ダブり〜3限目〜H


俺たち5人はモトキタのマンションへ向かい
シマキとテマエそしてカワヨシは怪しい男を
見張り、ゴウとモトキタはストーカーと
鉢合わせている。

俺たち5人はマンションへ着いた。
「おう!どうだ?」

するとカワヨシが
「ユウっ〜!久しぶりだな」
「元気だった?」
俺は、メンバー4人にカワヨシを紹介した。

「ところで、停学中全く見なかったけど」
と俺はカワヨシに聞いた。

カワヨシは
「あっ、バイトしてた」
俺とテマエとシマキは驚いた!
「えっ!?マジっ?」
カワヨシは
「ちょ、ちょっと、どうしてそんなに驚く?」
俺は
「なぁ?ヤバくねぇか?」
とシマキとテマエに聞いた。

2人は頷いて
「まさかカワヨシくんがバイトだなんて」
「まさか、ヤバいやつじゃないよね?」
とテマエが聞いた。

カワヨシは
「な、訳ねぇよ、普通のBARだよ」
「俺、今年で卒業だろ?実は前から考えてたんだ
そんな時にちょうど停学になって・・」
「ちょうど先輩から連絡あって、知り合いのBARを紹介してくれたんだ」

「へぇーそうだったんだ」
俺はまさかカワヨシが働いていたとは思わなかったからビックリしていた。

カワヨシは
「だから、卒業したらその店で世話になって
いつか自分の店でも持てたらいいなぁって」

パチ パチ パチ

拍手が鳴った。

タイケが拍手しながら
「すげーじゃんっ!俺、応援するよ」
とカワヨシに言った。

カワヨシは
「マジっ!?ユウのツレに応援されたら
      なんか出来そうな気がしてきた」
と肩を組んで
「頑張れよ」
と、どうやらカワヨシとタイケは意気投合した
ようだ。

そんな夢を語り合ってる中、申し訳なさそうに

「ストーカー捕まえよ」
とシマキが言った。

俺は
「あっ、そうだな!わりぃ」
「で、どんな感じ?」
と聞いた。

シマキは俺たちに状況を話した。

シマキ達がここへ来てしばらくすると、挙動不審
な奴がポストをあさり、そのあとゴミ捨て場へ
そして、裏へ周ったところで何度かゴウに連絡をしたのだが繋がらないので俺に電話した。
俺と話している途中で、たまたま通りがかった
カワヨシに声を掛けられた。
ちょうど俺と電話してる時に。
俺との電話を終えた後、シマキはカワヨシに事情を話した後3人はマンションの裏へ向かった。

だが、怪しい奴の姿は見え無かったようだ。
で、辺りを探しているところで俺たちが到着した

「おっかしいな?絶対ここへ行ったはず」
とテマエが言った。

カワヨシが
「ちょっと、しぃーっ」

俺は
「どうした?」
と言うとカワヨシは
「何か聞こえないか?」

俺たちは耳をひそめた。

シャー シャー
と確かに何かが聞こえる。

その時、ナカヒロが
「おいっ、上!」
と言った。

俺たちは上を見上げた。

すると、2階のベランダに人影が見えた。

俺は
「あれ、ストーカーだな」

タイケが
「叫ぶか?」
と言った。

俺は
「いや、降りてくるのを待とう」
「もし、中に入ったらその時は俺たちも突入だ」

俺たちは、身を隠して奴が降りてくるのを待った

俺は
「シマキ、念の為スマホで撮影しといてくれ」
と言うとシマキはスマホを取り出しその様子を
撮影した。

待つこと少し

何かあったのか、ベランダにいる奴は全く外の
様子を気にすることなく部屋の中を除いてた。
すると少し焦って降りてきた。

「来たっ」
とテマエが言った。

ハシゴも無いのに軽快にというか慣れたように
ベランダの手すりに足をかけ、雨樋をうまく使い手足をひっかけながら降りてきた。

奴が地面に着地した。

俺は
「GO〜っ!」
と合図を出した。

「何してんだテメぇ〜」
テマエが動いた

それにびっくりしたのか、奴は立ち止まるなく
ダッシュで走り逃げて行った。

俺、テマエ、シマキが追い
イサカ、ウエイ、タイケは反対側へ周り追っかけた。
こうなると捕まるのは時間の問題かと思っていたが奴はなかなかの速さで走って逃げていた。

奴は何度か振り向き後ろを気にしながら走っていた。全く顔は見えないが、男だって事は確かだ。

また、後ろを気にかけて前を向いた瞬間。

ドカッ 

マンションの塀を飛び越え駐車場を横切り
隣のマンションの路地からカワヨシが現れ
奴にハイキックを喰らわした。
その足は見事に奴の顔面を直撃し、そのまま
真後ろへ倒れた。

