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バスケットボールライターの青木美帆さんを、学生アシスタントがインタビューしてみた

今回インタビュアーを担当した私、福田は関東の大学で体育会に所属しバスケットボールをしています。その活動と並行して、中学や高校といった育成年代からBリーグまで、幅広い年代のバスケットボールに関する記事を手掛ける青木美帆さんのアシスタントをしています。アシスタントになる以前から、青木さんの記事を拝見する事が多く、競技の成績云々に関わらず、取材している選手やコーチの想いや考えに触れる内容にとても関心を寄せていました。

今回は、そんな青木さんが普段どのような想いで取材をし、それを記事にしているのかを追いました。彼女の根底にあるのは「バスケットを日本でもっとメジャーにしたい」という想いでした。
(表紙撮影:福田萌夏)



なぜバスケを書きたいと思ったか

-青木さんはなぜバスケットの記事を書きたいと思ったんですか?

これはちょっとまとめられなくて。元々は私は野球部にいたんですよ。マネージャーね。で、野球部にいるうちに高校野球の記事を書く人になりたいと思っていたんですね。だけれど、高校で野球部引退したその夏に、茨城でインターハイがあって、八千代高校対能代工業を見たのかな確か。そのとき能代めちゃくちゃ強くて、能代のバスケ見てもう「すごい!」って思って本当に。しかも本当超満員だったし、、、!(笑)一応高校野球も注目受けてたけれど、県予選の自分たちの試合にはあんなにたくさんの観客が見てたことなかったし、体育館の熱気ってやっぱり野球、グラウンドの熱気と違ってやっぱ中に篭るから、すごい雰囲気がこう…。暑いし、応援もどっちもすごかったんで。音が「ブワーーーーー」って篭る感じにすごく衝撃を受けて。「あ、私野球じゃなくてバスケがいいな」って思って。それは勝手にだけれど(笑)。そんなことがあって、バスケを書きたいなって思ったの(笑)

-すごいターニングポイントですね、このインターハイは。

ね、本当たまたまだよ。


大学で新聞サークルに入った理由


-大学ではスポーツ新聞を作るサークルに入られたそうですが、新聞会に所属しようと思った理由は何ですか?

高校3年生の時、バスケを書く人になりたいと思ったときに、自分の志望校のいくつかに部活を取材するサークルがあるんだって知って、「あ、絶対に入ろう」って思って。だから、バスケットをとにかく書きたいって思って、そういうサークルがあると知って、もう入学する前にメール送っていた気がする。入りたいんですけどって。

-すごい行動力ですね

まあ、当時はスマホとかないので。ネットがさ、多分ダイアルアップだったのかな、あんま覚えてないけれど、すごい時間かかるの。常時ネットに繋がってるわけじゃなくて、毎回繋がなきゃいけないの(笑)なんか、『ピーピーガーガー』って。(笑)電話回線を切り替えるのかな、だからその間電話できない、みたいな感じだった(笑)。結構大変だったんだよだから、ネットで調べるのに。今みたいに全然早くないしね、うん、遅かったもん。懐かしい。うんうん、そんな理由でした。


会社づとめのメリット、デメリット


-大学卒業後、最初はフリーライターでなく会社に勤めたそうですが、会社勤めのメリット・デメリットって何かありましたか?

会社に勤めていた時は、私は雑誌を作る出版社の編集部にいたんだけど、編集部では、ライターじゃなくて編集者という仕事をしていました。私は元々、学生時代から一応ライターをやっていて…括弧がきのライターみたいな感じなんだけれども(笑)。だから、自分はもう記事は書けるし、ライターとして十分やっていけると思ったんだけど、編集部に入ったことで、一つの作業が遅れることで何人の人に影響が出るのか、何人の人に関わってもらって雑誌ができているのかっていうのが分かったことで、より仕事に対する責任感が増したなっていう気はするかな。

あとは、これはフリーライターになってすごく活きたところなんだけど、企画を立てられるようになったって言ったらいいのかな。それまでは基本的に、人から「こういう記事を書いてください」って言われて、「はい、書きます」っていう仕事が多かったのが、自分から、こういうトピックやネタは、このウェブサイトだったらいろんな人が見てくれるんじゃないか、みたいなことを想定して、「こういうテーマで、この人にこういう話を聞いて、御社にあげたいです」みたいなところまで提案できるようになったのは、すごく大きいと思います。

-万能ライターみたいですね(笑)

そうだね、多分それができないと、依頼を待つしかないじゃん。依頼がこないと何も動けないことになっちゃうから、「自分から攻める」みたいなことができるようになったのは、編集者時代に得た大きな武器かもしれないね。それがメリットかな。

-デメリットは何かありましたか?

