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射撃手 二 カロンの舟へ

射撃手 二 カロンの舟へ        
 もったいぶって
    じっとしているだけの
      お話じゃないか

        お話を撃ってやろうと
         探すのに
       お話はみつからない
     
雨になって 
    ふりそそぐ
      地獄へと
       ヴェルギリウスが
          導いた川の
             ほとり

       ばく転してみろよ
      飛びあがってみろよ
     アスリートになってみろよ
    運動不足の言葉に
   怒声をあげている
     雨  雨  雨

おまえはものをいわない
             だが果てもなく
              喧騒がついてくる
             
  ものをいうおかたには
        
       おくちがあって
       おめめもあって
       おててもあって
       あしもあって
       あしのあいだには
もうひとつあしがあって
しょぼくれたばななみたいだが
 ときどきおたけびをあげたりして
     またよれよれになって
       おみみはとじて
         たくさんおはなしをする

       ああ      
        やってみるがいい
 ことばで射撃を

 まとを得るまで  
       撃って 
       打ち
       刺す
        殴り
       撲る
        そして
       投げる
潜り
泳ぐ
    たからかに 歌う
        ことばの川に

    
       美学とやらは
      
      命の通う
        その肌にやどりするのか
         その舌が
          おまえの武器となる現代に 
            
そびらを返して
       猿のごとく
        城のある
         山からかけくだる
            もののふの
               言の葉
      
         巻き延べる
      物語の
         てざわりは
       金天に
         十月の波

       カロンの舟へ
         打ち寄せる
            雨のむこうの
                岸辺

十月は 雨でできている

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