俺は
「さすがだな」
とカワヨシに言った。

テマエは奴に馬乗りになり
「テメぇ、何してたんだ?」
と言って倒れてる奴のフードとマスクをはずした。

カワヨシは
「余裕っしょ」
「だから逃げる時は振り返っちゃダメなんだって」
と俺に言った。

1年の頃(現役の)カワヨシと2ケツして帰った
時があった。
そんな時、明らかにその筋かと思われる車に
煽られたが、運転していたカワヨシは逆に煽りだした。ブレーキをかけてはアクセルをまわし
仕舞いには横に並ばれ車の窓が空き何かを言ってきた奴に唾を吐きすてた。

そりゃーキレるわな。

その車は速度を上げ俺たちのバイクの前に入り
ブレーキを踏み塞ごうとした。
その時、カワヨシは俺にこう言った。
「ユウ?次のブレーキで飛び降りてとにかく前だけ向いて走って逃げろ!んで、ルートで鉢合わせよ」
さすがに、ヤバいと思ったのかカワヨシはブレーキをかけた。
俺は後ろから降り走って逃げた。

ガシャーン

後ろから音がした。
俺はその音に振り返ってしまった。

「ユウっ!!振り返るな!走れっ」
と言って後ろからカワヨシが走ってきた。

カワヨシはバイクをわざと車に当てて走れないようにしたんだ。

中から男が3人降りてきて、その内の2人が
俺たちを追ってきた。

「とりあえず今は前だけ向いて走れ」

俺たちはなんとか逃げ切れた。

「ヤバかったぞ!アレは」
俺は言った。

カワヨシは
「大丈夫だって、奴らだって車をあぁされたら
どうしようもねぇよ」

「バイクあのままで大丈夫なのか?」
「身バレするだろ?さすがに」

カワヨシは
「あーあれ、俺のじゃないから余裕っしょ」
どうやら盗難車のようだ。

カワヨシは、今でもあのバイクは貰ったと言っているが正確には盗難車を貰ったって事だ。

とにかく俺たちは逃げ切る事が出来たって訳だ。
だから、逃げる時は後ろを気にしてはいけない
ただ、振り返らず走るって事が大事だ。

って、なんの話だ。
とにかく、俺たちはストーカーを捕まえた。

テマエがフードとマスクをとり顔をみた。
「テメー!カミイじゃねぇーか!?」

ストーカーの正体はカミイだった。
そう、ゴウの元担任。

カミイは鼻血を流し息を切らした状態だ。

テマエは、ビンタした
「何か言えっ!お前何してたんだ?」
シマキは動画を撮りながら
「ストーカーなんだろ?」

カミイは
「た・・たのむっ」
テマエが言った。
「何?はっきり喋れ!ストーカーか?」
カミイは
「た・・たのむから・・見逃してくれ」
カミイは続けて
「頼むっ!なんでもするから、金なら払う」

テマエは
「はぁ?こいつどうします?」
俺は
「おいっ、カミイ?」
「その前にテマエ、カミイから降りてやれ」

テマエはカミイから降りて
「座れっ」
と言った。カミイは無言でその場に正座した。

俺はカミイに聞いた。
「鼻血、大丈夫か?折れてるかもな」
「次は腕かもな」

カミイは頭を下げて
「やめてくれー、なぁ?コニシっ」
「金なら払うから」

それを聞いて俺たちは言葉も出なかった。
こんな奴でも教師だ。
そして、夫でもあり父でもある。

俺は
「いらねぇ」
「お前、ストーカーって事でいいんだな?」
「拒否っても証拠はじゅうぶんだ」
と言ってベランダに侵入している様子を映した動画を見せた。

カミイは
「本当、すまない。なんでもするから」
「なぁ?なぁ?頼むよ」
するとカワヨシが
「ユウ!?こんな変態、何言っても無駄だ」
「変われ」
「おい、カミイ腕出せ!」
俺は
「やめろ!俺が話す」
と言ってカワヨシを止めた。

「カミイ?もう1度聞く。ストーカーか?」
俺はしゃがみこみカミイに目線を合わせて聞いた

カミイは観念したのか今までの行為を話した。

「あれはモトキタ先生が初めて赴任した時
だった。大学を卒業してこの学校へ来たんだ。
わたしのクラスの副担任をしていたモトキタ先生は、いつも笑顔でわたしの話を嫌な顔ひとつせず聞いてくれた・・今の若い子は我々の話をまともに聞いてなんてくれない。そんな時モトキタ先生の歓迎会をした時に先生は酒も入り酔っ払って
わたしにもたれかかってきたんだ」