デメリットはね〜。。。独身だったし、仕事好きだったし、あんまりなかったかな。ま、でもやっぱり自分が担当する雑誌だったり部署からあまりにも逸脱した仕事はできなかったね。私がいた会社は、編集者は完全に編集しかやらないで、原稿はライターさんに全部やってもらうみたいな感じだったから私自身が記事を書く機会はあんまりなかった。ライターさんの取材に同席して、色んな人と会って話を聞いてる中で、「あ、なんかこういうの自分でも書いてみたいな」っていうのもあったんだけど、時々やらせてもらってはいたけれど、たくさんはできなかったっていうのがあったので。ちょっとつまんないなって思っていたんだけど(笑)。

-やっぱり編集よりライターの方が楽しいですか?

どっちも楽しいよ!んー…。編集とライターとは、頭の使い方がちょっと違うというか。例えばライターが割と右脳的な感じで仕事するとしたら、編集者は左脳で仕事するって感じかな。スケジューリングを含めてマネジメント的なこととか、マルチタスクというか、タスクを片付けていく感覚みたいなのは結構面白かった。

あとは、こうピタッとハマった時。自分が立てた企画に対して、「写真も記事も原稿も取材者の話もピタッとハマったー」みたいなとかは面白かったし、逆にうまくはまらなかったときに、じゃあどうしよう、みたいなこと…パズルの組み替えみたいな感じじゃないけど、ゴールに向かうためにはどうそのパズルを組み替えていけばいいだろう、みたいなところ考えたりするのは、すごく面白かった。だから、どっちも楽しかったね。ただ、向いてるかって言われたら編集者は向いてない。(笑)

フリーへ


-会社に勤めてから独立を決めた理由みたいなのってありますか?

これはもう結果論的なところもあるんだけど、ちょっと会社がね、内部事情的なところでね、ちょっと傾きはじめてて。で、私を拾ってくれた編集長の方が、「知り合いの出版社がちょっと人足りないみたいだから、フリーとして手伝ってあげないか」っていうことを言われて、独立したって感じかな。ただ、1番最初は、それこそ高校野球の雑誌を作る編集部の仕事をしながら、ちょこちょこフリーの仕事っていう感じで。だけど、それでも段々その本業の仕事よりも、バスケットの仕事に意識が傾きすぎて、会社の仕事の気合のなさがにじみ出てたのか、「もういいっすよ」みたいなこと言われて(笑)。まあでも、色々やってたおかげで色々ツテができてたタイミングだったから、それもいいタイミングだと思って。で、本格的にその大学卒業してすぐなったフリーライターとはまた別の、括弧がつかないフリーライターに晴れてなったのが、えっと、23から5、、、30くらいかな多分。29とか30とかそれくらいで、ちゃんと独立したって感じです。

フリーのメリット、デメリット


-フリーのライターになって、自分の裁量で仕事をする事が多くなったと思いますが、フリーになってのメリットとデメリットって何かありますか?

フリーになってのメリットは、やっぱあれだよね、好きな時間というか、時間の使い方が全て自由になるというか。自分を自由にできるっていうのは完全にフリーのメリットかなって思う。ちゃんともう成果物が仕上がってたら、あとは何をしてもいい、みたいな。それは大きいかな。あとは、個人の名前で仕事をすることの責任感とか、やり甲斐は強く感じます。特に最近は、「ブランド力」とか言うけど、個人の、一人の人としての価値が凄く上がってるなって感じるしね(笑)。やっぱり会社にいると、会社の力が強いから、新聞社とかにいても、その記者じゃなくて新聞社の力が強いわけ。会社の力が強いっていうのは、イコール個人の力がそんなに強くならない。会社が強くて個人が薄くなるっていう。まあそれぞれ違うんだけど。そういうのがあるね。

-では、何かデメリットありますか?

