優しい女の子

お姉さん、一杯飲まない？
いいよ。一杯だけね。私彼氏いるからあと少しで帰らないといけないけど。
何飲む？
レッドブルウォッカ。
おけ。レッドブルウォッカ２つ。
はいどうぞ。
ありがとう。頂きます。
今日は何人で来たの？
3人。大学の先輩2人と来たよ。
そうなんだ。どこにいるの？
どっかいっちゃった。何人できたの？
1人。
えー1人できたんだ。すごいね。
友達いないからね。
そうなんだ。かわいそうな人だね。
お姉さんは優しいね。あっちの落ち着いたところで話さない？
いいよー。
彼氏のどんなとこが好きなの？
私のこと誰よりも好きなとこ。
最初は全くいいと思わなかったんだけど、彼氏の一途さに惹かれた。
そっかぁ、けどオレにも伸びしろはあると思うんだ。今でさえこれだけ好きだから､お互いのこともっと知ったらより特別な関係になれると思う。
そうかなぁ。私の彼氏には勝てないと思うよ。
あとは？
嘘をつけないところ。
オレもうそつけないよ。母親に他人に誠実であること、迷惑をかけないことを厳しくしつけられたから。
えー何か嘘くさい。
彼氏はかっこいいの？
私はカッコいいと思うけど、周りからB専って言われる。
そうなんだ。
イケメンだと緊張しちゃう。
そっかぁ。だから今めっちゃ緊張してるわけね。
ううん。全くしてないよ。
彼氏にはゾッコンなんやね。
そう。すごい一途なの。一途の度が過ぎて貢いじゃうんだよね。
そうなの？
うん。彼氏の交通費や服なんか全部私が払ってあげてるの。
すごいな。学生でしょ？よくそんなお金もってるね。
私夜職やってるから。1日数万の売上があったら、その半分以上は彼氏に使っちゃうかな。お母さんにもあなたは優しすぎるって言われる。
親に言われるなんて相当やな。
以前バーで知り合った女の子が家がないって言ってたから数ヶ月泊めてあげたの。家賃は半分払う約束だったんだけど一回も払ってくれなくて最後は音信不通になっちゃった。
まじか。少し疑うことを知った方がいいよ。
そうだよね。
実はさ。オレもお金に困ってて。ホテルまでのタクシー代貸してくれない？
バカ、最低。
あっ彼氏からまたLINEきた。
めっちゃ来てるじゃん。
うん、少し重たいんだよね。彼氏が気に入らない私の友達は全てブロックさせるの。けど、今日一緒に来ている人は絶対に切れない。それだけお世話になってるから。
それだけかけがえのない人なんやね。
そうなの。あー1杯飲んじゃった。彼氏の家に行かなきゃ。
ここから近いの？
タクシー1メーターでいけるよ。
すぐじゃん。じゃあもっとオレと一緒にいれるね。よかったじゃん。
だめだよ。彼氏がめっちゃ怒ってるんだから。
そっかぁ、じゃあばいばいだね。
何でそんなこと言うの？
だって帰るんでしょ？
そうなんだけど､､､
オレたちはこのまま別れた方がいいかもね。
うん、そうだね、お兄さんのおかげで現実逃避できた。こんな場所でこんなにちゃんと話せると思ってなかったよ。
現実逃避？
そう、彼氏ホストだから女の子相手にするでしょ？だから浮気が心配でストレス溜まってしまうの。
ホストはそれが仕事だからね。
それはわかってるんだけど､､､ねぇ今夜だけ、この一瞬だけ私を抱きしめて。
なんか泣きそうになってきた。
ほんとに泣いてるじゃん。
なんかわかんない。
オレたちはもう一生会うことはないけど、この瞬間のことだけは忘れずにいるよ。
うん。そうだね。ありがとう。私には彼氏がいるの。ばいばい。

私は幻なの
あなたの夢の中にいるの
触れれば消えてしまうの
それでも私を抱きしめてほしいの
つよく つよく つよく つよく つよく