イサカが話した。
「カミイさん、もしかして」

カミイは
「あぁ、脈があると思ってしまった」

カワヨシが
「バカだな!おめぇわ」

俺は
「で!?それからは?」

カミイは
「完全に脈があると思い込み、その日モトキタ先生を誘ったんだ。すると拒否されて、それ以来
わたしを避けるようになったんだ。わたしはその日からモトキタ先生を求めるようになり・・」

「きもっ!」
テマエが言った。

カミイは
「何とでも言えばいいさ」
「わたしはただモトキタ先生と普通に関わりたかっただけだ。でもいつの間にか気持ちがエスカレートしこうなってしまった」

俺は聞いた
「それでポストあさってゴミあさって」
カミイは頷いている。
俺は続けて
「しまいには、ベージュのパンツ引き裂いてか?あんた、家族いるんだろ?あのモトキタがどんだけ怯えていたかわかんねぇのか?じゃーあんた?
あの時モトキタを見て興奮してたのか?」

突然、カミイは顔を上げ
「コニシ!信じてくれ!!」
「あれは、わたしじゃない!!確かにポストとかゴミは持ち帰ったが、あの件は、わたしじゃないんだ!信じてくれ!」
「なぁ?なぁ 信じて下さい」
と言って俺の肩に手を当て、周りの奴らにも
訴えるように言った。

シマキはその模様を撮影しながら
「信用できるかっ!」
と言ったがナカヒロがシマキに

「でも、嘘ついてるように見えないけどな」

俺もそう思った。

「じゃー今日はなぜここへ?わざわざベランダまで入って?」
と俺は聞いた。

カミイは
「あの件以来、わたしはモトキタ先生の事が心配で・・。わたしなりに犯人を見つけようと考えたんだ。そしたら、オカウエ達がここへ来ている事に気付き、わたしは近寄らない事にしたんだ。」
「それから数日経ったときお前たちの姿はなく
また来る様になったんだ」

俺は聞いた。
「なぜ?まだコイツらがいるかもしれねーのに
また来たんだ?」
カミイは言いにくそうに
「実は・・・」
俺は
「ここまで話したんだ。だから全部話せ」

カミイは話した。
「欲を抑え切れなくなったわたしはモトキタ先生の全てを知りたくてベランダへ入った。ベランダの扉を引くとカギが掛かっておらず、わたしは部屋の中へ入った」

それを聞いたカワヨシは
「終わったな」

カミイは開き直ったのか全てを話続けた。
「ドキドキした。そしてコンセントに盗聴器をつけたんだ」

テマエが
「お前なぁー!」
と言って殴りかかろうとしたが、タイケがとめた
「テマエ、まぁまぁ、今は話聞こっ」

カミイはモトキタの部屋に盗聴器を仕掛け
モトキタのプライベートを盗み聞きしていたようだ。

俺は
「で、どうだった?満たされたのか?」
と聞くとカミイは
「いや、全く。むしろその逆さ」
「モトキタ先生は本当に心の綺麗な人だ。仕事熱心で、自分の事より生徒の事を思う人だ」

ゴウが部屋へ行った時の話を聞いた。
俺はカミイのおかげでモトキタがいい先生だって事を知る事ができた。
確かにカミイは最低だ。超えてはいけない線を
超えたカミイは罰せられるべきだ。
だが、モトキタが俺や他の生徒の事をどう思ってるのかが線を超えた事によって知る事ができた。

こんな形で知りたくなかったけど。

カミイ自身、そんなクリーンなモトキタを知り
自分のやってる行為が恥ずかしくなり盗聴器を
外しに今日来たようだ。
そしてベランダに侵入するとカーテンの隙間から灯りが見えたようだ。
男の声が聞こえ、焦って降りてきたとこを俺たちに捕まった。

「ほんとすまない」
カミイは土下座して謝った。

その姿を見て俺は
「謝る相手が違うだろ?モトキタにも全てを話してきちんと謝罪しろ、そしてあんたの妻や子にも謝れ!あんたは色々な人を裏切った」
「罰せられるのはそれからだ」
「とりあえず、その盗聴器を出せ」
カミイは盗聴器を出した。
俺はその盗聴器を踏み潰そうとした。

