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FISHMANS TOUR "LONG SEASON 2023"

10代の頃はくよくよしてばかりで、フィッシュマンズによく励まされていた。知ったときにはもう佐藤伸治は亡くなっていたんだけど、その無常感にも不思議と親しみを感じていたし、とにかく当時のどうしようもない心にフィッシュマンズの音楽や言葉がよく沁みた。

―― FISHMANS TOUR "LONG SEASON 2023"

正直、ライブにはあまり行きたくなかった。チケットを取ったきっかけも忘れてしまったし、仕事もたくさん残っていたし、考えなくちゃいけないことが山積みだったし。ただ、一番の理由は偉大なフロントマンを失ったバンドの現実を直視することが怖かったんだと思う。

それでもこうして note を書いているのは、パフォーマンスがあまりにも神懸っていて、佐藤伸治の存在を感じる瞬間が何度もあったから。

本当に不思議だったのは、歌っているのは茂木欣一だったり、原田郁子だったり、UAだったり、永積タカシだったり、次々と登場するゲストボーカルは、ともすればトリビュートバンドのようにエンタメな印象になってしまいそうなのに、そこにあるのは「正真正銘のフィッシュマンズ」だったこと。

誰もが、佐藤伸治をステージに呼ぼう、一緒に歌おう、としているのは自明で、その想いをのせた歌たちは本当に美しかった。

現在進行系の、本物のフィッシュマンズであり続けるために、茂木欣一さんがどれだけ強い想いをもってやってきたんだろうって考えているうちにどんどん涙が出てきてしまって、ライブ中はほとんど泣きっぱなしだった。

3時間のパフォーマンスの中でも、シークレットゲストのマヒトゥ・ザ・ピーポーが新たな歌詞をつけて歌った「WEATHER REPORT」が特に印象的だった。ラップパートがあって、彼のリズム感の良さに感動してしまった。すべての言葉がきちんとビートにのっていて、それでいて歌詞の世界観も文句なしで途中まで書き下ろしの歌詞だってことに気づかなかったくらい。

「エアードロップします」なんて歌詞、人の曲で成立させちゃうセンスにすっかりファンになりました。もう一度聴きたいな。配信なりブルーレイなり出ないかな。本当に特別な演奏だった。

2023年も「正真正銘のフィッシュマンズ」がつづいていることが知れて本当によかった。これまでもこれからも、続けていく苦労は計り知れないけれど、茂木均一さんに心から感謝を伝えたいです。ありがとうございました。

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