2000文字のシナリオサンプル
※表紙画像はみんなのフォトギャラリーより、さっとん|JK撮影フォトグラファー様の『ふたりだけのひみつ。』をお借りしました。物語性にあふれた素晴らしい写真をありがとうございました。
『映画を見に行った女子高生二人の会話』
■あらすじ
女子高生の新山琴子(17)と九段下香織(17)は映画を観た。
観終わってから交わされる、進路や友情の話。
■キャラクター
・新山琴子
17歳。女。キツいところはあるけれど、真面目。
香織と一緒の大学へ行きたいと言う。あわよくばルームシェアしたいとも。
・九段下香織
17歳。女。おっとりしているが、好奇心が旺盛。
琴子のパンツの色を知りたい。
■本文
――映画館から出ると、秋の風が前髪を揺らした。
もうすぐ夜になるのだろうか、少し肌寒い。
映画のスクリーンに心を酔わせていた人々は、
夢から覚め、日常へと溶け込んでいく。
家路に着く人の中に、女子高生二人がいた……。
香織「どうだった? 面白かったでしょ?」
琴子「まあまあだったかな。演出凝ってたけど、さすがは低予算って感じだったし」
香織「え~面白かったよぉー。ラストなんて鳥肌だったし」
琴子「いや、あれこそよくわからなかったじゃない。ってか、あれ、外はどうなっていたのよ……」
香織「うーん。たしかに琴子の言うとおりに思えてきたかもー。あー時間損した!」
琴子「いや、あんた、さっきと言っていること変わりすぎ。もっと自分を持ちなさい」
香織「いいのいいの~。流されるまま生きていくのだ~」
琴子「……これで頭が良いのは、納得いかないわ」
香織「え、私、頭が良いかな?」
琴子「いいでしょ。この前の模試なんて全国何位よ」
香織「模試? テストなんて関係ないよー」
琴子「……あるわよ、私には」
香織「そういえば、琴子って大学どこ行くんだっけ?」
琴子「あ、それは……」
香織「ああ、ごめんごめん。進路のことだもんね。気安く聞いちゃダメだった」
琴子「別にいいんだけど。……香織なら」
香織「うわ、琴子ちゃまってば、いきなり恥ずかしいセリフ……。香織ちゃんも困っちゃう」
琴子「茶化さないでよ。本気なんだから」
香織「ごめんってば。そうだね……聞きたいけど」
琴子「ん?」
香織「ああ、えっとね、私も実は琴子に聞きたいことがあるんだよね」
琴子「私に? なにか大事なこと?」
香織「いや、そこまでじゃないんだけど……うーん、改まっちゃうと逆に言いづらくなっちゃった」
琴子「……なにそれ」
香織「じゃあさ、仕切り直さない?ここじゃ人の目があるしさ」
琴子「うん、そうね。公園行きましょうか」
香織「公園! 行こー」
夕暮れの公園は、とても寂しく感じた。
さっきまでここに人がいた熱が残っていたから……。
でも、今ここには誰もいなかった。
――まるで二人だけしかいない世界に迷い込んだみたいだ。
香織「うわ、なつかしー。この鉄棒ってこんな小さかったっけ? もしかして、埋まった……?」
琴子「いや、鉄棒は変わってないわよ。香織が大きくなったんでしょ」
香織「そっか。そうだよね。もう高校生……っていうか、もうすぐ受験だしね」
琴子「受験だよね、もうすぐ」
香織「あ、進路のことだったよね。香織の口からどんな言葉が飛び出してきても、私は驚かないよ」
琴子「……驚かせるつもりはない。けど、驚いちゃうのかも」
香織「もったいぶるなー。もしかして、進路……お嫁さんとか!」
琴子「いや、それはない! 普通に大学!」
香織「じゃあ、そんなに言いづらそーにしなくていいじゃん。どこの大学?」
琴子「香織と……」
香織「ん、私?」
琴子「か、香織と一緒の大学!そんであわよくばルームシェアとかしたりして……したいです」
香織「……おー、たしかにびっくりしたというか。ふふ、いつもはクールぶってる琴子ちゃんからそんな言葉が飛び出すとは」
琴子「そんな言葉って? え、私、間違った?」
香織「いやいや、つまり、琴子ちゃんは私とずっとお友達でいたいってことでしょ。離れたくないって」
琴子「あ、いや、その、うあ……ああうう……そうです」
香織「これ、もう告白じゃん! まさか琴子から告られるとか」
琴子「え、いや、友達だから!」
香織「ただの友達?」
琴子「ただの……よりはちょっぴり特別でいいけど」
香織「親友だね」
琴子「恥ずかし」
香織「琴子が言ったんだよ。まったくこの子は~」
琴子「そ、それで! ……いいの?」
香織「いいもなにも、私も嬉しい! これからも一緒だね。よろしく、琴子!」
琴子「……よろしくお願いします」
香織「うわ、なにこの子、超カワイイんですけど~!なでなでなでなで~」
琴子「うるさいっ! なでなでするなーっ! ……ってか、香織こそ言いたいことがあるんでしょ」
香織「うん、パンツ」
琴子「は?」
香織「琴子のパンツ何色なのかなって。あわよくば見せて欲しい」
琴子「ちょ、え、なにそれ?」
香織「だって、今日、体育なくなったじゃん。朝から、琴子のパンツ見れるぞーって楽しみにしてたのに、がっかりしちゃってさ」
琴子「……さすがに引くんですけど」
香織「えええ、いいじゃーん。ルームシェアするんだったら、毎日見られちゃうんだぞ」
琴子「やっぱり、同じ大学の件、考え直そうかな……」
香織「なんで~、パンツくらいいいじゃ~ん。女の子同士なんだからさ~」
琴子「たとえ恋人でも、気安く見せないっての!」
香織「恋人ならその中身まで見ちゃったりして」
琴子「こ、この変態オヤジ――――ッ!」
日が落ち、暗がりが広がる。
影が伸びた公園からは、小学生のようにはしゃぐ女子高生二人の笑い声が聞こえていた。
エンド
お読みいただきありがとうございます!
単純に時間が余っていたので、即興で作りました。
シナリオとは言えない内容で申し訳ないです。
作り終えて見てみると、若干『花とアリス』のような気がしないでもない。
ちなみに、二人が観た映画は、低予算デスゲーム系で知られる『CUBE』(1998年公開、カナダ映画)です。
謎解きや人間同士のいがみ合いなどがスリリングでオススメです。
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