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THE HARDBAIT #21, #22

「秋の大雨とザリガニ・パターン」
秋はハードベイトを含めた巻き物のシーズンだとされる。とはいえ、無節操に巻いているだけで釣れるほど簡単ではない。変化に翻弄されてバスの動きを見失うことも多い。むしろ真夏のほうが釣果が安定していた、というケースも少なくないのだ。

今年の8月上旬、鈴木美津男さんが利根川で出くわしたのは、まさにそんな状況だった。まだ「秋」と呼ぶには早すぎるタイミングだが、北関東一円が災害級の大雨に見舞われた結果、それまで30℃近くあった水温が3〜4℃も下がってしまったのだ。

鈴木「当初は真夏に実績の高いクランクやビーフリーズの高速リトリーブをやろうと思っていたんです。ただ、こういう冷え込みのタイミングではきつい。ためしにスモールクランクを投げると、バイトは出るけれどサイズが伸びなかった。そこで思い出したのが、2年ほど前の初秋にハマった『ザリガニ・パターン』でした」

大小さまざまな支流や水路が流れ込んでいる利根川。当然、水田と繋がっている箇所はいくつもあるが、「大雨のあとにザリガニが流れ落ちるスポット」は意外なほど少ないと鈴木さんは言う。

鈴木「農薬の影響などで生息数が減っているようですね。バスボートで釣りができる広大な下流域のなかでも、ザリガニが落ちてくるのは3箇所ぐらいしかない。そのひとつが、通称『三連水門』の最下流の水路です」

普段は水門が閉じており、大水のときだけ開いてくというのがこのスポットの特徴。この日もかなりひどい濁りを吐き出していたという。

鈴木「一見、釣れそうにない水の色でした。それでもカレントが生じているのはプラス要素。本流側はクリアアップしていたうえ、完全に流れが止まっていたんです」

ハードボトムになった水門の下流側を、まずはKJフラット1.5のシャッド系カラーで探ったが反応がない。次に色をクローフィッシュ系に変え、同じストレッチを流し直すと、いきなり1500gオーバーが飛び出した。さらに折り返して1200gを連続キャッチ。

鈴木「こんなに体高のあるバスがいたの? と驚くぐらい、2尾ともコンディション抜群の魚でした。このタイミングでエサが落ちてくるのを知っていて、ねらいすまして差してくるんでしょうね

KJフラット1.5は、ラウンド系のRTOやMTOシリーズに比べて浮力が控えめ。しかも潜りすぎないため、中層をゆっくりトレースしやすい。水温低下のコンディションにハマるのでは? と考えたうえでのセレクトだった。

実はもうひとつ、鈴木さんがKJフラットに再注目している理由があるのだが、それについては次の記事で取り上げよう。

「新たなトレンド!? オオタナゴ・パターンの予兆」
前回の記事に登場した「KJフラット1.5」。最近、鈴木美津男さんは改めてこのルアーを使い込んでみようと考えているらしい。

鈴木「今年のH-1グランプリ新利根川戦のあと、エサ釣りをしている選手がいたんですよ。『タナゴを釣りたい』と言うので、僕はせいぜいブルーギルやゴリしか釣れないだろうと思って見ていた。するとあっという間に入れ食いになって、そのほとんどがオオタナゴだったんです」

オオタナゴはもともと大陸産のタナゴの仲間。霞ヶ浦水系では2000年ごろから生息が確認されるようになった。在来種よりも大型化することで知られ、20cmを超える個体も珍しくない。

鈴木「この出来事で過去のいろんな点と点が繋がりました。つい先日も、利根川で釣り上げた45cm級のバスが大きなタナゴを吐いたんです。ほかの水系でも『オオタナゴが増えている』という話をよく耳にします。もしかすると、アングラーが気づかないうちにバスのエサが大きく変化しているんじゃないか?

40年以上に渡って関東のフィールドを見つめてきた鈴木さん。それぞれの時代において、ベイトフィッシュの栄枯盛衰を目の当たりにしてきた。

利根川を例に挙げると、かつてはバスボートに向かってさかんにジャンプするほど大量のアユが生息していたという。やがてオイカワやハスがメインベイトの座を奪い、そのころに誕生したのがトネスプラッシュだった

鈴木「最近はポッパー=エビパターンとして語られがちだけれど、もともとは完全にベイトフィッシュを意識して作ったんです。ところが、水棲昆虫が減ると同時にオイカワやハスが消えて、かわりにエビやイナッコパターンの重要度が高まりました。最近はそれも不発で、『利根川は釣れなくなった』と言われがちですが、実際は『エサが変わって、バスの行動や居場所が変わった』だけかもしれない」

たとえば近年、霞ヶ浦水系で定番化した「ビッグベイトの水中ドッグウォーク」。これが効くのも、単にルアーパワーや新奇性だけでなく、オオタナゴのボリュームや生息域にリンクしているのかも? と鈴木さんは想像する。流芯よりも水路やホソを好み、冬でも浅いレンジに留まりやすいため、オカッパリの射程圏内にぴったり収まるのだ。

鈴木「バスのエサを理解して、それを実際の釣りに当てはめていくのは僕のいちばん得意なスタイル。なので、なぜ今まで気づかなかったんだ! と反省してます(笑)。オオタナゴ・パターンを検証することで、ますます面白い発見がありそう。新しいルアーのアイデアも膨らんできました」

記事&写真 水藤友基

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