なんだろうな。あーあれだね。私が個人として痛切に感じるのは、記事を出す予定がないと取材をさせてもらえない。特に大きい試合はそういうことがある。これがそれこそ会社の人間だったら、別に出す予定がなくても入れるの。面白いでしょ(笑)。フリーの人間っていうのは、「遊びに来ましたよ」みたいな感じで、「タダで試合が見たいからフリーとして入ってる」って思われがちなの、すごくね。

我々フリーっていうのは、「このテーマで記事を出さなきゃいけない」っていう仕事の仕方じゃないというか。いろんなものをたくさん見た上で、その蓄積で何かの成果物を出すみたいなこともあるわけですね。だから、この記事を見て「何も記事を書いていないから仕事をしていない」って言われたら、それは凄い不本意というか、、、(笑)。そういうのは、すごくあって、もどかしいところがある。だから、例えば私が会社にいた時は、自分が実質的に記事を書くわけじゃないけれど、Wリーグの試合もNBLリーグの試合も、なんの制約もなくオールパスで入れて。実際私はライターじゃないから、記事を書くことはないけれど、別に何かそれで言われる訳でもなかったというか。そういうのがあったんですよね。すごく私自身が恩恵を受けてきたから、フリーになって「ダメです」とか、「書かないのに来るな」とか言われると、「そういう人いっぱいいるのにな」と思うからさ。

-そういうギャップみたいなのがあるんですね

うん、あるねえ。


育成年代に注力する理由


-今はバスケットの取材を主にやっていると思うんですけど、その中でも育成年代の取材に注力している理由とかってありますか?

これも個人的な趣味になるんだけれど、元々、自分の興味が高校バスケットから入ってるっていうのもあって、思い入れが強かったというのが1つ。あとは戦略的ではないけど、Bリーグができる前の日本のバスケットって、一つの大会で、お客さんを呼べる大会っていうのがウィンターカップだけだったのよ。で、こうやっぱ自分が大学バスケを取材してた学生の時に思ったことだけど、それだけ高校バスケットが人気があるのに、大学生になると見ないじゃん誰も。多分大学で一個挟むからかわからないけど、そこから卒業したトップリーグなんてほぼ誰も見ていない。すごいもったいないなって思ったんだよね。

高校バスケットにハマったら大学見ればいいし、大学見て面白いなと思ったら、その子が卒業していけばまたトップリーグも見るみたいな感じがいいよなって。だから、1番たくさんの人が見ている高校バスケットとか育成年代を中心に、お客さんを段々違うカテゴリーに引っ張っていくやり方をしたいってずっと思ってて。「高校バスケットの有名人が今こんなふうに活躍してますよ」、みたいな話題とかもそうだし、なんかそういうの大切にしたかったていうのがあるかな。

-その人の成長みたいなのをそこで見てる人を終わらせたくなかったということですか?

そうそう。次に連れて行きたかった。連れて行かないと、大学だって面白いのに。何で高校でみんな止まっちゃうのって。まあ色々理由はあると思うんだけど、なんかそういう高校だけで、確か『スラムダンク奨学金』が『高校バスケで終われない君に』だったと思うんだけど、まあそんな感じで。高校バスケットで終わるファンも終わって欲しくなかったから、なんか、そこを起点に、こんなのがありますってことを伝えられるように、、やりたいなっていうのは思ったね。

-この考え方が出てきたのっていつ頃なんですか?

あー、そうだなあ〜…。思いたったっていうのはいつになるんだろうね。でもずっとそういう思いはあったと思う。自分自身、高校バスケットをきっかけに他のカテゴリーを含めたバスケを好きになったし、編集部にいた時も中高生向けの雑誌を作っていたのもあると思う。どの選手もやっぱり、高校からここから巣立っていくわけじゃん。そこの起点となる瞬間っていうのはやっぱり大事なんだろうなっていうのは思ってたところはあるかもしれないね。

-結構ずっと自分の中にはあったみたいな感じなんですかね

軸として多分もう高校バスケットは、だからライフワークの一つなんだよね。あの、お仕事って言うよりは本当に。まあ趣味であり仕事でありみたいな感じで。

-1番いいですよねそれが(笑)

ね、趣味が仕事って言うと「すごい」って言う人もいるけど、私は割と気にならない。毎日仕事してても平気だし。

記事を書く際に気をつけていること


-「人に伝える」ということを考えた時に、大切にしていることと、工夫していることなどあれば教えていただきたいです。

これは本当に中高生向けの雑誌を作ってた時の先輩に叩き込まれたことでもあるんだけど、「誰でもわかる記事を書く」。専門用語は噛み砕いて、「誰にでもわかる記事を書きなさい」っていうのが編集方針としてあったので、誰が見ても誰が読んでも、初めての人が読んでもわかるものを書こうっていうのは、自分の中の軸としてある。特に今なんかは、私はそんなに専門誌で仕事をしてないって言えばいいのかな。いろんな人に読んでもらえる、バスケットが好きじゃない人にも目に触れるような媒体で書くことを意識しているとこはあるので。尚更、その1番伝わるとこがどこなんだろうとか、1番バスケット知らない人に読んでもらえて、「あ、バスケット見てみよう」って思われるようなこと書いたらいいだろうみたいなことは、心掛けているところかなっていうふうに思います。

-言葉の言い回しとかも気をつけるんですか?

