなたに頼るしかないの。
私を連れて行って!
私の初めての友達のために!

【馬】
ひひーん!

【赤ずきん】
(待ってて、青ずきん!)

//背景:城

【赤ずきん】
従者は……従者はどこにいるの!

【従者】
あ、赤ずきん様!?
なぜここに?

【赤ずきん】
医者を用意して!

【従者】
医者ですか……?
まさか、本当におなかの調子が!

【赤ずきん】
違うわ!
友達のお母様が危篤なの!

【従者】
え、友達……?

【赤ずきん】
いいから早くしなさい!
命令よ!

【従者】
はっ!

//青ずきんの家

【青ずきん母】
はあ……はあ……はあ……。

【青ずきん】
お母さん、頑張って!
赤ずきんちゃんが人を呼んできてくれるから!
もうちょっとだけ頑張って!

【オオカミ】
赤ずきん様、遅いですね。
どこまで行ったんでしょう……。

//SE:扉が開く音

【赤ずきん】
青ずきん!
待たせたわね!

【青ずきん】
赤ずきんちゃん!

//SE:足音がどかどか。

【医者】
病人はこの方ですね、赤ずきん様。

【赤ずきん】
ええ、お願いするわ。
絶対に助けてあげて。

【医者】
赤ずきん様のご友人の母君とあれば、
この命に賭けても救ってみせましょう!

【オオカミ】
あ、赤ずきん様!
この人は?

【赤ずきん】
王都でも一番の腕を持っている医者よ。
どんな病気だってすぐに治すわ。

【青ずきん】
赤ずきんちゃん、王都まで行ってきてくれたの!?

【赤ずきん】
当たり前でしょ。
ほら、お母様の手を握ってあげて。

【青ずきん】
ありがとう、赤ずきんちゃん!

//時間経過の暗転

//森(本来ならば赤ずきんの家ですが、家→家だと移り変わった感じが出ないので)

【ナレーション】
それから数日が経った。

【従者】
赤ずきん様、本当に申し訳ないのですが、
今日もお使いを……。

【赤ずきん】
いいわよ。
どうせ青ずきんのところへ行くつもりだったし、
そのついででいいわよね。

【従者】
ええ、それはもちろん……。

【赤ずきん】
なによ、なにか面白いことでもあったの?

【従者】
いえ。
赤ずきん様は最近、
ますますお妃様に似てきていらっしゃるなと。

【赤ずきん】
なにそれ?
親子なんだから当たり前でしょう。
じゃ、行ってくるわね。

【従者】
ええ、お気を付けて!

//背景:青ずきんの家

【赤ずきん】
青ずきん、いるかしら?

【青ずきん】
赤ずきんちゃん!
おはよう!

【オオカミ】
赤ずきん様、
おはようございます!

【赤ずきん】
あら、へたれオオカミもいたの?

【オオカミ】
はい、青ずきんちゃんのために
キノコを集めてきたので。

【赤ずきん】
あら、被っちゃったわね。
はい、キノコ。

【青ずきん】
すっごーい、いっぱいだ!
ねえ、お母さん!

【青ずきん母】
うん、そうね。
二人ともありがとう。

【赤ずきん】
いいのよ、そんなお礼なんて。
それより病気が治って良かったわ。

【青ずきん母】
赤ずきんちゃんのおかげよ。
王都までお医者さんを呼びに行ってくれて
ありがとうね。

【赤ずきん】
そんなに感謝されると照れくさいわ。

【オオカミ】
あれ、赤ずきん様、
出会った頃よりも素直になられたのでは?

【赤ずきん】
なにを言うの?
私は昔から嘘も汚れもない、
高貴で美しい赤ずきん様よ!

【青ずきん】
うん、赤ずきんちゃんは心も外見もキレイ!

【赤ずきん】
あなたにそう言われると、返す言葉がないわ。
いいから作るわよ、お鍋!

【青ずきん】
うん!
今日もいっぱい食べて、いっぱい遊ぼうね。

【赤ずきん】
ええ!

エンド


※表紙絵はみんなのイラストギャラリーより七海 / nanami様の『"森に生きる"ーイラストメイキング』を使わせていただきました。

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