するとシマキが
「ユウくん、ちょっと」

俺は足を止めた
「なんだよ!?」

シマキは
「潰す前に証拠として、中の様子聴こうよ」
と言った。

それを聞いたイサカは
「確かに一厘あるな!今でも充分な証拠だけど
盗聴の事実を抑えてれば確実だ」

俺は
「じゃー壊すのはそれからにするか」
イサカは
「てか、壊さず警察に渡そう」
ナカヒロも
「そのほうがいいよ」
と言った。
俺は
「それもそうだな」
と言ってカミイに盗聴器を渡した。

カミイは盗聴器の電源をONにした。

周波数を合わす
ピュー ピュー

カワヨシは
「はやくしろよ!」

ダイアルを回すと色々な声が聞こえてくる。

ウエイが
「これ全部盗聴?」

警察の無線や、楽しそうな会話。
また、男と女の交わる声や商談中の会話など
世の中ではいたるところで、誰かが誰かの話を
盗み聞きしている。

カミイは
「そうだ。世の中では盗聴はザラにある」
「この盗聴器だってネットで誰でも買える時代
だから」

パシンっ

俺はカミイの頭を叩いて
「何ドヤ顔してんだ?さっさと合わせろ」

ピューピュー

「もうすぐ・・」

カワヨシが
「モトキタちゃんの声だ。こいつマジで盗聴して
やがったんだな?」

俺は
「しっー」
「なんかおかしくねぇか?」

「ナオさんはどうして
     僕のものになってくれないの?」
男の声がした。
「テメーぶっ殺してやるからな」

俺は
「ゴウだ!ゴウの声だ。
        てか、何か揉めてねぇ?」

さらに盗聴器から
「害虫は黙ってろ」

ドカッ

「やめてっ!」
とモトキタの声が聞こえた。

ゴウは
「おらっ、全然きかねぇぞ!この変態野郎が!?
中途半端にやって俺を生かしたら、確実にテメーは死ぬぞっ!コラぁ」

「だ・か・ら害虫は黙れ!」
「わかった。じゃー死ね」

「ちょっ、ちょっと、何する気?」
「やめて、やめて」
とモトキタが叫んだ。

俺は
「こいつがストーカーだ」
「ヤバい事になってる」

シマキは
「ゴウくん」

カワヨシは
「どうする?ポリ公呼ぶか?」

俺は
「いや、間に合わないだろ?俺たちが乗り込む
ほうが早い」
「カワヨシ、テマエはベランダへ行ってくれ」
「俺とタイケで玄関へ行く」

ナカヒロが
「俺たちは?」

「とりあえず2人はシマキとカミイを頼む」

俺とタイケは玄関へ行きインターホンを鳴らした
扉には鍵が掛かっていた為、何度も叩いて
「おいっ、ゴウ?モトキタ聞こえるか?」
「おいっ、おいっ」
と呼びかけた。

すると
「ユウっっ!」
と中からゴウが叫ぶ声がした。

俺はスマホを取り出しベランダにいるカワヨシに
電話を掛けた。

「そっちはどうだ?」

カワヨシは
「鍵かかってるし、カーテンで中の様子がわかんねー」
「どうする?」

俺は
「こっちも入れねー」
「ガラス割って入れ」
と言った。

中からモトキタの声がした
「キャー」
ゴウは
「オラぁ、刺せよ!てか、周り囲まれてっぞ」
「刺せよ」
「変態ストーカーさんよっ」

外に聞こえる程だった。
ゴウはわざと大声で中の状況を俺たちに伝えたんだ。

俺は
「カワヨシ、割れっ」

ガッシャーン

カワヨシは、ベランダ窓のガラスを肘で割り
割ったところからクレセント錠を下げ窓を開けて中へ入った。
テマエもそれに続き中へ入った。


カワヨシは
「おー!ゴウ、久しぶりだな」
「縛られてんじゃん!そんな趣味あった?」

「来るなぁぁ!これ以上近づいたら刺すよ」
とストーカーがゴウに台所から持ち出した包丁を
向けて言った。

テマエはその隙に玄関へ周り鍵を開けた。

俺とタイケは中に入った。

モトキタは手足を縛られ、部屋の隅にいた。
ゴウも同じように手足を縛られ口に貼られたで
あろうテープが取れたのか頬に【ぷらん】となってついていた。
ゴウはモトキタにおいかぶさるようにモトキタを
守っていた。

