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量×質=努力値≒成果

私は大学時代,体育学部で学び,トレーニング科学系のゼミに所属していた。体育の教員免許を取得することを目的に大学に進学したが,大学でトレーニング科学を学び,研究する内に,大学院進学も卒業後の選択の一つとして考えるようになるほど,のめり込んで勉強した。そこで出会ったトレーニング科学の基礎研究は,トレーニングに限らず,今の私の生き方のバイブルとなっている。
 
<テーマ>
ジャンプ(垂直跳び)能力の改善
 
<実験1>
トレーニングとして,以下の①~③のうち一種類だけの運動を選ぶとすれば何がよいのかを検討
①垂直跳びそのものによるトレーニング
②アイソメトリックトレーニング(肩に下方向の力をかけ,潰されないように踏ん張る)
③ウエイトトレーニング(重りをつけたバーバルを肩に乗せた状態でのスクワット)

<実験2>
一種類だけの運動と組み合わせての運動,どちらが効果的なのかを検討

①+②
①+③
 
<結果>
実験1では,その効果の大きさは,①>③>②となり,②では改善は見られなかった。
実験2では,その効果の大きさは,①+③>①+②>①となった。
つまり,1種類の運動でトレーニングをするのであれば,改善を目指す主運動(ここでは垂直跳び)を行うことが最良であるが,主運動に何らかの補助運動を組み合わせると,主運動だけでは得られない増幅効果が生じる。
さらに注目すべきは,②のトレーニングは,単独で行うと効果は生じないが,①と組み合わせることで,①の効果を倍増させている。
 
この基礎研究は,補助トレーニングの重要性を理解するのに,非常に分かりやすく,興味深い研究だと思う。今では,こうした考え方は当たり前のこととして,補助トレーニングはあらゆる種目で積極的に行われている。私は高校時代,“ただただ”たくさんの距離を走っていた。それが速く走れるようになるための最善の策だと信じて疑うことはなかった。その考えは,不正解ではないが,もう少しの工夫で,もっと速く走れるようになったのかもしれない。
 
これは,トレーニングに限った話ではない。時間は有限であり,平等だ。誰にとっても1日は24時間。1年は365日。この平等に与えられた,限りある時間をどのようにプロデュースするかが大切だ。学校では「学習時間調査」なるものが行われるが,この結果を鵜呑みにしてはいけない。極端な話だが,英文読解力を高めたいAくんが,「昨日は5時間勉強しました。」と言って,数学の計算問題を5時間解いていたとすれば,Aくんの英文読解力は、高まるはずもない。大切なのは,時間と共にその中身だ。同じ時間のかけ方でも,その中身次第でその効果は全く違うものとなる。効率ばかりを求めることは,時に時間をかけない言い訳になるが,非効率な活動は,頑張って取り組む人の意欲を低下させる。
 
量×質=努力値≒成果
 
努力している時間に無駄な時間なんてない。激しく同意する。だからと言って,あえて無駄な時間を作る必要はない。常にその質を念頭に置きながら,努力したい。努力してもらいたい。

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