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ほら

引越しをしたらしい空っぽになった部屋で私の洋服にくるまって寝ている君は、掴んだ私の手首を親指で撫でる。その空間は小さな音でlampの一夜のペーソスが流れている。この君といる時間があまりにも愛おしいからよく分からない単語の並んだ難しい本を読む私の気持ちを誰がわかるのか。私だって分からない。



朝、過去も今もこれからも現実も夢も嬉しいこと楽しいこと悲しいこと辛いこと全てが渦を巻いて自分の置かれている状況に頭を抱えた。動けない動きたくないと伝えると君はもちろんです。と即答してくれるから勝手に君の方のお布団に入って天井を見上げて話をする。君から見えない右目だけから涙が落ちるのは少し悔しかった
君は、はやすぎるんですよと、言う。そんな気はしてた。君は私を羨ましくはないだろうけど、私は君の振り返る君自身に羨ましく憧れているよ。だからね、自分をそんな奴って言う君を抱きしめたらよかったと、身勝手に思う。


毎日とか日常とか全然簡単じゃない。欲だけに素直さを持って生活をおくることができるのならどれほど楽だろう。ホットコーヒーを冷めてからしか飲めない私は、終電の終点でまで乗ってしまう私は、この虚しさをどうして繰り返してしまうのだろう。始発まで歩き続けて気が狂いそうになることに、もはや狂って気持ちよさまで感じている。効率はいつだって悪いし、いつだってしんどくなる方にいってしまうような、感覚。
君は、私にバカだと言う。僕よりバカだと、優しい顔で言う。星を見て泣く君は私と大差ないバカだけど、そんな私たちは生きていけるはずだよね。


なにも誤解をされたくなくて、全部伝わるように伝わってほしくて余計な言葉ばっかり喋って嘘を混ぜる。過去の話をする時、それはもう過去だから嘘なんだと思う。つい君に見せたくなかった私をこぼしてやっぱり私は最悪だと、むしゃくしゃして口元に手を持っていく癖。遠くをみつめながら落ち着こうとして眉間に皺を寄せている。視線を君に向けると目が合う。ふーんって聞こえてきてそうな君の微笑みに動揺して目をそらす。お互いに目をそらす。君の微笑みは、ふーんって思ってそうですね。なんてまた余計なことを伝えると、分かってますよ。と君はすこし違う微笑みをして言う。その時私はどんな顔をしていたんだろう。

君はギターなんて、バンドなんて、とよく話す。そしてロックンロールでしょ、とよく話す。ロックンロール。私の話すことに、君の話すことに、ロックンロールだとよく言葉をはめるけどね、全然ピンと来てないよ。この話をする時、嬉しそうな声色がなにより愛おしい。そうやって満足そうに君が話すから、イマイチよく分からないまま嬉しくなって、なんとなく、私のロックンロール、君のロックンロール、あるよねって、嬉しくなって、そっか。と言う。


君は背が高いから、私は背が低いから見上げた目からまつ毛がすこしあがっていて、それがいつも綺麗。
歩くのがとんでもなく遅い私をちゃんと置いていくけどちゃんとどこかで待ってくれてる。戻ってきてくれる。
きっと賢い人のような気がする。言葉にできることが沢山あってしないこともできてしまう人なんだと思う。なんとなく。不器用そうだと、思うけど人のこと言えないほど私は不器用な気がするから、もっと不器用でいいよ。
君は優しい。私の気持ちが軽くなる言葉を伝えてくれる。何かを伝える時、君は私じゃなくて、私は君じゃないから、気持ちを想像して伝える難しさだとか、100パーセント共感をすることができない虚しさとか、そういうものがついて伴うと思う。だから、君が私をおもって伝えてくれる言葉の優しさは救われるし素敵だと、幾度となくお返しがしたい気持ちの衝動が出てきては、自分のなにもなさにため息が出る。君は自分を優しくないというけど、君は本当に優しいんだよ。







ほんとうのこともほんとうじゃないことも話すのは君だけって決めている。私たちは友達じゃないよ。恋人でもない。名前のある関係性を望んでないといえば嘘になる。そんなのどうだっていいんだよ。わかるでしょう?どれでもいい。どれでもいいんだよ。どれでも諦められるんだと思う。君と出会う前から君にしか話せないことばっかりだったんだよ。だから恋だとか君にいう勇気はない。それでも渦を巻き続けていいはずなんだよ。


そうでしょう。わかるでしょう。分からないよ。





今だけ続けていければとりあえず大丈夫。それでいいんだって。それでいいでしょう。君を涙いっぱいにして見送った時、何もいらないから、時間も気温も言葉も全部いらないから抱きしめて欲しかった。私はどこまでも弱くて情けなくて後悔をできない。どこにいたらいいか分からないしどこにいてもじたばたしてるんだと思う。それでも、それでも、君を大事にしたいと思っていて、プレッシャーとか感じなくていいから、信じてる。無責任に泣いてしまうことばっかりだけど、ただただ私が信じてるっていうだけ。君が遠くにいても、もはや関係がなくて、私がそうだという、それだけのおはなし。



風邪ひかないといいよね!ってだけのおはなし!




前向きなひとりぼっちだよ!



君は君は君は、ずっと君だよ!変わっていく君も、変わらない君も、忘れてしまう君も、ずっと君だよ。きっと大丈夫だし、大丈夫になる



いつか全ての過去と今の私を許せる時がくるのであれば、その時はきっと夜をこえられない苦しさが終わる時だよ。きっとひとりじゃなくなるよ。きっと海になれるよ。









君のことを何も知らない、君は私より私みたいだね





あいしてるよ

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