俺は
「おいっ、何がどうなったのかわからないが
もうやめないか?これだけの騒ぎだ。時期に警察もくるぞ」

ストーカーが包丁を握ってる手は震えていた。

俺は続けて話した。
「もう、やめろって」

タイケも話した。
「さぁ、その包丁を捨てて」
「お前にも、ふるさとがあるだろ?こんな事して
田舎のかぁちゃん悲しむぞっ」

「かぁ〜さんが〜夜なべを〜してぇ〜」
タイケは歌いだした。

「ふざけるなぁ!殺されてぇのか?」
油に水をそそいだ。
ストーカーはさらに逆上した。

俺は
「バーカっ!お前はバカだろ!?」
「逆に怒らせてどうするんだっ!ゴウもモトキタも殺されるぞっ」

タイケは
「一度でいいから、やってみたかったんだ」

俺は
「黙って、下がってろ!」
と言ってその場を仕切り直した。

「わりぃ。でも、ほんと今ならまだやり直せる」
と言うと

ストーカーは
「お前たちに何がわかるって言うんだ?」
「僕は、僕は、ナオさんが好きで好きで、
好きなだけなんだ」

俺は
「だろうな!好き過ぎてどうしても手に入れたいんだろ?」
「でもな・・あんたは間違ってる。正直俺は
好きだの嫌いだのってまだわからねぇ。でも
俺は好きな人にあんな顔は絶対にさせない」
と言ってモトキタの方に指さした。

ストーカーはモトキタの方を向いた。

俺は
「あんな怯えて、睨まれて・・そんな顔させた
奴の事、好きになる訳ねぇだろ?」
「あんたが、そこまでして手に入れたいんだったら笑わせてやれよ!跡つけて、遠くから見るん
じゃなく近くで見ろよ。そして、自分を見てもらえよ!」

その言葉が響いたのかどうかわからないが
ストーカーは俺たちに向けていた包丁を下げた

その瞬間、俺は見逃さなかった。
俺は、近くにあったガラスの写真立てをストーカーに目掛けて投げた。

パリンっ

写真立ては見事にストーカーの顔面に当たった。

その隙を絶対に見逃さないのがカワヨシだ。
うつむいたストーカーに飛びかかり転かして
抑えつけた。
テマエはゴウの手足の結束バンドを切り
俺は落とした包丁をベランダの方へ蹴った。

「わりぃな」
ゴウはテマエに言うとモトキタの結束バンドを
切った。
「先生?大丈夫か?」
「怖かったろ?でも、もう大丈夫だから」
モトキタは
「すぐ病院にいかないと」
「コニシくん、救急車呼んで」
と言って自分の事よりゴウを心配した。

ゴウは
「大丈夫だ!」
と言って抑えてつけられているストーカーに
話しかけた。

「変態野郎、生かしたな俺を」
「さっき言った事、忘れてねぇだろうな?」
と言った。

するとモトキタは
「もういいの!」

ゴウは
「はぁ!?」

カワヨシが言った
「モトキタちゃん?コイツさんざんモトキタちゃんをビビらせたんだろ?」

モトキタは
「いいの、本当」
「正直怖かった。そんな思いをさせたこの人を
殴りたい。でも、オカウエくんやコニシくん、
カワヨシくんにテマエくん。そして・・・」

タイケを見た。

「あっ、タイケです。ユウの友達っス」
タイケが言った。

モトキタはそれに反応する事ななく話を続けた
「こんな人の為に、みんなが汚れる必要ないよ」
「私は、とにかくみんなが無事で良かった」
「だから、軽々しく殺すとか言わないで」

もの凄く怖かっただろう。
相手が誰なのかわからないままで。
でも、モトキタはこんな状況でも先生だった。

それは外にいるシマキやウエイ、イサカ
そしてカミイも盗聴器を通して聞いていた。

ウー ウー

パトカーが来た。
誰かが通報したようだ。

そりゃあんだけ騒いだんだ。

ストーカーは捕まった。
俺たちは事情聴取の為、警察署へ行く事になった

部屋を出ようとした時、俺は床にある、
ストーカーに投げた割れた写真立てを見た。

ガラスの破片と一緒に踏まれぐちゃぐちゃに
なった写真はクラスの集合写真だった。

そこには、真ん中に座り笑顔のモトキタとクラスメイトたちが写っていた。

部屋を出て下へ降りるとカミイがいた。
カミイはモトキタに郵便物を盗んだ事や
盗聴器を仕掛けた事を話して謝罪した。
驚いた様子だったが残念そうな顔をしていた。

パトカーへ乗る時モトキタは
「先生」
とカミイを止めた。

「わたしは、まだまだ未熟な教師です。ですが、
初めて教師になったときに、先生から色んな事
教わりました。ありがとうございました」
と頭を下げた。

モトキタはカミイを避けたりしてなかったのだ。

カミイは頭を深く下げパトカーに乗った。

これにてストーカー騒ぎは幕を閉じた。

3限目Iへつづく

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