うん、例えば、すごい基本的なところだと、ウィンターカップを知らない人だっているわけじゃん。例えば、この間河村勇輝くんの事書いたけれど、結構専門誌だと「河村勇輝くんが福岡第一高校でどうだこうだやりました」ってことは全部省くわけ。だからそういう基本情報みたいなのを、いろんな人に読んでもらいためにもきちんと説明する。なんて言えばいいのかな。すごい簡単なところだと、ポジションをさ、3番とか4番とか、ああいうのとかも不親切というか。これバスケットに関わらず言われることなんだけど、一旦「これダメだ」って思ったら、人はその先を読まないっていうのが統計的に出ているらしくて。だから1回でも「これつまんない」とか「これ分かんない」と思わせたら、いけないなって。特に「続きを読む」ボタンをクリックさせて読ませるようなサイトだったらその後は絶対に読んでもらえないっていうのはあると思うからさ。

今後書いてみたいこと


-次が最後の質問になるんですけど、今後どんな記事を書いてみたいとか、あれば教えていただきたいです。

なんかね、私、独立したぐらいから、目標とか、こういう記事書きたいってのは1つしかなくて。ちょっと概念的なことで説明しづらいんだけど……。

記事を書くときって何かを見て「あ、この人すごい」とか「この試合すごい」っていうモチベーションを受けて記事を書くわけでしょ?で、それを読んでもらった人にもいい影響を与えたいんだよね。読んでもらった人にいい影響を及ぼすと、例えばその記事に書かれた選手のファンになるとか、バスケットを好きになるとか、また何か次のアクションがあるわけじゃない。で、そのアクションを受けたことで、「応援してます」みたいなアクションがあれば、選手も嬉しい。そういう三位一体の、win-win-winみたいな感じになればいいなという理想は持っています。

今は結構バスケット盛り上がっているけれど、ちょっと前まではバスケットってどうも盛り上がらないスポーツだと思われてたから、やっぱ自分自身も、「バスケットをもっとメジャーにしたい」みたいな気持ちはずっと持ってたから、そういう三位一体がこう、グルグルグルグル螺旋状に高くなっていって、バスケットが盛り上がってくれればいいなみたいなことはずっと思っていたので、基本的にはずっとそういう、ポジティブな記事を書いていたい。

あとは最近は、1回で完結する記事を書くことがほとんどだから、いつかは、今すぐにとかは言わないけど、その取材成果をぜーーんぶひっくるめて一冊の本を書いてみたいなっていうのはあるかなあ。

あの、この間本出したんですよ。部活のノンフィクションみたいな感じで、中高生向けの感動ストーリー。そこで長い記事を書くことの面白さを知って。結構私たちの仕事って、「一回の取材で一回記事を出す」みたいな、取って出しみたいのが多かったんだけれど、この本の執筆は、一つのテーマに向けて、何度も何度も取材を重ねるっていうやり方をして書いたの。それこそ国会図書館に行って昔の新聞記事を調べるとか、そういう作業も初めてやって。一つの伝えたいことにすごく全力投球ではないけど、長い時間をかけて書くっていうおもしろさを今回学ばせてもらったので、そういう執筆がまたできたいいなと思ってる。すごい大変だったけれど。

https://www.amazon.co.jp/dp/459116571X/ (「青春サプリ」青木美帆他)

-もし本が出たら私も読みたいですね(笑)

ありがとう(笑)送ります(笑)当分先だけどね(笑)。




<取材を終えて>

普段、私自身が青木さんの記事を読んでいて、「競技」としてのバスケだけではなく、取材している選手やコーチの「生き様」のようなものを表現しているように感じていました。そのような青木さんがいつもどのような気持ちで取材や執筆をしているのかに興味を持ちながら、今回のインタビューを行なってきました。インタビューをしている中で、1つの質問に対して、期待以上の返事をし続けていた青木さん。様々な経験や想いがありながらも、日本のバスケットに対する想いが軸にあることが強く伝わってきました。今はコラムや短い記事などを書く事が多い青木さんですが、そのうち本を執筆したいとおっしゃっていたので、その時は是非購入して読ませていただきたいと思います。今回はこのような機会をいただきありがとうございました。


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